【ネタバレ解説】『室井慎次』ココが「踊る大捜査線」過去作とリンク!
「踊るプロジェクト」の12年ぶりとなる新作映画『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』。公開から2か月が経過した今も上映が続いており、「踊る大捜査線」シリーズの根強い人気を裏付けるが、多くの人に支持される理由の一つに脈々と繋がれているリンクネタがある。ここでは、『室井慎次』で見られた主な「踊る」シリーズとのリンクを紹介する。(文・早川あゆみ)
※本記事はネタバレを含みます。映画『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』鑑賞後にお読みいただくことをおすすめします。
アイテム/場所のリンク
洋梨
室井慎次(柳葉敏郎)が発見した遺体のそばに置かれていた果物。劇場版2作目『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』での事件で、同じように遺体のそばに置かれており、リストラされた犯人たちからの「洋梨=用無し」のメッセージだと和久平八郎(いかりや長介)が気づいた。室井はタカ(森貴仁/齋藤潤)に「それって当時からすべってた?」と突っ込まれている。
カエル急便(flog express)
市毛商店にある看板などに見られる宅配業者。連ドラ2話の爆弾椅子運搬など多くのトラブルの元凶となるため「不幸を運ぶ宅配便」と呼ばれる。室井の家のあちこちには「flog express」の段ボールがあり、シリーズには社屋や倉庫、自転車便など多くの関連物が登場。
きりたんぽ
ご飯を半づきにした秋田の郷土料理。室井は、連ドラ4話で森下孝治(遠山俊也)と、最終話で青島俊作(織田裕二)と一緒に食べる約束をしていたが、結局それは両方とも果たされなかった模様。室井の特技はきりたんぽ鍋作りだが、実際に作っているシーンは『敗れざる者』ではじめて登場した。
オムライス
日向杏(福本莉子)が室井家でふるまった手料理。杏の母・日向真奈美(小泉今日子)は「ガキが好きなオムライス」で劇場版3作目『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』の事件の犯人・須川圭一(森廉)を懐柔していたが、杏もリク(柳町凜久/前山くうが・こうが)を手懐け、万引きをそそのかしたりしていた。
監視カメラ
事件を機に町中に設置されて住民たちを困惑させていたが、『THE MOVIE 2』でも試験的に監視カメラシステムが運用されている。最初に青島とすみれ(恩田すみれ/深津絵里)が、のちに室井が、湾岸署地下の監視モニター室でモニター画面を見続けた。
カップラーメン
室井が家の掃除をしている際に食べていたカップラーメンは、画では少々わかりづらいが「キムチラーメン」であることがシネマトゥデイの本広克行監督のインタビューで明言されている。これは、連ドラですみれや青島、和久らが食べていたもので、ワサビラーメンなどさまざまに進化してシリーズに登場し続ける。リアルに商品化もされた。
医療用メス
日向真奈美を象徴するアイテムで、杏もカバンに忍ばせていた。真奈美は元看護士で、劇場版1作目『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!』の事件で、遺体の胃の中にクマのぬいぐるみを詰め込んだり、柏木雪乃(水野美紀)を傷つけたりした際にメスを使用していた。
東京大学
タカが赤本で勉強していることから、タカは室井と同じ東北大ではなく、東大から警察に入るキャリアコースを目指しているだろうことがわかる。うまくいけば新城賢太郎(筧利夫)の後輩だ。室井が「長い付き合いだ」と紹介してくれた彼が、かつて室井に「入試で遊ばず、死ぬほど勉強しといてよかった」という強烈な嫌味を言い放った男だということを、タカは知っているのだろうか。
台詞のリンク
「レインボーブリッジを封鎖した事件です」
『THE MOVIE 2』で起きた会社役員連続殺人事件のこと。緒方薫(甲本雅裕)、新城賢太郎、桜章太郎(松下洸平)がそれぞれこう呼称するが、そのたびに室井は「封鎖はできなかったが」と返している。実際は、捜査の初期には手続きが煩雑で出来なかったが、確保の段階では封鎖状態になっていた。
「カメダ」
会社役員連続殺人事件について緒方がつぶやいた言葉。室井の方言での協力で、「蒲田」が訛りによって「カメダ」に聞こえたと判明したことが事件解決につながった。方言は室井を象徴するもので、ふっと気が緩んだときに出るのは昔から。「捜査しでなあ」(捜査したいなあ)、「ほんじなっす」(大馬鹿もの)、「かだっぱりこいで」(意地をはりやがって)、「へっちょまげな」(大きなお世話だ)、「へばなしたっちょ」(だから何だ)などが印象深い。
「若い弁護士に救ってもらった」
室井の言う「若い弁護士」は、映画『容疑者 室井慎次』で室井の容疑を晴らすために尽力した小原久美子(田中麗奈)のこと。タカの母親の事件で暴走気味だった新人弁護士・奈良育美(生駒里奈)を見て、当時新人だった久美子を連想した。
「あの男との約束を果たせなかった」
室井が新城に語ったのは、もちろん青島俊作のこと。青島と室井はかつて、それぞれの立場で正しいことができるようにしようという“約束”を交わしており、それは「踊る」を貫く軸となるものだった。室井は約束を果たさないまま退職したことをずっと悔やみ続けている。ちなみに新城は、その青島と室井の信念と“約束”に感化され、室井に協力するようになった。
「正しいことをしたければ、偉くなれ」
現場のベテラン刑事・和久の言葉として、室井が地元の警官・乃木真守(矢本悠馬)に伝えた言葉。もとは連ドラ7話で青島が和久から言われた言葉だが、和久は過去、別の部下にも同じことを語っているので、彼の信念なのだろう。室井は、連ドラ最終話で青島とともに暴走した際、青島から聞いている。
「恋はした」
なぜ結婚しないのかとリクに問われた室井が、こう返す。室井は大学時代、野口江里子という女性と恋をしたが、不治の病にかかった彼女が自死したことを自らのせいだと思い詰めていた。
「君が撃った女性刑事」
室井が取調べの際に被疑者の国見昇(マギー)に言った言葉で、恩田すみれを指す。彼女はずっとその後遺症で苦しみ、退職を決意していた。室井は、ドラマ「踊る大捜査線 THE LAST TV サラリーマン刑事と最後の難事件」ですみれから退職と後遺症のことを聞いており、気にかけていたのだろう。なお、室井とすみれには縁談話が持ち上がったことがある。
人物のリンク
坂村正之(升毅)
警察庁・長官補佐。『敗れざる者』冒頭で、室井に「組織改革推進委員会」の解散を告げている。連ドラ最終話で査問委員会にかけられた青島と室井に処分をくだしたことに代表されるように、常に警察上層部の代弁者のような立場で室井らの行く手を阻んできた。
明石幸男(瀧川英次)
警視庁捜査資料管理室の次長。技術専門官であり、警察官ではない。ドラマ「警視庁捜査資料管理室」シリーズの主人公で、捜査済み資料をデータベース化するのが業務だったが、勝手に妄想をふくらませて推理していた。『敗れざる者』で、室井に日向杏の情報を伝えている。以前は、青島が警察官になる前に勤めていた(株)シンバシマイクロシステムの社員だった。
沖田仁美(真矢ミキ)
警視庁官房審議官。桜経由で、室井が捜査本部に入れるように部下に指示を出す。『THE MOVIE 2』で初の女性管理官として登場、『容疑者』では室井の免職の危機を救い、『室井慎次』でも新城の「事件捜査における室井モデル草案」の実現に尽力している。
国見昇(マギー)
『THE MOVIE 2』の実行犯の1人で、すみれを撃った張本人。18年の服役を経て出所後、懲りずに特殊詐欺と強盗に手を染めていた。『室井慎次』の遺体遺棄事件の被疑者でもある。真奈美の信者。
『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』は全国公開中
『踊る大捜査線 N.E.W.』2026年全国公開
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