ADVERTISEMENT

ヒュー・ジャックマンのウルヴァリン、なぜ愛され続けるのか?『デッドプール&ウルヴァリン』で待望のカムバック

 マーベルファン待望のデッドプール&ウルヴァリンは、デッドプールの映画であると同時に、ウルヴァリンの新作映画でもあります。ウルヴァリンはマーベル・コミック「X-MEN」に登場する人気キャラクター。X-MENとは、特殊な遺伝子を持っていることにより超人的な力を発揮する新人類(ミュータント)たちが活躍するヒーローチームのこと。各自が持つ能力はそれぞれ違うというのがポイントです。映画では、2000年の映画第1作『X-メン』(日本では1作目のみ“メン”表記)でヒュー・ジャックマンが演じ、多くの人に知られるようになりました。

 昨今のコミック・ヒーロー映画は、すでに知名度のあるスターが登場人物を演じることで話題になりますが、『X-メン』公開時のヒューは無名に近く、彼自身もこの役でブレイクし大スターになったわけです。そんなヒューが20年以上経っても演じているウルヴァリンは、なぜここまでに愛されるヒーローになったのでしょうか?(文・杉山すぴ豊)

ADVERTISEMENT

ウルヴァリンの魅力&ヒュー・ジャックマンの好感度がベストマッチ

 そもそもウルヴァリンとはどういうキャラクターか? 実は、彼のコミックデビューはX-MEN誌ではなくハルクでした。1974年の「The Incredible Hulk」誌180号でちらっと登場し、次の181号でハルクと戦っているシーンが表紙になりました。ウルヴァリンはカナダの超人チームに属するエージェントで、カナダの山中に迷い込んだハルクと戦うという設定。黄色いコスチュームとマスクに身を包んでいます。この時、ハルクはウェンディゴという白い毛で覆われた獣人と戦っています。恐らくハルク=緑、ウェンディゴ=白、ウルヴァリン=黄色と誌面上、色分けがはっきりしやすかったのかもですね。その後、ウルヴァリンは1975年にX-MENのメンバーとして登場します。

 僕は、1970年代後半に日本で発売されたアメコミの解説ムックでウルヴァリン(当時はウルヴァリーンと表記)の存在を知りましたが、最初は地味なヒーローだなと思いました。両拳から金属の爪(アダマンチウムという最強金属)が出るぐらいしか能力がなく、目から破壊光線を出すサイクロップスや天候を操るストームと比べると超人らしさに欠けている。しかし、1980年代後半にアメリカに行ったとき、どのコミックショップに行ってもウルヴァリンが大フィーチャーされていて、びっくりした覚えがあります。え? 自分が地味だと思ったこの爪男がスパイダーマンより人気なの? と。あとで知ったのですが、1980年代から、ミュータントと人類の確執を人種問題・マイノリティー問題の比喩的に描き始めたX-MENが人気を博しはじめ、その中でも無頼派のウルヴァリンが特に通目されていたのだと。ウルヴァリンは極めて暴力的で粗野ですが、実は仲間思いであり、心に傷を負っている。優等生的な正義の味方では決してない。読者の共感を得やすいアンチヒーローだったのです。

 そして映画化です。このウルヴァリン役、もともとはダグレイ・スコットが演じる予定だったそうです。『ミッション:インポッシブル』シリーズ2作目『M:I-2』の悪役を務めていた彼は、『M:I-2』の撮影が延びたため『X-メン』に参加できず、ウルヴァリン役がヒューに決まったそうです。結果、これが大成功となりました。しかし、当時のアメコミファンの中には、ヒューの起用を疑問視する声もありました。コミックのウルヴァリンは小柄な男なのです。それに対して、ヒューは背が高い。イメージと違うと。ただ(これは僕個人の意見ですが)コミックのウルヴァリンは西部劇のクリント・イーストウッドのイメージがあるとも言われており、ヒューは若き日のイーストウッドにちょっと似ていますよね。このへんが起用された理由かなと思います。

 ヒュー演じるウルヴァリンが人気を博した理由は、いろいろな意味で彼に感情移入しやすかったからではないでしょうか? 1作目『X-メン』を見直すとよくわかりますが、物語はウルヴァリンがX-MENというチームに見いだされ、参加する話です。つまり、ウルヴァリンの視点で観客はX-MENとは何かがわかっていく。彼がナビゲーターでもあった。そしてウルヴァリンはとても感情が激しいキャラです。すでに恋人がいる女性を好きになったり、大儀や正義よりも仲間や弱き者を助けるために戦います。

 そして僕が“地味”と思った能力ですが、爪で相手を倒すから必然的にアクションが肉弾戦になる。そして、彼の本当のスーパーパワーはどんな傷も治してしまうヒーリングパワー。ある意味不死身なんですが、これがつらいんです。というのも、それまで不死身の肉体を持つヒーローは、そもそも弾丸や刃物をものともしない無敵のボディーですが、ウルヴァリンの体は普通に傷つくんです。そして、その傷が治るだけ。だから痛いんですよ。自慢の爪も飛び出すたびに皮膚を突き破るから、戦うたびに激痛。そして、どんなにつらいことがあっても不死身が故に死ねない。傷つきながらも立ち上がる、とてもエモーショナルなヒーローですよね。

 またコミックでは日本とも由来のあるキャラであり、これを活かした映画『ウルヴァリン:SAMURAI』 では、日本でのアクションが描かれ、真田広之演じるヴィランと戦います。ウルヴァリンというキャラの魅力と俳優ヒュー・ジャックマンの好感度が見事にマッチして、ウルヴァリンは映画においても人気キャラになりました。

ADVERTISEMENT

本質はグッド・ガイであるが、ナイス・ガイではない

 結果ヒューはスピンオフを含め、2000年の『X-メン』から2017年の『LOGAN/ローガン』まで17年近くウルヴァリンを演じました。これにより“マーベル・コミック原作の実写映画のヒーローとして最長のキャリア”となり、ギネス記録として認められました。そして、ヒューのウルヴァリンは2017年の『LOGAN/ローガン』で一旦幕を閉じます。(ローガンとはウルヴァリンの本名の一つ)この映画でヒューもウルヴァリンを終えたと伝えられましたが、今回の『デッドプール&ウルヴァリン』でまさかの、そしてファンにとっては嬉しいカムバックです。

 しかし、『LOGAN/ローガン』で区切りがついてウルヴァリンがどうやって戻ってくるのか? どうやら今回のウルヴァリン、今までヒューが映画で演じてきたウルヴァリンとは別のウルヴァリンのようです。どういうことか? ここで昨今のマーベル映画で使われているマルチバースという設定が活きてきます。マルチバースというのはパラレルワールドみたいな概念で可能性の数だけ世界(バース)がある。つまり今までのX-MEN映画や『LOGAN/ローガン』のバースとは、別のバースのウルヴァリンということです。

 その証拠に、今回のウルヴァリンは、コミック初登場時から初期にかけて着用していた黄色いコスチュームを着ています。ヒューのウルヴァリンは今までこの格好でスクリーンに登場したことがないのです。従ってコミックのファンにとってはついにヒューがあのコスチュームになったと感激ものだし、今までの映画とのつながりをこれで絶つという、一石二鳥のすごい設定なのです。

 最後に、ウルヴァリンについてヒューが言っていたことが名言なのでご紹介しましょう。2013年、ヒューは Entertainment Weekly のインタビューでウルヴァリンのことを「本質はグッド・ガイであるが、ナイス・ガイではない」と。この言葉、映画を観ると本当に納得します。一筋縄でいかない“いい奴”ウルヴァリンの活躍をぜひ劇場で楽しみたいです。

映画『デッドプール&ウルヴァリン』は7月24日(水)最速公開

(c) 2024 20th Century Studios / (c) and TM 2024 MARVEL.

ADVERTISEMENT

杉山すぴ豊(すぎやま すぴ ゆたか)プロフィール

アメキャラ系ライターの肩書でアメコミ映画についての情報をさまざまなメディア、劇場パンフレット、東京コミコン等のイベントで発信。現在「スクリーン」等でアメコミ映画の連載あり。サンディエゴ・コミコンも毎年参加している。『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』に日本語吹替版の監修も担当。来日したエマ・ストーンに「あなた(日本の)スパイダーマンね」と言われたことが自慢。

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
ADVERTISEMENT