泣ける…家族愛にあふれる『ハピネス』が刺さりまくった!
提供:バンダイナムコフィルムワークス
嶽本野ばらによる小説を人間ドラマの名手、篠原哲雄監督が映画化した『ハピネス』。“幸せ”や“喜び”を意味する“ハピネス”をそのままタイトルにした本作は、余命1週間と告げられた少女と、彼女の夢を支えようと奔走する少年が繰り広げる究極のピュアラブストーリーだ。ピュアな愛があふれ出すのは、決して恋人たちのことだけではない。二人を見守る人たちの家族愛など、映画の隅から隅までひたむきな優しさと愛情を感じられる温かな一作となっている。自分にとっての幸せを噛み締め、リピート鑑賞したくなるような本作の“心に刺さるポイント”を紹介する。(文・成田おり枝)
互いに思い合う究極の愛が刺さる
「私ね、あと1週間で死んじゃうの」。高校2年生の由茉(蒔田彩珠)が恋人の雪夫(窪塚愛流)に向かって放つ、衝撃の言葉によって幕を開ける本作。由茉には心臓の持病があり、医者から余命を宣告されていたのだ。自分の運命を受け止め、笑顔で残りの人生を精一杯に生きようとしている由茉の覚悟を感じた雪夫は、彼女との残り少ない日々に寄り添う決意をする。
本作の大きな特徴は、登場人物全員が「誰かのために」という思いを原動力にしているところ。由茉の両親は娘のため、雪夫は恋人のため、雪夫の姉は弟のために「一体、自分には何ができるのか」と必死に考え、行動に移していく。思いやりを持ち寄る彼らを見ていると、本当の愛とは与え合うものなのだと実感すると共に、世界がとても美しいものに思えてくる。親目線で観るのか、恋人目線で観るのかなど、どのキャラクターに感情移入するかによって、新たな味わいや楽しみ方が見つかる作品となっているので、ぜひ繰り返し鑑賞してみてほしい。
また死を目前にした由茉の夢は、「今まで人目を気にしてできなかったロリータファッションをやってみたい」「好きな人の温もりを感じていたい」「スペシャルなカレーを食べたい」というようにとびきりキュートで、「やりたいことをやるんだ」と一歩踏み出す勇気を感じられるものばかり。ロリータファッション命の女の子&バリバリのヤンキー娘という異色コンビの友情をつづった『下妻物語』で知られる嶽本の原作とあって、由茉の望みに「自分らしく生きることの尊さ」という幅広い世代に響くテーマがしっかりと盛り込まれていることも、本作をさらに輝かせる要因となっている。
娘のために…両親の無償の愛が刺さる
大人世代は、由茉の両親の視点で映画を観ればきっと心に刺さりまくるはずだ。母親である莉与を演じるのは、「不適切にもほどがある!」やNHK大河ドラマ「光る君へ」など話題作に引っ張りだこの吉田羊。篠原監督とは『月とキャベツ』や『影踏み』などタッグを重ねてきたシンガーソングライターの山崎まさよしが、父親の英生を演じている。
大切な娘の病気を治すことができないなんて、到底受け入れられないだろう。しかし前向きに過ごそうとする娘を見て、両親は「由茉が生まれてきて良かったと思えるなら、どんなことでもする」と決心。由茉が雪夫の家に泊まりに行きたいと願えば、本当ならば一分一秒でも娘にしがみついていたいところ、自分たちの気持ちをぐっと押し殺して笑顔で送り出すなど、彼女の意思を最大限に尊重していくのだ。
「この子のためならなんでもしたい」という我が子への気持ちは、まさに無償の愛。台所に立つ背中、川の字で布団に入って娘に触れる手、自慢の娘だと声を震わせる姿……。吉田と山崎は、細やかな仕草からも親の切なさと愛情、キャラクターの体温までもがにじむようなすばらしい演技を披露しており、彼らの気持ちがひしひしと伝わってくる。自身にとって初の父親役となった山崎は「僕にも娘がいる。撮影で泣く方ではないんですが、涙が止まりませんでした」と完成披露試写会で明かしていたが、同じように由茉の両親に感情移入することで、自然と涙があふれる人も多いことだろう。
そっと背中を押す…姉弟愛が刺さる
雪夫の姉、月子(橋本愛)の視点で観ても、また新たな楽しみ方ができる。月子は、自他共に認めるロリータさんで、ヘッドドレスやたっぷりのフリル、パニエを施したロリータファッションに身を包んでいる女性。両親は月子の好きなものを理解せずに罵倒するのだが、そこで唯一の味方となるのが弟の雪夫で、彼は自分を貫こうとする姉をいつも気にかけていたのだ。“ありのままの自分”を受け入れてくれる人がいるということは、なんと心強いことだろう。月子は雪夫の優しさを信じ、彼が恋人について悩みを深めていることを知ると、ロリータファッションに憧れている由茉をエスコートするためのコーディネートを彼に指南したりと、そっと弟の背中を押していく。お互いを認め合う二人は、理想の姉弟像と言えよう。同時にこんなふうにさりげなく、誰かを支えられる人になりたいと痛感させられるような関係性でもある。
月子役の橋本は、来年の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で主人公の妻役に抜てきされたことも話題を呼んでいる。月子は、孤独を知っているからこそ強いのだと感じさせる芝居もさすがの一言。そして淡い色を基調とした“甘ロリ”の衣装を気高く、凛とした佇まいで着こなした姿も超必見! 月子に恋に落ちてしまう人も続出するのでは……? と惚れ惚れするほど、橋本が嶽本作品を象徴するような存在を鮮やかに演じている。
余命1週間…ピュアな愛情が刺さる
そしてまぶしいほどの純愛を経験する雪夫と由茉の心の旅路には、何度もキュンとして何度も涙すること必至だ。
「好き」と真っ直ぐな瞳で語りかけ、視線からも恋心がはっきりと染み渡る二人は、観ているこちらも冒頭5分で好きになってしまうような魅力いっぱい。『恋を知らない僕たちは』(8月23日~)の公開も控え、9月には初舞台を踏むことも決定しているなど、20歳となった年に次々とチャレンジを重ねている窪塚は、彼女を失ってしまうという雪夫の戸惑いと、なんとか彼女の願いに応えようと尽くす切実さを見事に体現している。一方、是枝裕和監督や瀬々敬久監督など多くのベテランたちによって起用されてきた蒔田は、余命1週間の少女という難役にトライ。明るく振る舞いながらも、一番葛藤してきたのはやはり由茉なのだとわかる場面では、キャラクターの陰までを演じ切る蒔田の確かな演技力が、遺憾なく発揮されている。
「私より、君のほうがつらいよね」と残される雪夫を思いやる由茉、由茉のために駆けずり回る雪夫、そして離れてしまわないように手をしっかりと取り合う二人の姿を見ていると、誰かを思う気持ちが、人を動かしていくのだと胸が熱くなる。そしてきっとそう思える誰かに出会えることこそ、人生における“ハピネス”なのではないか。悲しみもありながら、恋人たち、周囲の家族など、あらゆる人の視点になって、何度もぽっと心にあかりが灯るような物語だ。
映画『ハピネス』は2024年11月27日(水)Blu-ray発売
Amazon Prime Video ほか各種配信サービスにて期間限定先行レンタル&デジタルセル先行配信中
公式サイトはこちら
(C) 嶽本野ばら/小学館/「ハピネス」製作委員会