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【完全ネタバレ】『エイリアン:ロムルス』徹底解説 歴代シリーズとのリンク、もっと楽しくなる小ネタ集

『エイリアン:ロムルス』

 SF映画の金字塔『エイリアン』シリーズ待望の最新作エイリアン:ロムルスが劇場公開中だ。本作は、1979年に公開された『エイリアン』第1作の延長にある物語。一本の独立した作品として構成されているが、『エイリアン2』(1986)との間をつなぐ物語としても楽しめる作りになっている。映画に込められたオマージュや歴代シリーズとのリンクを紹介したい(文:神武団四郎)

※本記事はネタバレを含みます。映画『エイリアン:ロムルス』鑑賞後にお読みいただくことをおすすめします。

意外なカメオも!二人の合成人間に注目

『エイリアン:ロムルス』

 本作の舞台は2142年。『エイリアン』で描かれたノストロモ号の惨劇から20年後の物語だ。映画はウェイランド・ユタニ社の宇宙船が、ノストロモ号の残骸と共に宇宙を漂うエイリアンを回収するシーンで幕を開ける。その直前、静かに宇宙を航行する宇宙船の船内で突然コンピュータMOTHERが作動し、ディスプレイに文字や記号が次々に表示される様は『エイリアン』そっくり。第1作をベースにクラシカルなユーザーインターフェースが採用されたが、ディスプレイがタッチ式になっているなど、何気にテクノロジーの進化を感じさせる描写が面白い。

 シリーズでキーパーソンとして活躍してきた合成人間(アンドロイド)。本作には、レイン(ケイリー・スピーニー)と姉弟として暮らしてきたアンディ(デヴィッド・ジョンソン)が登場する。使命は姉を守ることだが、甘えん坊の弟というこれまでにないイメージになっている。宇宙ステーションに潜入したアンディは、合成人間を嫌うビヨン(スパイク・ファーン)から「人間もどき」と呼ばれた時「合成人間と呼ばれる方が好きだ」と返答する。これは『エイリアン2』の食堂シーンで、ビショップ(ランス・ヘンリクセン)がリプリー(シガーニー・ウィーヴァー)やカーター(ポール・ライザー)に言ったセリフの流用だ。

 アンディは終盤、エレベーターの昇降路でゼノモーフとフェイスハガーに追い詰められたレインを救出する。その際「彼女に近づくな、バケモノ(Get away from her, you bitch!)」と叫ぶが、これは『エイリアン2』で少女ニュートを襲うエイリアン・クイーンにリプリーが放ったセリフである。ゼノモーフに追い詰められ、レインが顔をそむけるカットは、『エイリアン3』の医務室でドッグエイリアンに追い詰められたリプリーそっくりだった。

 なお、アンディはスクラップとして廃棄されていたところを、レインの父親に拾われ修理されたという設定。そのため動作が不安定なこともあるが、痙攣したように手が震えるなど、第1作でアッシュ(イアン・ホルム)が壊された時の動きに似ている。

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『エイリアン:ロムルス』
『エイリアン』でイアン・ホルムさんが演じたアッシュ - Twentieth Century-Fox Film Corporation/Photofest

 もうひとり合成人間で注目したいのが、半壊状態で発見された宇宙ステーションの科学責任者ルークだ。上半身だけの姿は『エイリアン2』のビショップを思わせるが、その顔はアッシュそっくり。レインたちにエイリアンについて淡々と解説する役どころもアッシュを思わせる。演じているのは英国の俳優ダニエル・ベッツで、顔だけイアン・ホルムに似せたCGに置き換えられているのでカメオ出演と言ってよいだろう。『エイリアン2』の劇中で、アッシュは欠陥のあるハイパーダイン120A2型(脚本も手がけたジェームズ・キャメロン監督らしいネーミング)だと説明されていたが、その改良かもしれない。もっともアッシュの行動は命令に忠実で、リプリーを強引に殺そうとした以外は欠陥品とは呼べないが。

 ルークがゼノモーフを研究して開発したのが、ヒトにエイリアンの生命力をもたらすZ-01合成物。ルークのセリフにあったように、『プロメテウス』でウェイランド社のピーター・ウェイランド社長が追い求めた不老不死の種といえる。ルークはこの試作品を社に届けるためにアンディたちを利用する。本作でも“アッシュ”は腹黒いキャラクターだった。

 ゼノモーフへの威嚇としてレインが手にするのが、海兵隊が使用しているF44AAパルスライフル。『エイリアン2』で海兵隊員やリプリーが使用していたパルスライフルそっくりなので、旧モデルという設定か。ゼノモーフの大群とのバトルで、レインは重力を操りながらパルスライフルでエイリアンを木っ端みじんに吹き飛ばす大活躍を見せつけた。ゲームと雑誌で知識を得たというタイラーがレインに銃の扱い方の手ほどきをする姿は、『エイリアン2』のヒックス伍長(マイケル・ビーン)とリプリーと重なる。攻撃的な性格のビヨンが赤いバンダナをつけているのは、『エイリアン2』の荒くれ兵士バスケス(ジャネット・ゴールドスタイン)を意識した装いと考えてよいだろう。

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エイリアンの演出にも小ネタだらけ

『エイリアン:ロムルス』

 本作に登場するのは、『エイリアン』でリプリーに撃退されたゼノモーフから派生したエイリアン。ロムルス号に回収された個体には、リプリーが放った銛が刺さったままになっている。ルークの回想シーンでは、フェイスハガーに取り付かれたケイン(ジョン・ハート)の顔写真が映し出されていた。ちなみに、ゼノモーフの造形は『エイリアン2』を手がけたレガシー・エフェクツ(当時はスタン・ウィンストン・スタジオ)が担当。同作に参加した後に独立し、以後シリーズのエイリアンの造形を担当してきたアレック・ギリスがチェストバスターを手がけている。

 捕食と繁殖のため宿主を求めるエイリアンの性質は、『エイリアン:コヴェナント』で解説されていたとおり。洞窟のような巣の壁に、宿主にされる人々が埋め込まれた地獄絵図のようなビジュアルは『エイリアン2』と同じ。デザインしたキャメロンは、H・R・ギーガのバイオメカノイドのイメージに沿って、「人骨や配線などを樹脂のような排泄物で固めて作った」有機的な構造物と設定した。

『エイリアン:ロムルス』

 宿主が埋め込まれエイリアンの巣と化した通路の床付近には、青いレーザーを照らしたようなミストが立ちこめていた。これは『エイリアン』で最初の見せ場になった惑星LV-426で、エイリアンの卵エッグチェンバーが置かれた宇宙船内と同じ。ミストの正体は不明なままだが、『エイリアン』では触れると反応していたことからセンサー的な役割があるのかも? ドラマシリーズを含め広がっていきそうな『エイリアン』サーガだが、ミストの正体解明にも期待したい。

 エッグチェンバーから宿主めがけて飛び出すフェイスハガーは、本作では研究室のカプセルの中で培養されていたようだ。侵入者に気づいたフェイスハガーが群れをなし飛び跳ねながら襲い来るさまは、ゼノモーフとはまた違う怖さが味わえる。そんなフェイスハガーは目がなく、音と温度変化によって寄生対象を感知する。そのため室温を体温以上に上げ、音を立てずに移動すれば気づかれることはないという。これは本作で新たに追加されたエイリアンの性質だ。フェイスハガーが累々とする通路をレインたちが息を殺して通り抜ける姿は、本作を手がけたフェデ・アルバレス監督の代表作『ドント・ブリーズ』そっくり。視覚以外の感覚をフル動員して敵を絶つ、最強の盲目老人ノーマンのDNAはついにエイリアンと融合した!

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シリーズのお約束も見られるクライマックス

『エイリアン:ロムルス』

 クライマックスは、小型宇宙船コーベラン号を舞台に、レインと人間&エイリアンのハイブリッド(オフスプリング)との一騎打ちが描かれた。コールドスリープの直前で異変に気づいたレインが、下着姿で行動するのはシリーズのお約束。本作では途中で宇宙服を着こむなど、『エイリアン』をより意識した展開になっている。映画を締めくくるレインの航海日誌もリプリーと同じだ。

 ほかにも、ノストロモ号の船内に置かれていたドリンキングバードが植民星の食堂に置かれていたり、ナヴァロ(エイリーン・ウー)がけだるげに煙草を吸う姿が第1作のランバート(ヴェロニカ・カートライト)と重なったり、『エイリアン2』を思わせたるビークル類、金属がきしむ音を強調した音響効果など、歴代作品を思わせる要素を挙げたらきりがない。

 本作でより鮮明になったのが、ウェイランド・ユタニ社の闇。『エイリアン2』の前に彼らが多くの情報を得ていたことになり、あらためて彼らの容赦ない手口に背筋が寒くなる。最初の2作のほか、『プロメテウス』から『エイリアン4』まで要素を前提に作られた本作は、300年近い年月にわたる壮大な物語をつなぐハブとしても機能している。シリーズをおさらいして臨むと、2周目以降の鑑賞はより楽しいものになるだろう。

映画『エイリアン:ロムルス』は全国公開中

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