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イッキ見する人続出!「地面師たち」何が面白い?

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Netflixシリーズ「地面師たち」は独占配信中

 Netflixで7月25日から世界独占配信されている、綾野剛豊川悦司主演のオリジナルドラマ「地面師たち」。地主になりすまして勝手に他人の土地の売買を行う不動産詐欺集団<地面師>をテーマにした犯罪サスペンスだ。原作は新庄耕の同名小説、ドラマ「エルピス -希望、あるいは災い-」の大根仁が脚本と監督を担当している。

 「今日のTV番組TOP10(日本)」では連日1位をキープしており、日本トップ10(テレビ部門、7月22日~28日)では初登場1位を獲得、週間グローバルトップ10(テレビ・非英語部門)でも8位にランクインするなど、まさに勢いに乗る注目作。いったい何が視聴者を惹きつけているのだろうか。(文:大山くまお) ※一部ストーリーについて触れる部分があります。

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“Netflixが似合う”実力派キャストたち

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 地面師はチームを組んで詐欺を行う。暗い過去を持つ交渉役・辻本拓海を綾野、リーダー・ハリソン山中を豊川が演じているほか、怪しい関西弁を操る元司法書士の法律屋・後藤をピエール瀧、なりすましのキャスティングを行う手配師・麗子を小池栄子、土地や物件の情報を仕入れる情報屋・竹下を北村一輝、身分証や証書の偽造を行うニンベン師・長井を染谷将太が担う。非常にアクが強く、一筋縄ではいかないチームだと一目でわかるキャスティングだ。

 さらに、地面師たちのターゲットとなる大手デベロッパーの部長・青柳を山本耕史、地面師たちを追う捜査二課の刑事・下村をリリー・フランキー、下村とバディとなる若手刑事・倉持を池田エライザ、地上げ屋の林をマキタスポーツという顔ぶれ。また、ナレーションを山田孝之が担当している。

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 綾野は「幽☆遊☆白書」、瀧と染谷は「サンクチュアリ -聖域-」、山田とリリーは「全裸監督」、池田は「Followers」と、いずれもNetflixシリーズのドラマに出演しており、いわば“Netflixが似合う実力派俳優たち”が顔を揃えた作品だといえるだろう。

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ドラマ全体を覆う不穏な雰囲気

 物語は、東京・高輪にある都心のエアポケットのような土地をめぐって、100億円規模の不動産詐欺が行われるというもの。地面師たちがどのようにして難関を一つずつクリアしながら大手デベロッパーを罠にかけるかというメインストーリーに、地面師チーム内の思惑と駆け引き、さらに主人公・拓海の過去と因縁が絡み合って進んでいく。

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 チームによる詐欺犯罪を描く映画として『オーシャンズ11』などと比較されることがある本作だが、ハリウッド映画というより韓国の犯罪ドラマに雰囲気が近い。人はゴロゴロ死ぬし、バイオレンスとエロスもたっぷりある。

 ドラマ全体に不穏な空気が漂っているのは、主人公たちが義賊でも何でもないダーティーな集団であることに加え、お互いを信用しきっていない部分も大きい。何より、知的なムードを漂わせてはいるものの、実は異常な人間性の持ち主であるハリソンの存在そのものが不穏だ。彼が映画『ダイ・ハード』に登場する悪役、ハンス・グルーバーについて熱っぽく語る場面があるが、ハンスは崇高な目的を騙りながら実際はカネだけが目当ての悪党だった。ハリソンのキャラクターがドラマの鍵を握っていると言えるだろう。

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 本作は主人公たちに倫理や潔白さを求める人には向かないし、感情移入しなければ楽しめない人にも向かないだろう。間違いなく配信向きのピカレスクドラマであり、だからこそ刺激的で面白いのだ。

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実は元ネタがある!

 「地面師たち」は小説を原作にしているが、実はモデルになった事件がある。2017年に起きた大手デベロッパー相手の地面師詐欺事件であり、被害総額は約55億円に上る。大根監督は先に事件のことを知ってドラマ化を思い立ち、その後、原作小説を読んで具体的に企画を立ち上げたという。

 詐欺を描くフィクションは「コンゲーム」と呼ばれる。同じ詐欺を描く「コンフィデンスマンJP」や「クロサギ」を思い浮かべてもらえばわかるが、コンゲームものを楽しむことができるのは詐欺のターゲットになるのが悪辣な集団だからである。善良な庶民を標的にした詐欺は、エンターテイメントの題材にはなりにくい。

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 本作で詐欺の標的となる大手デベロッパーは、けっして<悪の集団>ではない。法にのっとり、まっとうなビジネスを行う営利企業である。しかし、彼らがどこかキナ臭い存在であることも多くの人が知っている。カネと自らの出世のため、土地を買い漁り、新しい建物を建てまくる。本作では描かれていないが、政治との癒着も疑われている。多くの人々が地上げに狂奔したバブル期の反省はどこにもない。

 だからこそ、彼らは地面師たちに騙されてしまうし、視聴者も彼らが騙される様を楽しんでしまうのだろう。ハリソンは作中でこう語っている。

「人類の歴史は早い話、土地の奪い合いの歴史です。土地が人を狂わせるんです」

 土地に狂わされてしまった人々のスリリングかつダーティーな争いを描く「地面師たち」は、悪性のエンターテイメントである。

Netflixシリーズ「地面師たち」は独占配信中
(C)新庄耕/集英社

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