ドクター・ドゥームとは何者?『アベンジャーズ』新ヴィランを徹底解説
『アベンジャーズ』シリーズ第5弾の新タイトルが『アベンジャーズ:ドゥームズデイ(原題)/ Avengers: Doomsday』となり、ロバート・ダウニー・Jr演じるドクター・ドゥームが新たなヴィランになることが、先日開催されたサンディエゴ・コミコンで発表された。アイアンマン役で人気を博したダウニー・Jrが悪役でMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)に復帰することは、全世界に衝撃を与えた。アベンジャーズの新たな敵となるドクター・ドゥームとは、一体何者なのか? 彼とアイアンマンには何か関係があるのか? 原作コミックの歴史を振り返りながら紹介する。(文・平沢薫)
ドクター・ドゥームとは
ドクター・ドゥームは、1962年刊行のコミック「Fantastic Four #5」で初登場した歴史あるキャラクター。当時大人気だった『ファンタスティック・フォー』シリーズの新たなヴィランとして、スタン・リーとジャック・カービーが生み出した。
本名はビクター・フォン・ドゥーム。高度な知能を持つ天才科学者で、性格は尊大。常に顔と全身を覆う金属製のアーマーと、フードを身につけている。また、古代ラトベリア王朝の末裔である母が持っていた魔術の知識と、チベット僧との修行によって身につけた魔法の力も持っている。
ただの邪悪なヴィランではなく、小国ラトベリアの専制君主でもあり、国民には誠実で、国民からも愛されているという側面も持つ。彼が世界征服を目指すのは、自分が支配した方が世界が良くなると考えているからなのだ。常に悪役というわけではなく、場合によって、敵になったり味方になったりする複雑なキャラクターだ。
誕生のきっかけは、大学時代の出来事。彼は、同じ大学の学生だったファンタスティック・フォーのリード・リチャーズに出会い、お互いの優れた科学知識を認め合い、友人になる。しかし、ある実験の際、リードに理論の不備を指摘されるが、それを無視して実験を行い、顔に傷を負ってしまう。そして、この出来事からリード・リチャーズを宿敵と考えるようになる。その後、世界中を放浪し、傷を隠す仮面と全身を覆う鎧を身につけ、ドクター・ドゥームになる。
彼はファンタスティック・フォーの最大の宿敵なので、すでに数々の実写映画化作に登場している。『ザ・ファンタスティック・フォー』(1994)ではジョセフ・カルプが演じ、『ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]』』(2005)とその続編『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』(2007)ではジュリアン・マクマホン、『ファンタスティック・フォー』(2015)ではトビー・ケベルが演じている。
原作コミックにおける、ドクター・ドゥームとアイアンマンの関係
MCUでアイアンマン役を務めたロバート・ダウニー・Jrがこのドクター・ドゥームを演じるということで、ファンの間では早速さまざまな考察が巻き起こっている。というのも、コミックのドクター・ドゥームとアイアンマンには、興味深いエピソードが複数存在するからだ。
そもそも、この2人には共通点が多い。天才的な科学者で、自ら製作したハイテク機能搭載の金属製スーツを着用し、性格は自信家で尊大。そこで、敵対したり共闘するだけでなく、もっとユニークな関係が描かれてきた。
マーベルキャラクターの「もしも?」を描いた「What If?」シリーズで、アイアンマンとドクター・ドゥームの身体が入れ替わってしまうコミックが「What If? Iron Man: Demon in an Armor Vol.1」(2010)。2人は大学のルームメイトで、貧しいドゥームが裕福なスタークを羨み、実験で3人の意識を入れ替える。やがて、2人はドゥーム・インダストリー社と、スターク・ユニバーサル社を立ち上げて対決するようになる。
また、別の宇宙=アース5012で、天才科学者トニー・スタークが、ドクター・ドゥームのようなアイアン・マニアックになるのが「Marvel Team-Up (Vol. 3) #2」(2004)。彼はドクター・ドゥームに似たアーマーを装着し、リード・リチャーズと敵対する。
逆に、ドクター・ドゥームがアイアンマンになるのが「Infamous Iron Man」(2016)。シビル・ウォーIIでアイアンマンが意識不明の状態になった時、ドクター・ドゥームが一時的にアイアンマンの後を引き継ぎ、インファマス・アイアンマンとして活動するが、彼の過去の悪行を知る者たちから信用されず、苦境に陥る。
どうなる?ロバート・ダウニーJr.が演じるMCU版ドクター・ドゥーム
ダウニーJr.のように、MCUでひとりの俳優が複数のキャラクターを演じた例はある。『キャプテン・マーベル』(2019)でミン・エルヴァを演じたジェンマ・チャンは、『エターナルズ』(2021)でセルシ役を務めたほか、トニー・スタークを支える人工知能・ジャーヴィスの声を担当したポール・ベタニーは、ジャーヴィス&マインド・ストーン&ウルトロンが用意した人造ボディで誕生したヒーロー・ヴィジョンを演じた。今回のダウニー・Jrの配役も、そのパターンである可能性がゼロではない。また、マーベルファンにさまざまな考察を楽しんでもらうためのキャスティングだという可能性もある。しかし、コミックでのドクター・ドゥームとアイアンマンの関係を考えると、このキャスティングには、やはり何かストーリー面での意味があるのではないか。
まず考えられるのは、マルチバースの変異体トニー・スタークがドクター・ドゥームになった、というパターンだ。しかし、それでは当たり前すぎる気もする。『アベンジャーズ/エンドゲーム』でアイアンマンのあの感動的な死を演じ切り、しかも『オッペンハイマー』でオスカー助演男優賞を手に入れたダウニー・Jrが「それなら出演してもいい」と思ったような、何か驚きの仕掛けがあるのではないかと期待してしまうのだ。
また、ドクター・ドゥームが登場するのは『アベンジャーズ:ドゥームズデイ(原題)』だけでなく、『アベンジャーズ:シークレット・ウォーズ(原題)』にも登場するという発表にも注目したい。
「シークレット・ウォーズ」というタイトルのコミックシリーズは2作あり、どちらかが映画の下敷きになるのではないかと噂されていたが、MCUを代表するダウニー・Jrがドクター・ドゥームを演じるなら、原点となるコミックは、1984年刊行のコミック「Secret Wars」ではなく、よりドクター・ドゥームが物語の中心となる2015年刊行のコミック「Secret Wars」なのではないか。このストーリーでは、ドクター・ドゥームが創造主となって宇宙を創造する。またこのコミックには、MCUで健在のドクター・ストレンジと、これからMCUに新参加するファンタスティック・フォーが主要人物として登場するのだ。
そう考えると、ドクター・ドゥームが現在撮影中の映画『ザ・ファンタスティック・フォー:ファースト・ステップス(原題)The Fantastic Four: First Steps』(2025年7月25日全米公開)に何らかの形で関係する可能性が出てきたのではないか。同作は、1960年代を舞台にした独立したストーリーであり、ギャラクタスとシルバーサーファーが登場することも発表されているので、ドクター・ドゥームが大きく絡むことはないだろう。しかし、『シークレット・ウォーズ』への前振りとして、カメオ的な登場はあるかもしれない? そんな期待も抱いてしまう。
いずれにしても、アイアンマンを演じた俳優がドクター・ドゥームを演じる以上、そこには何かの仕掛けがあるのではないか。それが明かされるに違いない『アベンジャーズ:ドゥームズデイ(原題)』が今から待ち遠しい。
『アベンジャーズ:ドゥームズデイ(原題)』2026年5月全米公開
『アベンジャーズ:シークレット・ウォーズ(原題)』2027年5月全米公開
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