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劇場版『風都探偵』でビギンズナイトを描いた理由 椛島洋介x三条陸x塚田英明、仮面ライダースカルに込めた思い

左から塚田英明エグゼクティブプロデューサー、椛島洋介監督、脚本監修の三条陸

 今年15周年を迎えた特撮ドラマ「仮面ライダーW(ダブル)」(2009~2010)の正統続編として、漫画・アニメ・舞台といったメディアミックス展開で世界観を広げている「風都探偵」。初の劇場版となる『劇場版「風都探偵 仮面ライダースカルの肖像」』では、仮面ライダーW誕生の秘密に迫る「ビギンズナイト」が描かれている。「風都探偵」の仕掛け人である脚本監修の三条陸、エグゼクティブプロデューサーの塚田英明、アニメシリーズから続投する椛島洋介監督がインタビューに応じ、劇場版誕生の経緯、本作のキーマンである鳴海荘吉/仮面ライダースカルの魅力を語った。(取材・文:編集部・倉本拓弥)

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“劇場版でないと観られない”仮面ライダースカル

Q:「風都探偵」劇場版企画はいつ頃から始動していたのでしょうか?

椛島洋介監督(以降、椛島監督):テレビシリーズ制作中から、やんわりと「次もやりたいよね」という声はいただいていたと思います。

三条陸(以降、三条):(テレビシリーズが)好評だったので、次もやりたいけれども、(アニメーション制作を担当する)スタジオKAIさん(のスケジュール)がパンパンで、すぐに「はい」とは言えないという話を聞いていました。

椛島監督:(スタジオKAIの)古谷(大輔)制作部長と膝付き合わせて話し合った時に、次にもしも(新作を)作らせていただけるのであれば、シリーズはしんどいから、(原作漫画)1巻を1本分として作って、OVAもしくは映画として上映してもらえないかとお願いしたことがありました。そこから、劇場版を前提として、1本のシナリオを進めていきました。

塚田英明(以降、塚田):(アニメシリーズは)配信と TOKYO MX さん等で放送させていただきましたが、「風都探偵」をまだ知らない人がいるのではと思いました。作品の認知度をもっと広げたいとなれば、劇場版として制作することに意味があるのかなと考えました。

Q:劇場版で描くエピソードとして「ビギンズナイト」を選んだ理由は?

三条:「風都探偵」は起承転結がある作品で、事件毎にカラーリングを変えています。それを切り取って、1つのエピソードを映画館で観ていただく場合、確かに観やすさはありますが、映画館で上映する作品となると、パンチが弱いかなと思いました。「風都探偵」は「仮面ライダーW」テレビシリーズのスタイルを踏襲した漫画なので、その中で特殊性があるのは、やはり「ビギンズナイト」なんです。

 また、仮面ライダースカルの活躍は、劇場版でないと観られないという印象が今も強いんです。映画館で観るためにお客さんが来るキャラクターは、やはりスカルなのではないかということを、塚田さんにお話しました。

Q:(三条さん&塚田さんへ)「ビギンズナイト」は、15年前の実写映画『仮面ライダー×仮面ライダー W(ダブル)&ディケイドMOVIE大戦2010』でも描かれています。当時、どのようなことを意識して物語を構築していたのでしょうか?

三条:「ビギンズナイト」は「仮面ライダーW」のアバンタイトル(プロローグシーン)です。第1話のオープニング前に、おやっさん(鳴海荘吉)が死んで、左翔太郎がフィリップと一緒に脱出したことの断片しかわからず、「昔そういった事件があった」という前提で本編が始まるので、最初からそこをいつかやろうというストーリー構成になっていました。そして、「仮面ライダーディケイド」との新しい年末映画『MOVIE大戦』が増えるという話になったので、「ビギンズナイト」はそこでやるしかないということになりました。

塚田:第1話の時には、冬のタイミングで映画があることは何となく決まっていました。なので、その時に(「ビギンズナイト」を)しっかり描こうという方向性は、ある程度固まっていました。

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鳴海荘吉をいかにカッコよく描けるか

Q:(椛島監督へ)「ビギンズナイト」を映像化する上で挑戦的だったことはありますか?

椛島監督:鳴海荘吉をいかにカッコよく描けるかということです。「風都探偵」アニメシリーズの時からスタンスはあまり変わっていませんが、鳴海荘吉の声が(吉川晃司から津田健次郎に)変わるわけじゃないですか。なので、翔太郎を描いた時にも心がけていたことなのですが、基本的に役者さんが演じられる指先までの芝居感を、動いた時にその人の声が聞こえるぐらいまで追求していたんです。今回も、津田さんの声を伏せても、吉川さんの声が再生できるといいなということを目指しています。

Q:物語のキーマンとなる鳴海荘吉の魅力はどんなところでしょうか?

塚田:鳴海荘吉は、ハードボイルドを1つのテーマにしています。 ハードボイルドを体現する人を“おやっさん”として描こうということにして、翔太郎が憧れる存在を具現化してほしいという形でスタートしました。

三条:翔太郎がなりたかった存在なので、(荘吉は)「これは翔太郎には無理だな」というレベルになっている人です。翔太郎にはないカッコよさを備えていることが最初の条件です。そして、ザ・ハードボイルドの厄介さがセリフ回しで表現できたらいいなと思って、「ダメ」と思ったことは即答するのに、翔太郎の活躍に感動しても、すぐにそうは言わせない。素直ではないところも、カッコよさの1つになるようにセリフ回しとかは考えています。

Q:鳴海荘吉役に津田健次郎さんを起用した経緯を教えてください。

三条:ナチュラルにハードボイルドな声で、吉川さんが狙った荘吉を自然体で表現できる方がいいなと考えていて、それに最も近い人が津田さんでした。かなりイコールな喋り方をしているところが多く、オリジナルの荘吉に近かったので、やはり合っていたんだなと思いました。

椛島監督:最初は「どうなるんだろう?」と思っていたのですが、第一声を聞いた時に、「これだ!」という感覚になりました。芝居のリテイクもほとんどありませんでした。津田さんの表現がそのまま鳴海荘吉になる印象でした。

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「風都探偵」をライフワークにしていきたい

Q:仮面ライダースカルの演出も、実写作品に引けを取らないクオリティーでした。作画&演出でこだわった点を教えてください。

椛島監督:仮面ライダースカルのスーツアクターを担当した永徳さんを取材して、スカルで目指したアクションの方向性をお伺いしました。永徳さんは(攻撃の)一撃の重さを大事にしたいとお話しされていたので、それをアニメーターに伝えました。

Q:変身直後の美しい佇まいも印象的でした。

椛島監督:永徳さんの背中の逆三角形のシルエットが、鳴海荘吉っぽいんです。頭身は実写ドラマよりも上がっていますが、それでも(荘吉に)見えるように、背中はとにかく大事に描いています。荘吉には、背中で語るカッコよさがあるので、翔太郎が見る部分は絶対的にカッコよくないと、憧れられないですよね。少しでもなで肩になっていたら、「これは違う」と大きく修正しました。

Q:アニメ「風都探偵」第2期の実現を待っているファンも多いです。みなさんが見据える「風都探偵」の未来について教えてください。

塚田:最後までアニメシリーズで描き切りたいです。三条先生の頭の中には、この先のビジョンが浮かんでいるはずです。未来永劫ストーリーを続けるようには作っていないはずなので、少なくとも原作がある分は、全てアニメにしてほしいなと思います。

三条:原作漫画に関しては、予定されているものは思っていた以上に順調な進行です。ここまで恵まれた漫画展開はなかなかできないと思っています。後は、そこに付随するものがいろいろ増えていくと嬉しいです。

椛島監督:終わってほしくないというのが正直な気持ちです。(エピソードタイトルで)アルファベットが尽きたらどうなるんだろう? とかも考えたりします。直近では、ときめのビギンズナイトが連載されていたので、それを映画でやりたいです。「風都探偵」をライフワークにしていきたいと思っているので、頑張ってシリーズを作り続けていきます。もちろん、僕だけでは難しいので、僕以外にも作れる人をどんどん育てて、代替わりがきちんとできるように、未来につなげていきたいと思っています。

『劇場版「風都探偵 仮面ライダースカルの肖像」』は期間限定上映中

(C) 2024「風都探偵」製作委員会

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