日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」キャスト陣クランクインインタビュー【まとめ】
神木隆之介が一人二役で主演を務める日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」(TBS系、日曜よる9時~)がいよいよ10月20日から放送スタート。「アンナチュラル」「MIU404」『ラストマイル』を生んだ、脚本家・野木亜紀子、監督・塚原あゆ子、プロデューサー・新井順子の黄金トリオによる、初の日曜劇場に挑んだキャスト陣のクランクインインタビューをまとめて紹介する。
本作は、1955年からの石炭産業で躍進した長崎県・端島と、現代の東京を舞台にした、70年にわたる愛と友情、そして家族の壮大な物語。神木は、1950年代の端島に生きる主人公・鉄平と、現代の東京に生きるホスト・玲央という正反対の役柄を演じ分ける。戦後復興期から高度経済成長期の“何もないけれど夢があり活力に満ちあふれた時代”にあった家族の絆や人間模様、青春と愛の物語を紡いでいく、時代を超えたヒューマンラブエンターテインメント。
日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」10月20日(日)放送開始(毎週日曜よる9:00~10:19※初回25分拡大)
神木隆之介(鉄平役)
神木は、本作で1人二役に初挑戦。端島パートでは、炭鉱員の家で生まれ育った明るくまっすぐな鉄平を、現代パートでは東京に生きるホスト・玲央と、正反対の役柄を演じる。31歳にして日曜劇場初主演を務める神木が、本作への意気込みや見どころを語った。
端島で生きる1人の人間として、心の動きの生々しさを存分に表現したい
ーー製作陣の満場一致でのオファーだったとのことですが、出演を決めた時の気持ちをお聞かせください。
僕も作品が発表された時にそのことを初めて知って驚きました。一層のプレッシャーは感じていますが、そう思っていただけている以上、主役として皆さんの期待に応えられる作品にしたいと改めて気が引き締まる思いです。 本作はオリジナルストーリーなので、オファーをいただいた時はどういう展開になるか未知数でしたが、脚本・野木亜紀子さん、塚原あゆ子監督、新井順子プロデューサーとお話した時に、皆さんの顔が自信に満ち溢れていたのが印象的で。本作で表現したいことに対する強い意志を感じ、ぜひとお受けすることになりました。
ーー日曜劇場初主演に対する思いをお聞かせください。
これまで日曜劇場枠には、『あいくるしい』や『集団左遷!!』などに出演させていただきました。当時、事務所の先輩でもある福山雅治さんがみんなを引っ張っていく背中を見ているので、同枠の主演は、表現者としてさまざまな経験を積んだ人が背負う重い立ち位置というイメージ。そんな大役を31歳になるタイミングで任せていただけるとは夢にも思っていなくて…。正直不安もありましたが、心強い制作チームについていこうと決心しました。
ーー物語の舞台・端島にも行かれたとのことですが、どんな印象を受けましたか?
港から船で海を進んでいると、水平線に突然、軍艦のようなシルエットの島が現れて鳥肌が立ったことを覚えています。残っている建物の壁面には緑が生い茂っていて、しばらく使われていないのは一目瞭然なのですが、当時の活気の面影がなんとなく残っていて。どこか活き活きとした雰囲気を肌で感じられる不思議な場所でした。
ーー本作で挑戦したいと思っていることは?
塚原監督は、「キャラクター同士の関係性やテンポによって言葉は変わるものだから」と、しゃべるタイミングや動きなどの表現を俳優陣に委ねてくださいます。だからなのか、本番が終わってモニターチェックをすると、どこかドキュメンタリーっぽさがある映像になっていて。音声の被りなどの技術的な難しさがある中で、キャラクターとして目一杯に生かしてくれる、なかなかない環境でお芝居をさせていただいています。ドラマのキャラクターではありますが、僕もそこで生きる人間として、心の動きの生々しさを存分に表現できたらいいなと思っています。
ーー1人2役を演じると聞いた時はどう思われましたか?
最初は純粋に「どういうことですか!?」って(笑)。試行錯誤しながらそれぞれの役作りをしていますが、やはり難しいです。特に端島パートは僕が生まれる前の時代が舞台。小さな島が最大人口約5000もの人で賑わった様子や、島という限定された環境の中での人間関係の特殊さは想像することしかできないので、役作りも一筋縄ではいかないなと。
ーープロデューサーや監督からリクエストされたことは?
島は独特な空間で、本当に全員が家族。自分のことは全員が知っている環境なので、恋模様はデート1つとってもすぐに知れ渡るような環境です。そこに息苦しさを感じる人もいれば、一体感が楽しいという人もいる。そして、島で親の職を継ぐプレッシャーがある人もいれば、島を出て広い世界を見たい人も。そんな中、僕が演じる鉄平は、いかに自分の住む端島を良くしていくかということを軸に動く人間です。野木さんと塚原監督からは、「『ONE PIECE』のモンキー・D・ルフィのように前向きで元気なキャラクターでいてほしい」と言われました。島での複雑な人間関係や葛藤が多岐にわたっている役柄なので、繊細な表現も必要だなと思いながら演じています。
ーー現代パートの玲央はどのようなキャラクターだと解釈していますか?
玲央は、「だるい」「面倒くさい」などを口癖のように言う、無気力・無感動・無関心の男。将来自分が何をしたいのかもわかっていないのですが、このままでいいのかという葛藤もある一方で、それすら考えるのも面倒くさいという人間と言われました。鉄平とはしゃべり方の違いを意識しているのに加えて、醸し出す雰囲気にも差を付けられるように現場で試行錯誤しています。
宮本信子さんと名コンビのような関係性を築きたい
ーー撮影現場はどのような雰囲気ですか?
鉄平の兄・進平役の斎藤(工)さんをはじめ、今まで共演経験がある方が多く、気心知れた仲間同士での遊び心も大事にしながら撮影は順調に進んでいます。杉咲花さん、池田エライザさん、清水尋也くん、土屋太鳳さんと、同世代の仲間がいっぱいいて、僕自身もすごく楽しくて。休憩時間は和気あいあいとしていますが、それぞれのキャラクターを通して、どうやって端島と向き合い、どんな人生を生きていくのかを真剣に考えることができています。
ーー現代パートでのいづみ役・宮本信子さんとの共演も楽しみですね。
宮本さんとは、連続テレビ小説「どんど晴れ」(NHK)で共演させていただきましたが、同じシーンがほとんどなかったので緊張していますし、宮本さんがどのようにいづみという役を作り上げられていくのかをとても楽しみにさせてもらっています。現代パートで軸となる2人なので、“玲央&いづみコンビ”と言われるような関係性を作り上げられたらなと思います。
ーー現代と過去。2つの時間軸がある作品ですが、本作ならではの楽しみ方を教えてください。
端島パートの物語は明るく楽しい描写がたくさんありますが、当時の日本の状況や島の環境など、背負うものが多いキャラクターたちがいっぱいいるので、それぞれのキャラクターに感情移入しながら観ていただけるのではないでしょうか。 現代パートは、より身近に観てもらえるシーンでもありながら、現代を生きる青年がどのように過去の時代を見つめるのか。その過程での変化や成長を楽しんでいただけると思います。今を生きている僕たちに寄り添って描かれているので、端島パートとは違った部分に共感してもらえるはず。玲央と一緒にストーリーを見守る気持ちで観ていただけたら。
ーー最後に視聴者へのメッセージをお願いいたします。
今では“軍艦島”という名前で広く知られている端島をここまで本格的にドラマで描くことは初めてのこと。一度は聞いたことがある島だと思いますが、そこは一体どんな場所で、どんな人たちが暮らしていたのか、あまり知られていないと思います。僕自身、作品を通して初めて知ったことがたくさん。視聴者の皆さんにも本作を通して、当時の活き活きとした端島でどんな人間ドラマが生まれていたか、そして時代とともにどう移り変わったのかを見守っていただけたらうれしいです。
斎藤工(進平役)
主人公・鉄平の良き理解者でもある兄・進平を演じるのは斎藤工。妻が亡くなったことを認められず、帰りを待ち続けている炭鉱夫という役どころに挑む斎藤が、本作への意気込みや見どころを語る。
ーーオファー受けた際の気持ちをお聞かせください。
脚本・野木亜紀子さん、塚原あゆ子監督、新井順子プロデューサーが舵を取る船に、座長・神木さんらとともに乗せていただけることになり、贅沢な気持ちでいっぱいでした。いち視聴者として、このチームとキャストとが作り出す化学反応を見てみたいと思いましたし、それを現場で僕自身で体験できることがうれしかったです。
ーー実際にチームに参加してみていかがですか?
本読みの段階で、共演者の皆さんの役柄の捉え方や、ご自身のキャラクターとの融合に圧倒されました。進平は炭鉱夫役なのでロケでの撮影も多いのですが、背景の映し方にまで一切妥協がなくて。入念なロケハンを行っていることと、極力フィクションを省いて端島を再現するんだという強い思いを現場に立つたびに感じます。
ーー進平の役柄について教えてください。
進平は戦争を体験した人間で、ある意味十字架を背負っている人間。でもそれは時代的に進平に限ったことではありません。炭まみれになりながらお芝居をする中で、自分たちで一から島を作っていくぞ!という沸き立つ熱量を感じ、そういった戦争直後の日本のエネルギーが日本の発展の基盤になったのではないかなと。 そして、お芝居では鉄平と父・一平(國村隼)との距離感も大切にしています。3人には少し激情型な一面があって、國村さんとも「一瞬で感情に火がつくのは、荒木家ならではなのでは」と話していて。あまり決め込みすぎず、お2人のお芝居を反射させながら家族の関係性を作るように心掛けています。
ーー主演・神木さんの現場での印象は?
神木さんは、主役たる振る舞いをされながらもすごく柔和な方で、スタッフさんとコミュニケーションをとっている様子を見ていると、部署という垣根を自ら跨いで繋げてくれる方だなと感じます。 俳優部のキャプテンとしてだけではなく、作品全体を先導してくれている人間性にスケールの大きさを感じますね。
ーー現場の全体の雰囲気はいかがですか?
それぞれが経験をしたことがない当時の端島を想像しながら、創意工夫を重ねている素敵な現場です。僕の役は方言の勉強も必要だったのですが、長崎県出身の林啓史監督をはじめ、教科書通りのイントネーションに囚われて役を忘れてしまう瞬間がないように皆さんがサポートしてくださるので、とても頼もしいです。
ーー楽しみにしていてほしい映像はありますか?
現代と端島の時代感のコントラストには、やはり注目していただきたいです。美術部さん、衣装部さんをはじめとした全部署が、タイムスリップしたかのような映像を作るためにこだわり抜いています。小道具1つとっても手触りで僕たちを当時の端島に連れて行ってくれるので、より本作の世界観に入ることができていて。スタッフの皆さんの努力に日々感銘を受けています。
ーー最後に視聴者の皆さんにメッセージをお願いいたします。
戦後の日本が立ち上がるエネルギーがふんだんに宿る本作。どこかくすぶっている現代と、当時の端島からみなぎるエネルギーのコントラストを、今を生きる視聴者の皆さんにも浴びていただきたいです。野木さんの素晴らしい脚本を、塚原監督の演出に身を委ねながら。そしてそれを新井順子プロデューサーが俯瞰で見守ってくれるという、強靭なチームで一生懸命撮影を重ねています。まさに今の時代に必要な作品になっていますので、ぜひご期待ください!
杉咲花(朝子役)
島の食堂の看板娘で、しっかり者の朝子を演じるのは杉咲花。幼い頃から主人公・鉄平(神木)を好きだが想いを伝えられないでいるという役どころに挑む杉咲が、本作への意気込みや見どころを語った。
ーー台本を読んだ印象をお聞かせください。
人が人を想い、隣り合って生きることは容易でないけれど、時としてそのわだかまりが解きほぐされたり、縁や人情といった目に見えないものの温もりに静かなエールをいただけるようなこの物語に、胸が熱くなりました。
ーー朝子の役柄の魅力を教えてください。
誰かの言いなりではなくて、自分の本心にちゃんと耳を澄ませようとする朝子という人物がとても好きです。 朝子が食堂の娘として送る日々は“自由”からはかけ離れているかもしれません。ですが、どんなに忙しい生活の中でも、大地に花が咲くことや物体に光が反射している状態の美しさに、思わず立ち止まって心をときめかせてしまうような、豊かで愛らしい人物です。
ーー神木さんの本作での印象はいかがですか?
神木さんとは7度目の共演になりますが、すでにこの物語が新たな関係性としての景色や手触りをギフトしてくれているような気持ちです。
本作でなら、まだ手を伸ばしたことのない領域に忍び込めるのではないかという予感を抱きながら…。側で力になれるよう、よい作品になるよう励みたいと思います。
ーー撮影現場はどのような雰囲気ですか?
新井順子プロデューサーや塚原あゆ子監督、撮影の関毅さんはじめ、とても久しぶりの再会になるスタッフの方がたくさんいらっしゃって。地道に仕事を続けていたら、こんなにうれしい時間がやってくるのですね。大変な撮影を軽やかに超えていく、まるで端島のように活気のある現場で。この感じ久しぶりだなぁ、と、毎日アルバムをめくるような気持ちです。
ーー最後に意気込みをお願いいたします。
素敵な皆さまと一緒に精一杯頑張ります。
池田エライザ(リナ役)
鉄平がいる端島に、どこからか逃げるように突然やってきた謎の女性・リナを演じるのは、池田エライザ。謎多きキャラクターを演じる池田が、作品への意気込みや役柄の魅力を語る。
「どの時代でも水平線は変わらない」海沿いの撮影で感じたこと
ーー出演が決まった時の思いをお聞かせください。
父が端島の横にある高島出身で、祖父も炭鉱夫だったのですごく運命的に感じました。祖父に炭鉱夫時代の話を聞くことはかないませんでしたが、父は端島に行ったことがあるそうで、少しだけ身近な気持ちというか。私が演じるリナは端島出身の役柄ではないのですが、縁を感じています。この作品を通して、祖父が生きた時代を追体験できるような気がして、個人的にも幸せな経験になりそうだなと思っています。
ーーリナの役柄の魅力を教えてください。
ミステリアスという設定ではあるのですが、神経質で怖い女性ではないと思います。よく人を見ているし、気を配ったり、クスッと笑っていたりとかいろいろな表情をお見せできると思います。リナには何かを抱えている様子がありながらも、生きることを決して諦めない強さや包容力があります。ときどき達観したような意志の強さが現れるのがすごく好きで。セリフの行間にリナらしさがあって、自分ではなく相手が喋っている時にリナの心が動いているのを感じながら演じています。
ーーご自身と通じるところはありますか?
私がもしリナのような体験をしたら、彼女と同じように行動できるかはわかりません。それほど想像を絶する経験をしているキャラクターでもあります。そういった部分に対して、簡単にわかるよと言うことはできませんが、自分の痛みを通して、人の痛みを理解しようとする姿勢や生き方には共感できますし、素敵だなと思っています。
ーー主演の神木さんの印象は?
共演前も、実際お会いした後も印象は変わりませんでした。すごくフランクに話してくださる方で、たまにオタク的で凝り性な一面が垣間見えることも(笑)。世代も近いので、最近はお互いの好きなゲームや漫画の話ばかりしています。現場の雰囲気が和やかなのは、神木さんが常に楽しませてくれているから。主演の神木さんが一番大変ですし、出ずっぱりで駆け回っているので、自分のことだけでいっぱいいっぱいでも誰も責めないのに、いつも楽しそうにいてくださるのでありがたいです。そのおかげで、リナの役柄と同じように、仲が良い端島の幼馴染みの中に混ぜてもらっているような気持ちで現場にいることができています。
ーー他の共演者の方はいかがですか?
(土屋)太鳳とはもう何度も一緒に撮影していますが、毎回、彼女の噛み砕かれたお芝居を見て「こう解釈するんだな」と感じたり、どんどん変化していく演技を見るのが楽しいです。太鳳の方が1つ歳上ですが、なんだかすごく愛おしい気持ちになることも。 清水(尋也)くんは、以前共演した時は弟役だったので、当時は「姉ちゃん、姉ちゃん」と言ってくれていて。今回久しぶりにお会いすることになって、どんな感じになるかなと思っていたら「ご無沙汰しております」って堅苦しい挨拶をされて。(仲が良かったのが)リセットされているなと思って笑っちゃいました(笑)。他の皆さんともこれからじっくりとお芝居をご一緒できるのが楽しみです!
ーー本作では各地でロケ撮影も行われているようですね。
海沿いで撮影をしているのですが、海を目の前にすると、どの時代にも水平線があったんだなと実感します。この景色と共に、ずっと人の営みがあったんだなと思うとすごくエモーショナルな気持ちになりました。水平線を前に着物を着て立っている自分をモニターで見ると、タイムスリップしているような不思議な感覚を覚えることも。セットでの撮影もとっても楽しみにしています。いろいろな撮影場所で、野木(亜紀子)さんの素敵な脚本をより立体的にしようとみんなで力を合わせて頑張っています。
ーー最後にメッセージをお願いします。
1つでも多くのメッセージが1人でも多くの方の心に届くように、ドラマ作りに参加しているみんなで最善を尽くしながら、繊細に丁寧に、かつ大胆に取り組んでいます。受け取るメッセージは人それぞれだと思いますが、何か1つでも届けることができたらいいなと思います。
清水尋也(賢将役)
今回は鉄平の幼馴染・賢将を演じる清水尋也。賢将は鷹羽鉱業の幹部職員の息子で、小学生の頃に父の転勤をきっかけに端島にやってきた。温かな家庭で育った鉄平のことが羨ましく、時に劣等感を抱いているという役どころに挑む清水が、神木への印象や作品への意気込みなどを語る。
今を生きる若い世代にもいい未来が待っていると思ってもらえたら
ーー出演が決まった時の思いをお聞かせください。
日曜劇場に初めて出演させていただく緊張感と、脚本が野木(亜紀子)さんということで、野木さんの作品の世界に自分が登場できるんだという喜びがありました。
ーー脚本を読んだ印象は?
特に自分が関わっているところだと、鉄平、朝子(杉咲花)、リナ(池田エライザ)、百合子(土屋太鳳)の若者たちの群像劇にすごく尊いものがあるなと感じました。揺れ動いていく関係性とともに心情が繊細に描かれていて、演じるのは難しいと思いますが、その役として生きられることに幸せを感じました。。
ーー賢将の役柄の魅力を教えてください。
誰に対しても気さくに振る舞ういい奴という印象ですが、実はデリケートで可愛げのある人物です。一見チャラいようにも見えますが、話が進んでいくごとに自分の感情に嘘をつきたくないというまっすぐな部分や、どこか臆病で繊細な部分が見えてきて、演じていてどんどん好きなっています。 あとは鉄平との関係性が重要ポイント。2人の幼馴染感は監督の塚原(あゆ子)さんにアドバイスをいただきながらお芝居に臨んでいます。
ーー主演の神木さんの印象は?
今回初めてご一緒させていただくのですが、親友という立ち位置でずっと一緒にいる役柄なので、少しでも何か学ばせていただきたいなと思っています。役者は自分の役のことを考えてアプローチして作っていきますが、ガチガチに固めて完成させてしまうとそこに手を加えることができなくなってしまう。役は演じる僕たちだけのものではなく、脚本や演出家さんの“こういう人間にしたい”という思いを汲む必要がある。その中で自分が思う筋を通す、いい塩梅を見つけていくことが役者の仕事だと僕は思っていて。神木さんはまさに監督の意見や提案に柔軟に対応する中で、ご自身の役のイメージは崩さずに演じていらっしゃる印象です。 僕も周りの方々や、監督をはじめとしたスタッフの皆さんとコミュニケーションを取りながら現場で役を作っていくタイプなので、心地よくお芝居させていただいています。
ーー他の共演者の方々はいかがですか?
作品の規模も大きく、気を抜かないようにと変に硬くなってた部分がありましたが、いざ現場に入ると幼馴染のメンバーは共演経験のある方ばかりで変わらず温かくて、いい意味で力が抜けました。 杉咲さんは久しぶりにお会いしたのですが、楽しい方なので、神木さんと僕がちょこちょこふざけていると、笑いながらツッコんでくれたり(笑)。 土屋さんは『チア☆ダン』での共演の時に支えていただいて。今回も変わらず楽しいですし、見守ってくださっている感じです。 池田さんは以前、映画『貞子』で僕のお姉ちゃん役だったんです。当時は“姉ちゃん”と呼んでいたので、今日も現場で「弟よ」と言われて(笑)。久しぶりにお会いして改めてご挨拶させていただいた時は少し恥ずかしかったです…!
ーー本作では各地でロケ撮影も行われているようですね。
昔と今を比べると、今のほうが絶対に便利なものは多いですが、人と人との繋がりや心の余裕など、そういう自由さはもしかしたら昔のほうがあったのかなと思う瞬間があります。何もないからこそ、自分たちが頑張らないといけない、自分たちの足で立たないといけないというエネルギーがあったのではないかと思うんです。端島は、狭い中で共に暮らす人々が一緒に頑張って島を発展させようとしていた活気あふれた場所。海や街並み、ロケ地のパワーを借りて、その活気を表現できたらいいなと思います。実際に海を見ているのは気持ちがいいですし、撮影初日のシーンは神木さんと2人でサイダーを飲みながら、海を見ながら話して…楽しかったです。
ーー最後にメッセージをお願いします。
僕たちのような若い世代は、実際の70年前の時代を知りません。それでも未来にどう希望を見出していくかというのは、どの時代でも共通だと思うんです。最近の若者は、家を持ちたがらないとか、結婚したいという人が減ってきているとか、ネガティブなイメージで言われがちですが、希望を持って日々を生きていた人たちの物語を見て、少しでも今を生きる若い方にもいい未来が待っていると感じてもらえたら。僕自身も脚本を読んでたくさんパワーをいただいています。若い世代が少しでも光明を見出せる作品になるように、賢将という役を通して作品の力になれたらと思っています。
土屋太鳳(百合子役)
端島にある鷹羽鉱業の職員の娘、百合子を演じるのは土屋太鳳。一見自由奔放に生きているように見えて、過去の出来事からコンプレックスを抱えているという役どころについて、役の魅力や作品への意気込みを土屋が語った。
愛情と祈りが感じられる、心が少しホッとするような作品
ーー台本を読んだ感想をお聞かせください。
愛情と願い、祈りが感じられました。また責任感や覚悟が、物語をぐっと支えているような印象です。華やかさはもちろん、ユーモアのさじ加減も素晴らしくて。台本を読むだけでそれぞれの役に感情が入っていく感覚です。 実際に端島を訪れた際には、「ここに人が住んでいたんだな」と人間のパワーを肌で感じました。テーマは一見壮大のように思えますが、当時端島に住んでいた方々にとっては日常でもあります。そこには家族愛があって、友情があって、仕事の苦しさがあって…、それは今の私たちと同じ。なので身構えずに観ていただけたらと思います。
ーー百合子の役柄の魅力を教えてください。
まだ多くは話せないのですが、百合子は時代の象徴的な傷を負っているキャラクター。たくさんの方々が同じ境遇で苦しまれてきたのだろうなと切に感じながら演じています。心に傷を負っているからこそ、人一倍明るく生きている。普通は他人に自分の感情をそんなに見せようとしないと思うのですが、百合子は自分の大切な人には心を開く、とても人間らしくて愛情深い女の子です。朝子(杉咲花)に少し意地悪をしてしまう一面もあるのですが、好きの裏返しなのではないかなと思いながら演じています。
ーー主演の神木さんの印象は?
初めてお会いしたのは17歳くらいのときで、私自身も神木さんが声優を務めたり、出演した作品を観て育ってきた1人です。たくさんのキャリアを積まれている方なのに、変わらずすごくナチュラルな佇まいでいてくださって。実は、さっきも神木さんに「どうしてそんなに自然体なの?」と聞いちゃいました(笑)。おかげで撮影現場の空気は柔らかくて。もちろんシーンに対しての緊張感はありますが、一緒に難しいニュアンスの演技に挑むときは、神木さんから「こういう言い方はどう?」と提案してくださることもあるんです。
ーー他の共演者の方はいかがですか?
幼馴染を演じるのは、これまで共演したことがある方々なので、出演が決まった際はすごくうれしかったです。杉咲花ちゃんとは、花が14歳くらい、私は17歳くらいの頃に出会っているので「たおっち」と呼んでくれているほど。なので、幼馴染はこういうことだなって思いながら、お互い現場ではのほほんと話して過ごしています。 賢将役の清水(尋也)くんは、いい距離感で賢将としていてくれています。多分みんな本当はおしゃべりなのですが、学生のようなわちゃわちゃした感じはなく、ほどよく静かで「みんな大人になったね」という感じ(笑)。昔の撮影のときとは雰囲気がまた違います。
ーー本作では各地でロケ撮影も行われているようですね。
さまざまなロケ地にお邪魔させていただいているのですが、久しぶりにこんなに長く広い空を見ているなぁと。自然を見ることができるのでとても心が豊かになりますし、この前は撮影帰りに花火が上がっているのを見ることができました。 美術部の皆さんの魂がこもったセットでは、時代を感じる1つひとつの小物がすごく可愛いので、そのあたりもぜひ注目していただきたいです。 そして、どんな環境での撮影でも、監督の皆さんの演出に助けられています。塚原監督は、役の感情の流れを止めずに走らせてくれたり。『チア☆ダン』のときもお世話になった福田亮介監督は、作品の世界にズドンと入れ込んでくださる方。こんな素敵なチームの輪の中に入れていただいて、すごく光栄だなと思いながら撮影を重ねています。
ーー最後に視聴者へのメッセージをお願いします。
20代最後の年に日曜劇場に戻ってくることができて、とても光栄ですし、うれしい限りです。 百合子は物語後半にかけてよりバックグラウンドが見えてくるような役どころ。たくさんの方々が感じてきた思いを、今の時代の人たちに百合子を通して心のバトンを渡せると思うと、すごく緊張しますし、プレッシャーもあります。でも、そのために自分はこの仕事をしてきたのかもしれないとも感じています。 70年の時間軸の中に、さまざまな要素が詰まっていて、観れば観るほど、噛めば噛むほど味が出てくるような作品になっていますので、ぜひじっくり楽しんでいただけたらうれしいです!