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縦型映画がアツい!本格SFからアニメまで、今年の「TikTok TOHO Film Festival」はジャンル豊富

アンバサダー・審査員を務める三吉彩花(俳優・モデル) 写真:杉映貴子

 今や、手のひらが映画館になる時代。スマホの縦型画面を生かした「縦型映画」が、アツい盛り上がりを見せている。「縦型映画」を通して新たな映画のカタチに出会う映画祭として回数を重ね、今年第4回を迎えた縦型映画祭「TikTok TOHO Film Festival 2024」(TTFF2024)には、バラエティー豊かな作品群が集結。「#TT映画祭2024」のハッシュタグ付きで投稿された応募作品の総再生回数が1億7,600万回以上(2024年12月9日時点)にのぼったことからも、その注目度の高さがうかがえる。大冒険できるSF、時代を切り取ったアニメーション、コミカルな人間ドラマなど、縦型画面からたくさんのワクワクが飛び出した本映画祭の受賞作品を見渡しながら、「縦型映画」の魅力に迫る!(取材・文:成田おり枝)

縦型映画祭がアツいワケ

審査員を務める岡村和佳菜プロデューサー、三吉彩花、映画感想TikTokクリエイターのしんのすけ

 第1回から本映画祭に携わってきた映画感想TikTokクリエイターのしんのすけは「今年の『TikTok上半期トレンド大賞2024』の大賞は、『ショートドラマ』でした。それくらい、縦型で動画作品を観るのが当たり前になっている」という。

 「TikTok TOHO Film Festival」は、ショートムービープラットフォーム「TikTok(ティックトック)」と東宝株式会社の映像業界におけるトップランナー同士がタッグを組んで、世界に羽ばたくクリエイターを発掘する縦型映画祭。第4回目となる「TikTok TOHO Film Festival 2024」は1分~10分以内の作品が審査対象となり、13歳以上から参加可能。スマホでも撮影できるとあって、誰でも「やってみようかな」「できるかもしれない」と気軽に応募できる点が大きな魅力だ。今年は約400の応募作品が投稿され、グランプリをはじめ5部門の受賞作品が決定した。応募作品を鑑賞してみると、“こんな手があったのか!”とクリエイターたちの熱気に驚くこと必至。新たなムーブメントを作るのは、いつだってピュアなチャレンジ精神なのだと実感する。

 クリエイターの未来に光を当てている「TikTok TOHO Film Festival」では、グランプリ受賞者の副賞として、東宝プロデュースによる新作縦型映画制作のサポートが受けられるというのがまたスゴい! 昨年グランプリを受賞した宮田和弥監督が制作した『立て髪貴婦人』の主演には斉藤由貴が迎えられ、今年のグランプリ受賞記念作品には齊藤京子が起用されることが決定しているなど、早速スターとの仕事が約束されているのだ。さらに今年の審査員には、アンバサダーも務める俳優・モデルの三吉彩花をはじめ、萩原健太郎(映画監督)、岡村和佳菜(プロデューサー)、MEGUMI(女優・プロデューサー)、しんのすけ(映画感想TikTokクリエイター)という豪華な顔ぶれがズラリ。クリエイターを発掘&育成する本気度が端々からにじみだす映画祭で、過去の受賞者から劇場公開映画の監督が輩出されるなど、若手クリエイターの登竜門としても信頼と認知度を高めている。

今年のグランプリ受賞作、ここが凄かった!

グランプリ受賞の『遊園人』

 審査員陣が「今年の応募作はクオリティーがものすごく高かった」と舌を巻くことからも、「縦型映画」の盛り上がりを見て取れる。その中で第4回のグランプリを受賞したのは、4分14秒の3DCGアニメ『遊園人』 。誰もが歩きスマホをしている世界で巻き起こる出来事を、ユーモアと皮肉を交えて描いた作品で、審査員全員の票を集めてアニメ作品として初めてグランプリの栄光に輝いた。

 プロデューサーとして山田尚子監督のアニメーション映画『きみの色』などを手がけてきた岡村は、「SFやコメディーなどジャンルもバラバラで、応募作品がバラエティーに富んでいる。それは開催を重ねてきたからこそ」と応募作品の傾向から、映画祭が実りの時期に突入していることを感じたという。

 「いろいろなジャンルの作品を観る機会になりました」と目を輝かせた三吉は、役者として活動するフィールドが、映画やテレビだけでなく、配信のプラットフォームサービスへと広がる中、特にここ10年は映像業界における変革を深く実感していると話す。「審査を通して、TikTokで映画を観る面白さを感じました。作品自体は短いもので1分、長いもので10分ほどでしたが、どれもあっという間に感じるくらい没入感があって。スマホで観ることで、より自分の日常に深く入り込んでくるような感覚も覚えました」と「縦型映画」の魅力に気づいたと熱弁。

 『遊園人』には、おじいさんがたい焼きを落とし、歩きスマホをしている人がそれを踏んづけてしまっても気づかない……という展開もある。三吉は「私は友人から“連絡の返信がすごく早くて助かる”とよく言われるんですが、それだけスマホを見ているということですよね(笑)。おじいさんのたい焼きは踏みたくはないな……と、ちょっと反省する部分もありました」と自身の“今”も作品の中に発見した様子だ。岡村も「セリフがない点も特徴で、世界中の方が楽しめる作品。世界中のみんなが『私たち、スマホを見過ぎだよね』と思っているところをスタート地点にして、ファンタジックな要素を詰め込みながら、最後は皮肉で終わるところがまた良い」と続き、「このクリエイターさんにしか表現できない世界観があった。次の作品を観てみたい」とその才能に惚れこんでいる。しんのすけは「ビルの高低差や伸びていく釣り糸など、縦長のものをうまく物語に盛り込んでいる」とうなるなど、起承転結のあるストーリーの中で「縦型映画」ならではの新鮮な表現方法に触れられるのも本映画祭の醍醐味だ。

堂々のグランプリ!4分14秒の3DCGアニメ『遊園人』はコチラ>>

衝撃の連続!まだある激推し作品

準グランプリ受賞の『モブライフ』

 役者たちが躍動し、彼らの名演が光るのが準グランプリの『モブライフ』(6分7秒)。物語の中で“モブキャラクター”としての役割をまっとうしようとする登場人物の生きざまを、モブの“あるある”を加えながらコミカルに表現した学園コメディーだ。「大好き!」と声を弾ませる三吉は、「役者さんの演技が本当に素晴らしくて。伊藤沙莉さんを彷彿とさせる方もいて、すごく良い味を出していた」とにっこり。「世相を反映した作品が多い中で、単純に楽しく笑いながら観られた作品です。観た後にもう一度観たくなるような、ループしたくなる面白さがあった」と興奮気味に語る。手の中に収まる「縦型映画」からスター誕生の瞬間を見届けられると思うと、なんだかドキドキしてくる。

モブキャラの“あるある”描く『モブライフ』はコチラ>>

アニメ・CG賞受賞の『灯台守と迷子の幽霊』

 アニメ・CG賞を受賞した『灯台守と迷子の幽霊』(3分11秒)は、灯台守のうさぎと幽霊の交流をつづるストップモーションアニメ。細長い体でひらひらと飛ぶ幽霊を、「縦型」を利用してかわいらしく表現している。岡村は「ストップモーションアニメって、ものすごく手間がかかるものなんです。本作ではうさぎが話している時に口元までちゃんと動いていて、細やかな作業を丁寧に積み重ねていることがわかります」と妥協しない姿勢に惚れ惚れ。

幽霊がかわいすぎる!『灯台守と迷子の幽霊』はコチラ>>

今年新設された「きみの色」賞を受賞した『僕の春は何色』

 そして今年新設された「きみの色」賞には、手描きアニメ『僕の春は何色』(1分40秒)が選出された。岡村は「粗削りであっても、“画を動かすことが楽しい”“アニメだからこういう演出ができる”というクリエイターの初期衝動が、1分ほどの作品にギュッと詰め込まれていた。もう少し長尺の作品を撮ったらどうなるのだろうという興味も湧きました」と、追いかけたくなるクリエイターと出会えたと吐露。さらに、「グランプリを受賞した『遊園人』は3DCG、アニメ・CG賞の『灯台守と迷子の幽霊』はストップモーション、『僕の春は何色』は手描き。受賞作に3つのアニメーションの手法が揃い、それぞれの世界観を作り上げていた。アニメに携わるものとしても、とてもうれしかった」と明かし、「縦型映画」としてアニメ制作にトライする人が増えていることも大きな喜びだという。

1分40秒の青春!手描きアニメ『僕の春は何色』はコチラ>>

特別賞の『絶滅メシ』

 「予想を上回り続ける展開で驚かされた」(しんのすけ)というのが、特別賞の『絶滅メシ』(8分50秒)。若い兄弟が深夜のスーパーに侵入し、ある目的を実行するさまを捉えたSFで、クライマックスには怪獣も登場するなど、スケール感のあるディストピアものとして完成している。しんのすけは「TikTokで映画を観るとなると、開始数秒で“こういう作品なんだ”と提示してくれることが大事な要素になるんですが、その上で予想を上回る展開がある。最後に出てくる怪獣のCGのクオリティーもすごい」と力を込め、「縦型映画でも“これくらいやったって決してやりすぎではない”“もっとチャレンジしていいんだ”という気合いを感じました」というように、受賞作品から「縦型映画」のレベルアップまでが確認できる。

予想上回る衝撃の展開!特別賞の『絶滅メシ』はコチラ>>

縦型映画が映画の概念を変える

 縦型映画が「映画の概念を変える」カギとなると岡村は言う。「映画って90分や120分ほどの上映時間がないとダメなのではないかと考えがちでしたが、例えば今年大ヒットした『ルックバック』は58分の映画でした。クリエイターとその作品にとって最も良い尺をチョイスする自由が、映画にはあるんだなと感じています。今回の審査を通しても、120分あれば映画になるということでもないんだという発見がありました。尺が短くても、縦型であっても、キャラクターに共感したり、作品の世界観にグッと入り込んでいける映画を作ることができる」と審査を振り返る。

 ふと思い立ってスマホで撮影した動画をきっかけに映画監督になれることだってある。今や縦型映画は、映像業界の未来を担う最も可能性に満ちたフィールドと言っても過言ではない。

「TikTok TOHO Film Festival 2024」公式サイト>>

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