「デカレンジャー」20年間の積み重ねが実った完全新作 S.P.Dメンバーが抱く特撮への思い
スーパー戦隊シリーズ第28作「特捜戦隊デカレンジャー」(2004~2005)が20周年を迎え、新作Vシネクスト『特捜戦隊デカレンジャー20th ファイヤーボール・ブースター』として帰ってきた。宇宙警察・地球署の選ばれし6人の刑事=S.P.D(スペシャルポリス・デカレンジャー)が、宇宙犯罪者・アリエナイザーから地球を守ってから20年。メインキャストのさいねい龍二(赤座伴番/デカレッド役)、林剛史(戸増宝児/デカブルー役)、伊藤陽佑(江成仙一/デカグリーン役)、菊地美香(胡堂小梅/デカピンク役)、吉田友一(姶良鉄幹/デカブレイク役)がインタビュー応じ、新作に込めた思いを語った。(取材・文:編集部・倉本拓弥)
特撮に目を向ける方がたくさん増えてほしい
Q:20周年作品を撮ると聞いた時の心境は?
さいねい龍二(以降、さいねい):10周年作品も撮らせていただいて、「これで最後かな」と思っていたのですが、20周年作品も製作することになり、すごく嬉しかったです。台本を読んだ時に、いい意味でアニバーサリー感がない内容で、それを塚田(英明)プロデューサーにも伝えたところ、「そういう狙いです。アニバーサリーですが、あえて特別感を出さないように作っていますので、いつも通り演じてください」と言われました。レギュラー放送当時、台本をもらって撮影現場で演じることを、どういう風にやっていたのか思い出しながらフラットに演じています。
林剛史(以降、林):シンプルに嬉しかったです。「忍風戦隊ハリケンジャー」「爆竜戦隊アバレンジャー」と20周年作品が実現しましたが、だからといって「デカレンジャー」も20周年で何かできると当たり前に思ってはいけません。東映ビデオさん、プロデューサーさん然り、ファンの方々が求めてくださっていたことが非常にありがたい。「20周年もやって」という声があったからだと思うんです。メンバー全員が集まって、全ての状況が揃わないと20周年作品は難しい。一つ一つの積み重ねがあったからこそ、20周年が実現したということにまず感謝したいです。
また、最新作「爆上戦隊ブンブンジャー」が現在放送中のように、子供と一緒に大人にも楽しんでいただける特撮番組が半永久的に続いてほしいと思っているので、『デカレンジャー20th』が盛り上がって、特撮に目を向ける方がたくさん増えてほしい。そのためにはどうすればいいかを考えた時に、僕はあくまでホージー(戸増宝児)を一生懸命、1時間作品の中でしっかり生き抜こうと思って撮影に臨みました。
伊藤陽佑(以降、伊藤):個人的な話になりますが、結婚して子供が生まれて、1児の父になって初めて地球の平和を守る依頼を受けまして……。果たして、父親になってから演じられるのか? と思いながら、減量のためにランニングをしたのですが、結局当時から比べると約10キロ増でございまして……。恰幅のいいお父さんとして、センちゃん(江成仙一)を演じることになってしまった若干の後悔もありつつ、とにかく嬉しい気持ちでいっぱいです。
菊地美香(以降、菊地):20周年作品を撮ると聞いた時は、思わずガッツポーズしました! 最初はプロデューサーの方々に「撮りたいです」とお伝えして、陽佑くんと友一くんと3人で説得するところから始まったのですが、二つ返事で「やりましょう!」と回答をいただきました。『デカレンジャー20th』はご褒美のような作品だと思っているので、精一杯楽しもうと思って現場入りして、思いっきり楽しんで、クランクアップで号泣しました。
吉田友一(以降、吉田):テレビシリーズから20年が経ち、住んでいる場所、働く場所が大きく変化した中での20周年作品となりました。それでもなお、こうして作品に呼んでいただき、個人的には企画段階から携わり、(舞台となる高知県ロケを)どう誘致できるかというところまで学ばせていただきました。そして、それを実践できたことが自分にとっても成長だったので、共に進化し続ける作品であり、自分としても成長が望めたことは本当に幸せな出来事でした。
高知県にデカベース!土台は実際の建物
Q:本作で初登場する新人宇宙刑事・江戸川塁/プレミアデカレッドを演じた長妻怜央さん(7ORDER)との共演はいかがでしたか?
菊地:最高でした! 行く先々で「長妻さんがいい」という声を耳にするほど、本当に素敵な方でした。
林:序盤で見られる塁の生意気な性格は、どこかテツ(姶良鉄幹)に似ていたよね!
菊地:本打ち(台本打ち合わせ)の時に「テツと似てくるね」っていう声があったんです。何をどうしたらテツじゃなくなるんだろうっていうのは、みんなですごく考えました。長妻さんが演じたことで、結果的にテツとは違う生意気な後輩像というものが完成していると思います。
さいねい:長妻さんは撮影現場で自分の役割を理解してずっと動いてくださって、すごくいい雰囲気で撮影ができました。また、僕たちが「ゲストさんだから」という変な気遣いをする必要がなかったことも、すごくありがたかったです。
Q:撮影で印象に残っていることはありますか?
林:高知県でのロケは印象的かもしれない!「海洋堂スペースファクトリーなんこく」で撮影したデカベースが、本当にデカベースだった(笑)。
吉田:高知でロケができるかもしれないという話になった時、各セクションにプレゼンテーションする必要があったんです。いかに高知県に撮れ高があるかをアピールする材料として、最も存在価値があったのがデカベースでした。
菊地:デカベースの頭部はCG合成ですが、土台の部分は実際に存在する建物を使用したので、「敷地面積的にカメラで引いて撮れます」ということもお伝えできてよかったです。
伊藤:建物の内部も本当にデカベースみたいだったよね! 何も知らないで作品を観たら「セット建てたのかな?」と思うはず。
菊地:監督こだわりの廊下のシーンも見どころだね。
吉田:また、バディの組み合わせも面白かったよね。ホージーとジャスミン(日渡茉莉花/演:木下あゆ美)の組み合わせは久しぶりだし、テツとセンちゃんも新鮮だった。普通だとセンちゃんとウメコ(胡堂小梅)だからね。
伊藤:物語上はウメコとセンちゃんが夫婦だから!(注:実生活ではウメコ役の菊地とテツ役の吉田が夫婦)
さいねい:僕としては、スーツアクターさんが見どころです。福沢博文さんと20年前に一緒にデカレッドを演じて、福沢さんは20年間でアクション監督になって、今は本編の監督も担当するなど、特撮作品でマルチに活躍されていて、今回久しぶりにご一緒したのですが、全然動けるんですよ! さらに重厚感みたいなものが加わって、めちゃくちゃカッコいいんです!
「キャストが選んだお気に入りエピソード」でまさかの事実
Q:テレビシリーズについてもお伺いします。先日、メインキャスト6人が選んだお気に入りエピソードが東映特撮 YouTube Official で無料配信されました。さいねいさんはEpisode.34「セレブ・ゲーム」を選択しましたが、理由は「純粋にストーリーがおもしろい」とのことで……。
さいねい:実は、パッと頭に浮かんだ数字で選んでいました(笑)。
ほか4名:えぇ!!!!
さいねい:「デカレンジャー」はストーリーが全部おもしろいんです! それくらい自分では選べなくて、悩んだ末、パッと浮かんだ数字だった34=Episode.34を選びました。
Q:ちなみに、Episode.34「セレブ・ゲーム」はセンちゃんのメイン回ですが、伊藤さんが選んだEpisode.41「トリック・ルーム」とは、某人気探偵アニメの声優が敵役という共通点がありますね。
伊藤:その敵を推理で倒したことが嬉しかったです。Episode.41は、デカグリーンのスーツアクターである三村幸司さん演じる巡査に助けてもらったり、変身前のバン(赤座伴番)が駆けつけて僕を持ち上げるシーンも好きです。中澤祥次郎監督の演出も本当に素敵でした。
Q:林さんは、ホージーのメイン回であるEpisode.37「ハードボイルド・ライセンス」を選びました。
林:ロボを出さない、変身しない、最後はお墓で締めるという特撮界でも珍しい回で、「本当に朝の番組!?」って思いました。ホージー回はどれも思い入れが強いのですが、その中でも、特に印象的なのがEpisode.37。最初はバーから始まり、弾き語りを聞きながらバーボンを飲んで、最後はお墓で別れる展開で、踏切の警報機でデリート許可を表現したり、演出も昭和テイストでオシャレなんです。相手を撃つシーンも、撃った描写を描かずに相手が倒れていたり、降り注ぐ雨もホージーの涙に見えるんです。脚本は荒川稔久さん、監督は渡辺勝也さんと、20周年新作と同じタッグなので、とても印象に残っています。
Q:菊地さんのお気に入りエピソードは、ウメコとジャスミンのダブルヒロイン回であるEpisode.17「ツインカム・エンジェル」です。
菊地:ツインカム・エンジェル(注:ジャスミン&ウメコのコンビの愛称)での初のメイン回で、二人が歌う楽曲「girls in trouble! DEKARANGER」も初めてオンエアされた回でした。その後も、ツインカム・エンジェルがフィーチャーされて、二人の写真集まで出していただき、他のスーパー戦隊にはないアイドルのような展開で、今思えばとても幸せなヒロインたちだったと思います。
Q:そして、吉田さんはEpisode.45「アクシデンタル・プレゼント」を選びました。
吉田:コメントでも書きましたが、テツ以外誰も悲しまない話です(笑)。Episode.45まで積み上げてきたカッコいいヒーローが、おちゃめな宇宙人に翻弄されている姿のギャップを楽しんでいただけると思います。「デカレンジャー」は1話完結型ということで非常に観やすくて、さらにEpisode.45は総集編でもあり、それぞれのキャラクターの活躍が収録されているので、これを観れば「デカレンジャー」がわかるという意味も含めてオススメしました。
林:テツは二回目の女装だったよね!
吉田:当時はノリノリで女装していました(笑)。
Vシネクスト『特捜戦隊デカレンジャー20th ファイヤーボール・ブースター』は新宿バルト9ほか期間限定上映中/Blu-ray&DVDは11月13日(水)発売
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