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ちょっと気の早い!第97回アカデミー賞作品賞ノミネート予想【2025年版】

 テルライド、ヴェネチア、トロントなど秋のメジャー国際映画祭も閉幕し、来年3月2日に開催される第97回アカデミー賞作品賞にノミネートされそうな作品が続々とお披露目になった。賞レースが本格的に始まる12月を前に、現時点でのノミネート作品を予想してみよう。(2024年11月11日時点)

『The Brutalist』のエイドリアン・ブロディ-Lol Crawley

 まず一本目は、ベネチア国際映画祭で銀獅子賞を含む5冠に輝いた『ザ・ブルータリスト(原題) / The Brutalist』。ホロコーストを生き延びたハンガリー生まれのユダヤ人建築家、ラズロ・トースの30年の激動の人生を描いた伝記ドラマだ。監督はブラディ・コーベット(『ポップスター』)。主演は母親がハンガリー生まれのエイドリアン・ブロディ。共演はフェリシティ・ジョーンズガイ・ピアースステイシー・マーティン。『戦場のピアニスト』(2002)でオスカー主演男優賞に輝いたブロディも久々にアカデミー賞にノミネートされるかもしれない。上映時間は215分。全米ではA24配給で12月20日に公開。

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 ショーン・ベイカー監督の『ANORA アノーラ』も賞レースを席巻するだろう。ニューヨークのブルックリンに住むストリッパーと億万長者のロシア人のロマンスを描いたコメディドラマだ。5月のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞。ベイカーの前々作『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(2017)はアカデミー賞で助演男優賞(ウィレム・デフォー)にノミネートされた。アメリカではNEON配給で10月18日にニューヨークやロサンゼルスなど6館で先行公開され、週末3日間の1館あたりのアベレージは9万1,750ドル(約1,400万円)という今年ナンバー1の驚異的な数字を記録。11月8日に拡大公開がスタートした。ゴッサム・アワードでは作品賞を含む最多4部門にノミネートされている。

『Conclave』Focus Features / Photofest / ゲッティ イメージズ

 テルライド映画祭、トロント国際映画祭、そしてサンセバスチャン映画祭で絶賛された『コンクラーベ(原題) / Conclave』も賞レースで話題を呼びそうだ。新ローマ教皇を決める選挙「コンクラーベ」を巡り、亡き前教皇の隠された秘密を題材にしたレイフ・ファインズ主演の英米合作スリラー。スタンリー・トゥッチジョン・リスゴーイザベラ・ロッセリーニが共演。監督は前作『西部戦線異状なし』(2022)がアカデミー賞で作品賞を含む9部門にノミネートされ4部門受賞したエドワード・ベルガー。北米では10月25日に封切り後、2週連続で4位を記録している。

 フランスの巨匠ジャック・オーディアール監督の『エミリア・ペレス(原題) / Emilia Perez』の評価も高い。メキシコのカルテルの凶悪なボスが女性に生まれ変わる異色のミュージカル・クライム・ドラマだ。主演はゾーイ・サルダナカーラ・ソフィア・ガスコン。共演はセレーナ・ゴメス。カンヌ国際映画祭で審査員賞と女優賞を受賞。アカデミー賞国際映画賞のフランス代表にも選ばれている。北米では11月1日に限定公開され、11月13日からNetflixで配信が始まる(日本は未定)。

 BFIロンドン映画祭やニューヨーク映画祭で話題を呼んだ、スティーヴ・マックィーン監督(『それでも夜は明ける』)の英米合作『ブリッツ ロンドン大空襲』にも注目したい。第2次世界大戦中にロンドンで起こった爆弾事件を巡る歴史戦争ドラマだ。主演はシアーシャ・ローナンハリス・ディキンソン。アメリカとイギリスで11月1日に公開され、11月22日からApple TV+で配信がスタートする。

 テルライド映画祭やニューヨーク映画祭で絶賛された、ラメル・ロス監督作『ニッケル・ボーイズ(原題) / Nickel Boys』も賞レースに絡んでくるかもしれない。1960年代、フロリダの虐待がはびこる少年感化院「ニッケル・アカデミー」に送られた2人の黒人少年たちの友情に焦点をあてた、ピューリッツァー賞受賞小説を基にしたドラマ作品だ。12月13日にアメリカで公開される。

『ザ・サブスタンス(原題) / The Substance』は来年5月日本公開(C) The Match Factory

 カンヌ国際映画祭で脚本賞を、トロント国際映画祭のミッドナイト・マッドネス部門で観客賞を受賞したフランス人監督コラリー・ファルジャの『ザ・サブスタンス(原題)』(2025年5月公開予定)もオスカー候補の呼び声が高い。ハリウッドの光と闇を描いた、デミ・ムーアマーガレット・クアリー主演のこのボディ・ホラーは批評家から大絶賛されており、アメリカやイギリス、フランスで興行的にも成功を収め収め世界興行収入は5,000万ドル(約75億円)に迫っている。ヨーロピアン・フィルム・アワードでは作品賞と脚本賞にノミネートされている。

『デューン 砂の惑星PART2』Warner Bros. / Photofest / ゲッティ イメージズ

 他にも、ニューヨークの最高警備刑務所シング・シングの芸術リハビリ・プログラムを題材にA24がアメリカ配給を手がけた『シング・シング(原題) / Sing Sing』や、ティモシー・シャラメ主演、ジェームズ・マンゴール監督のボブ・ディランの伝記映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』、ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞したペドロ・アルモドバル監督初の英語作品でティルダ・スウィントンジュリアン・ムーア主演の『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』、シリーズ1作目がアカデミー賞で10武門にノミネートされ6部門受賞したドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作『デューン 砂の惑星PART2』、そしてオスカー12部門にノミネートされ作品賞含む5部門を受賞した『グラディエーター』(2000)の続編、『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』といった作品もノミネートされる可能性がありそうだ。

 第97回アカデミー賞のノミネート発表は2025年1月17日(現地時間)。果たして、どの作品のタイトルが呼ばれるだろうか?(小林真里:映画評論家/映画監督)(数字はBox Office Mojo調べ・1ドル150円計算)

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