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シネマトゥデイが選ぶ映画ベスト20(2024年版)

 2024年1月1日からの1年間に劇場、そしてストリーミングサービスで日本初公開された全ての映画から、シネマトゥデイ編集部がベスト20作品を決定! ストーリー、キャスト、演技、映像、社会性、エンターテインメント性、観客動員数、話題性などあらゆるポイントを踏まえて議論し、今年を代表する20作品を選び出しました。

第1位『オッペンハイマー』

 原爆の開発を主導したアメリカの物理学者J・ロバート・オッペンハイマーの生涯を、彼の内面の葛藤と共に描いた本作は、演技、演出、脚本、撮影、音響と全てがハイレベル。クリストファー・ノーラン監督は映画のポテンシャルを極限まで引き出して、観客にオッペンハイマーの人生をスリリングに体感させるという荒業を成し遂げた。映画自体のクオリティーもさることながら、核の脅威が高まる昨今においてなおさら響くメッセージ性もあり、今観るべき作品として満場一致の1位選出となった。

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第2位『ルックバック』

 「チェンソーマン」の藤本タツキによる読み切り漫画を映像化したアニメーション映画。監督・脚本・キャラクターデザインを担当した押山清高の驚くべき技術力の高さをはじめ、それによって動き出した藤野と京本という2人のキャラクターが、ダブル主演声優の河合優実吉田美月喜によって息を吹き込まれ、haruka nakamuraによる極上の音楽と相まって、無駄のない完璧な58分を作り上げた。鑑賞後の余韻も半端なく、アニメ表現の新しい可能性を感じさせる。話題性も含め、文句なしの邦画ナンバー1作品となった。

第3位『インサイド・ヘッド2』

 思春期に突入したライリーの物語。新たに芽生えた感情への戸惑いや葛藤といった心の成長が表現され、そこにはどんな自分も受け入れることが大切なのだという温かいメッセージが込められている。自分らしさとは何かというテーマが、子供だけでなく大人の心にも深く刺さったことで、ピクサー史上最大のヒット作となった。興行成績は軒並み好成績を記録し、アニメーション映画で世界興行収入歴代ナンバーワン、日本でも興行収入50億円を突破するなど、今年のトップ3にふさわしい結果を残した。

第4位『あんのこと』

 ある少女の壮絶な人生をつづった新聞記事に着想を得て制作された人間ドラマ。『SR サイタマノラッパー』シリーズなどの入江悠監督がコロナ禍の日本で実際に起きた事件をすくい上げ、若き名優・河合優実が劣悪な環境から抜け出し、生への希望を見いだそうともがく主人公を熱演した。髪も肌も乾いた風貌で、言葉を発さずとも絶望を表現する河合の演技力は圧巻。彼女のリアリティーを後押しする演出やカメラワークも秀でており、さまざまな社会問題を抱える現代に足跡を残す映画として、邦画実写作品トップとなる4位に食い込んだ。

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第5位『ラストマイル』

 ヒットドラマを生み出してきた3人の女性クリエイターが映画で初タッグを組んだ大ヒット作。物流業界を舞台に、その末端の人々に光を当て問題提起する社会派ドラマでありながら、スリリングなストーリーとクセ強キャラクターたちによる見応え十分の群像劇、人気ドラマのシェアード・ユニバース要素に、それに付随する豪華すぎるキャストの大集結で、見事に、映画ならではのスケール感を持つエンタメ作品に昇華させた。単なるヒット作に終わらない、思わず唸るバランスの絶妙さで上位につけた。

第6位『落下の解剖学』

 夫が不審な転落死を遂げたことで起訴されたベストセラー作家の姿を描いた、フランスの法廷サスペンス。視覚障害のある11歳の息子ダニエルを証人として、夫婦の関係を“解剖”するような裁判の行方を追う。スリリングな法廷ものという面白さにとどまらず、夫婦間の犠牲や社会的役割といったリアルで深いテーマに踏み込んだ脚本が際立つ。今年は『関心領域』も話題となり、演技派の名をほしいままにしている主演のドイツ人女優ザンドラ・ヒュラーに加え、スヌープ役を務めた犬のメッシ君の名演も高く評価されて、ベスト10内にランクイン。

第7位『ミッシング』

 石原さとみがタッグを熱望した鬼才・吉田恵輔(吉=つちよし)監督がオリジナル脚本で魅せるヒューマンドラマ。失踪した愛娘を血眼になって探す母親を通して、ネットの誹謗中傷やマスコミの闇など、現代社会にはびこる問題を浮かび上がらせる。終わりの見えない苦難の中に一筋の光を感じさせるラストまで計算されたプロットが秀逸で、的確で無駄のない劇伴がストーリーを引き立てている。石原、青木崇高森優作ら俳優陣の迫真の演技にも心を掴まれ、トップ10入りにふさわしい1作として、この順位に落ち着いた。

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第8位『デューン 砂の惑星PART2』

 名作SF小説を映画化した『DUNE/デューン 砂の惑星』の続編。覇権争いに巻き込まれた主人公ポールが救世主として覚醒し、全宇宙の未来をかけて立ち上がる。前作から引き継がれた洗練された映像美、手に汗握る怒濤のアクション、主役級キャストが織りなすアンサンブル全てがオリジナリティーにあふれた一級品。主演のティモシー・シャラメの抜群のカリスマ性はもちろん、悪役として新加入したオースティン・バトラーの狂演は際だった存在感を見せつけた。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の最高傑作であり、映画館で観るべき作品として究極の没入体験を提供した一本としてトップ10入りを果たした。

第9位『シビル・ウォー アメリカ最後の日』

 分断された近未来のアメリカで起きた内戦をロードムービー形式で追うスリラー。ニューヨークからワシントンD.C.に向かう老若男女4人のジャーナリストたちの旅を通して、分断の現実や“アメリカ人”同士による壮絶な戦闘が描かれる。アメリカ大統領選とのシンクロもあり、架空の設定が“起こるかもしれない未来”として観客に迫る。現代社会を色濃く反映した今年ならではの一本としてランク入り。先輩・後輩関係の戦場カメラマンを演じた、キルステン・ダンストケイリー・スピーニーが生み出すケミストリーも素晴らしい。

第10位『ロボット・ドリームズ』

 セリフはおろかテロップもナレーションもなしにここまで泣かされるなんて……! と“心に残る度”において今年随一と評価された本作。原作はアメリカ人作家・サラ・ヴァロンのグラフィックノベル。1980年代のニューヨークを舞台にした孤独なドッグとロボットの友情の顛末……とストーリー、そして絵はシンプルながら、驚くほど多くの感情を伝える。アース・ウィンド・アンド・ファイアーの名曲「セプテンバー」をはじめ音楽の使い方も効果的。アカデミー賞ノミネートも納得のアニメーションならではの力を感じさせた快作で、今年のベスト10にランクインするのに相応しい。

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第11位『キングダム 大将軍の帰還』

 原泰久の人気漫画を山崎賢人(崎=たつさき)主演で実写化した大ヒット映画シリーズの第4弾。前作『キングダム 運命の炎』(2023)で描かれた総力戦「馬陽の戦い」の続きがダイナミックに描写された。最強の敵・ホウ煖(吉川晃司)や新キャラクター、摎(新木優子)の登場によってドラマは厚みを増し、大将軍・王騎の最期に向き合った大沢たかおの名演が作品の質を押し上げている。上位には届かなかったものの、興行面でシリーズ最大のヒットを叩き出し、今年の邦画界を盛り上げたことが評価につながり11位にランクインした。

第12位『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』

 社会になじめない殺し屋コンビ、ちさと(高石あかり)とまひろ(伊澤沙織)が最強の敵と激突するシリーズ第3弾。敵役に池松壮亮を起用し、アクション・スケール・演技共にシリーズ最高の完成度を達成。1作目から、スタッフ・キャスト共に着実にステップアップを遂げ、“ちさひま”コンビを演じる二人は、方や朝ドラ女優、方や世界的スタントパフォーマーへと成長。そんな二人に呼応するようにシリーズ人気も拡大し、テレビドラマ化まで実現した。名実共に日本を代表するアクションシリーズとなった実績も含めたランク入りとなった。

第13位『哀れなるものたち』

 『女王陛下のお気に入り』のヨルゴス・ランティモス監督がエマ・ストーンと再びタッグを組み、アラスター・グレイのゴシック小説を美しくも奇妙でダークに映画化。胎児の脳に若く成熟した女性の体を持つ主人公ベラは、社会のルールや見えない抑圧、男性たちの支配欲などどこ吹く風だ。世界を知るための旅に出て、貪欲に全てを吸収していくベラ役を務めたエマの大胆で野心的な演技が光る。ひねりの効いた女性のエンパワーメント映画である点、そして美術、衣装、ヘアメイクなど作りこまれた独特な世界観にも評価が集まった。

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第14位『デッドプール&ウルヴァリン』

  破天荒なヒーロー・デッドプールの3作目。ウルヴァリン役引退を表明していたヒュー・ジャックマンを説得し、MCUデビューさせることに成功しただけでも評価に値する。その上、かつて20世紀フォックスで活躍したマーベルヒーローたちの復活と、本人たちによる再演というサプライズにより、エンターテインメント作品としての完成度を押し上げた。興行成績もR指定映画歴代1位と大成功を収めたが、デッドプールらしさの象徴でもある残酷描写や過激なノリが観る人を選ぶことを加味し、14位にとどまった。

第15位『侍タイムスリッパー』

 口コミ効果でたった1館から上映規模を拡大し、週末映画動員ランキングのトップ5入り。今年の流行語大賞にノミネートされるなどブームを巻き起こし、インディーズ映画として大健闘を見せたことで堂々の選出。タイトルの通り、現代にタイムスリップした会津藩士の話。その先がくしくも時代劇撮影所であったことから役者と思い込まれ、その剣豪ぶりであれよあれよと時代劇スターに……という勘違いから巻き起こる痛快なオリジナル脚本に加え、安田淳一監督をはじめとする作り手の時代劇への惜しみない愛が高評価につながった。

第16位『十一人の賊軍』

 戊辰戦争の陰で起きた史実から着想を得たアクション時代劇。リアリティーを追及した暴力描写に定評がある白石和彌監督が、東映時代劇の象徴ともいうべき「集団抗争時代劇」を令和の時代によみがえらせた。十一人の罪人たちが、一筋の希望のために命をかける姿は、まるでヒーロー映画を見ているかのようにすがすがしい。若者にはなじみが薄い本格時代劇ながら、人気俳優たちの本気の殺陣は圧巻で、新たなファン層の獲得につながった。時代劇を次世代へ受け継ぐという、偉業の一端を担った白石監督の功績は大きい。

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第17位『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』

 バレーボールに懸ける高校生たちの熱い青春ドラマを描いた大人気漫画の劇場版。原作屈指の名勝負を映像化したとあって、全世界の累計興行収入は200億円を突破するなど、2024年公開作の中でも群を抜いた特大ヒット作に。ほぼ全編にわたって展開する試合シーンは、細部にまでこだわり抜かれたカメラワークや音など、空間演出のクオリティーの高さに目を見張り、その巧みな構成に、本作のヒットが“単なる人気”ではないことを感じさせる。アニメが豊作という邦画界の特徴をまさに代表する1作であり、ベスト20入りを果たした。

第18位『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』

 「機動戦士ガンダムSEED」放送から22年、制作発表から18年の時を経て完成した劇場版。前作「SEED DESTINY」の続編であるため、シリーズ未見者にはややハードルが高い内容であることも事実だが、ファンに向けた“お祭り映画”としては文句なしの完成度だった。3DCGで進化したモビルスーツ、絶妙なタイミングで流れる当時の音楽、カタルシスに満ちたバトルなど、制作陣の愛をひしひしと感じた。ガンダムシリーズ劇場公開作品歴代1位の興行成績を達成したことも評価に値し、ベスト20入りを果たした。

第19位『エイリアン:ロムルス』

 時系列的にはシリーズ第1作『エイリアン』(1979)と『エイリアン2』(1986)の間だが、過酷な労働環境に置かれた明日なき若者たちが、忍び込んだ宇宙ステーションで恐怖に直面するという設定は実に現代的。『ドント・ブリーズ』のフェデ・アルバレス監督の演出は冴え渡り、閉鎖空間で若者たちを追いつめる“エイリアン”の姿は、あらためて、彼らがおぞましい存在であったことを思い出させる。随所に全シリーズへのリスペクトとオマージュを差し込みながら、1作目の恐怖を見事に復活させた一本として選ばれた。

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第20位『ゴールデンカムイ』

 野田サトルの人気漫画に基づき、“不死身の杉元”の異名をとる元陸軍兵・杉元とアイヌの少女・アシリパ(リは小文字)が、アイヌの埋蔵金を巡り軍人や脱獄囚らと争奪戦を繰り広げる活劇。現時点ではシリーズの序章に過ぎないが、「実写化の成功例」として、今年の邦画界を盛り上げた話題性においても外せないと支持を集めた。到底映像化不可能と思われるクセ者揃いのキャラクターや明治末期の北海道を舞台にした世界観、特殊メイク、時に動物を相手にしたアクション……。原作ファンも大満足の「再現度」の高さを評価する声が多く上がり、ベスト20にランクインした。

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