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心に染みる実話…映画『35年目のラブレター』は温かな気持ちに満たされる名作

35年目のラブレター

 過酷な幼少時代を過ごしてきたゆえに、読み書きができないまま大人になってしまった夫と、彼を支え続けた妻による感動の実話を映画化した『35年目のラブレター』。日常の輝きを伝えてくれる本作は、山あり谷ありの人生において、どんな時も見返したくなる愛と優しさにあふれた映画として完成している。笑福亭鶴瓶原田知世重岡大毅上白石萌音ら実力派の役者陣が顔をそろえ、美しく、チャーミングな笑顔&涙をスクリーンに刻み込んだ本作の見どころを、胸に響く名セリフを交えながら紹介する。(文・成田おり枝)

夫婦の絆が生んだ感動の実話…時を超えた夫婦を演じる名優たち

35年目のラブレター

 西畑保さん、皎子(きょうこ)さんという実在する夫婦の“本当にあった話”を映画化した本作。読み書きができない保と、彼を支え続けたしっかり者の皎子。二人は仲良く寄り添うように生きてきた。定年退職を機に、保は「最愛の妻にこれまでの感謝を込めたラブレターを書く」と一大決心。夜間中学に通い、イチから文字を学び始める。保の奮闘は、気付けば5年以上が経過。結婚生活は35年目を迎えていた──。

35年目のラブレター

 保役を務めるのは、国民的スターの笑福亭鶴瓶。保は、貧しい家に生まれてほとんど学校へ通えずに生きづらい日々を過ごしてきたが、持ち前の根性と愛嬌によって寿司職人となり、家族を養ってきた苦労人だ。夜間中学に通い始めてからは年齢や国籍も異なる同級生と分け隔てなく接し、いつの間にかみんなに愛されてしまう主人公は、まさに鶴瓶のハマり役。“鶴瓶スマイル”を炸裂させながら、「妻にラブレターを書きたい」と一文字一文字、ひたむきに学んでいく姿は、応援したくなると共に、目が離せなくなること必至だ。

35年目のラブレター

 妻の皎子役に抜てきされたのが、デビュー以来、第一線で活躍を続ける原田知世。皎子として放つおおらかな優しさは、保だけでなく観客も包み込んでくれるよう。夫の奮闘を見守ってきた皎子はある時、病魔に冒されてしまうのだが、原田がその葛藤までを演じ切っているからこそ、より深いドラマが映画に加えられている。

35年目のラブレター

 そして若かりし頃の保と皎子を瑞々しく演じるのが、重岡大毅と上白石萌音。見た目は似ていないはずの彼らが、しっかりと時を超えた夫婦に見えるのがスゴイ! 鶴瓶と重岡は、吸引力のある笑顔と一途さがリンク。原田と上白石は、春風のような温かさと凛とした力強さが重なり、夫婦の出会い、彼らが築いていく絆と歴史までが、説得力を持って観る者のもとに届けられる。また彼らが、自分たちや隣に住んでいる夫婦の物語に感じられるような“親しみ”を体現していることも、本作が忘れ難い一作となった秘訣だろう。

夫婦の純愛、周囲の優しさ…人生の輝きが詰まった宝箱

35年目のラブレター

 本作には、隅々までお互いへの思いやりが染み渡っている。保は一目惚れのように皎子に恋をし、皎子は働き者で真面目な彼に惹かれていく。読み書きができないことにもがき、誰よりもそのことを悔しく思っていた保は、彼女と離れたくないからこそ、結婚後も自分の秘密を言い出せないでいる。妻が書いてくれたラブレターも読めずに、号泣してしまう保。夫の秘密を知って、「今日から私があなたの手になる」とまっすぐな眼差しで告げる皎子。夫の背中にトントンと触れる妻のぬくもりも愛そのもので、彼らのピュアな想いに目頭が熱くなる。

 そして定年後に保が抱く「字のことで苦労をかけた妻に、字でお返しをしたい」というアイデアは、皎子への感謝と愛情の表れだ。保が一生懸命に机にかじりつく健気な姿は魅力満点。一方、保の一大決心に感動の涙を浮かべつつ、叱咤激励する皎子の表情も慈愛に満ちている。鶴瓶と原田が鮮やかなコンビネーションで夫婦の歩む道のりを表現しており、二人が見つめ合う瞳には愛情の積み重ねがしっかりと映し出されている。「この人のため」とお互いの存在があるからこそ前に進んでいく彼らから、かけがえのない人と出会えた奇跡、人を想うことの尊さを感じられるはすだ。

35年目のラブレター

 また読み書きができない保は、若い頃に職を見つける上でも壁にぶち当たるが、そんな時に「やればできる」と手を差し伸べてくれた寿司屋の大将・逸美(笹野高史)。大変な困難を乗り越えながら妹を育て上げた、皎子の姉・佐和子(江口のりこ)の励ましも、保と皎子を支えていく。そして夜間中学の教師・谷山(安田顕)は「焦らなくていい」と粘り強く、熱心に保に文字を教え、保の娘やその夫たちもその努力を誇らしく見守り続けるなど、周囲に目を向けてみてもあちらこちらから優しさをキャッチできる。自分の周りにもきっと温かみが潜んでいるはずだと気付かせてくれるだけでなく、人生の輝きが詰まった宝石箱のような作品で何度も涙腺を刺激されてしまう。

心に刻みたい数々の名セリフ

35年目のラブレター

 日々を豊かにするような名セリフも、本作の大きな見どころだ。夜明け前の暗いうちから仕事に出かける保を、皎子は「いつも早くからありがとうさん」と送り出す。誰かと会えなくなった時に一番後悔するのは、もっと「ありがとう」と言えばよかったということかもしれない。些細なことでも「ありがとう」と伝え、「いってらっしゃい」「いってきます」と声を掛け合う保と皎子。彼らの日常のさりげない一コマから、普通の毎日が特別でキラキラしたものに見えてくる。

35年目のラブレター

 保が握った寿司を初めて食べた皎子が、「心ってほんまに味に出るんやね」と胸をいっぱいにする場面も印象深い。相手の喜ぶ顔を思い浮かべながら作った料理は、一流シェフでも敵わない格別な美味しさがあるもの。同じように、皎子を想起しながら感謝を込めて書いた文字にも、保にしか出せない味わいがあり、皎子にとってはスペシャルな贈り物となる。「あなたの笑顔が、私の笑顔」というほど、心でつながった二人の関係性を堪能してほしい。

35年目のラブレター

 本作では、保が通う夜間中学の生徒たちの背景も描かれていく。引きこもりの経験がある少女や、故郷の家族のために働いている青年など、それぞれに事情がありながら「勉強をしたい」という彼らの熱意にも心を揺さぶられる。保が「何歳からでも何かをやろうとしたら必ずできる」と話すように、夜間中学の学生たちの前向きな姿勢には、いくつになっても新しいことにチャレンジできるのだと勇気をもらえるだろう。

 そして皎子が保に語りかける「辛いこともちょっとのことで幸せ」というセリフには、本作の魅力がギュッと詰まっている。劇中では雪が二人の生活を彩る場面もあるが、冷たい雪も大切な人と眺めれば温かく、美しいものに見えるから不思議だ。保と皎子が雪の舞い散る中ではしゃぐシーンは、映像美といった意味でも深い余韻を残すなど、『今日も嫌がらせ弁当』などで知られる塚本連平監督の手腕も冴えわたっている。過去と現在という時間軸を絶妙に配置した展開もお見事だが、いつでもユーモアを忘れない演出がとりわけ最高だ。“辛い”ことがあったとしても、誰かを想い、笑い声を響かせることができたら、“幸せ”に変えていけるはずだと希望が見えてくる。

映画『35年目のラブレター』は3月7日より全国公開
公式サイトはこちら

映画『35年目のラブレター』予告編

(C) 2025「35年目のラブレター」製作委員会

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