村上春樹原作・NHKドラマ「地震のあとで」キャスト・あらすじ【一覧】
1995年に発生した阪神淡路大震災の後、村上春樹が著した4つの短編を連続ドラマ化する「地震のあとで」(4月5日よりNHK総合で毎週土曜夜10時~・全4話)。各話で描かれるのは「人間社会を襲う圧倒的な暴力とその影響」であり、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件、東日本大震災、コロナ禍、そして現在へと続いていく負の連鎖。ドラマでは原作の舞台を1995年だけでなく、2025年にいたる設定に置き換え、地震のあとの30年の時間が描かれる。映画『ドライブ・マイ・カー』の大江崇允が脚本、ドラマ「その街のこども」「あまちゃん」で震災を描いてきた井上剛が演出を務める。
#1「UFO が釧路に降りる」
1995年、東京。阪神淡路大震災のニュース映像を見続けていた未名は、突然家を出ていく。夫の小村は、妻の行方も分からないまま、後輩に依頼された「届け物」をするため釧路へ赴く。妻はなぜ出ていき、どこに行ってしまったのか? 小村は、釧路で出会った女性たちに奇妙な旅へと導かれていく。
小村(演:岡田将生)
1995年。震災のニュースを見続けていた妻が突然いなくなり、茫然自失の中、後輩から箱を託され釧路へ旅に出る。
コメント
「村上春樹さんの原作は2度目になります。原作、脚本を読み込みましたが、未だに自分自身の思考が彷徨っている感覚があります。撮影が終わったにも拘わらずです。 現場では監督と幾度となく会話を重ねながら臨んでいましたが、こうだと言い切れる何かを見つける為に日々撮影していた時が鮮明に残ってます。 答えのないものほど面白いものはありません。 この物語の終わりはないかもしれません。揺れない男が揺れ始めるその瞬間を逃さず観て頂けたら幸いです」

小村未名(演:橋本愛)
震災の報道番組を見続けていたが、ある日小村に書き置きを残して家から姿を消す。

シマオ(演:唐田えりか)
小村が釧路で出会う不思議な雰囲気の女性。小村を不可解な言葉で誘っていく。

ケイコ(演:北香那)
小村に箱を預けた後輩の妹。

神栖(演:吹越満)
姪である未名の代理として小村に会いに来る男。

佐々木(演:泉澤祐希)
小村に奇妙な箱を預ける会社の後輩。

#2「アイロンのある風景」
2011年、茨城。家出して海辺の町に暮らす順子は、流木を集め焚き火をするのが趣味の画家、三宅と出会う。順子は、自分と同じくこの町に流れ着いた三宅に惹かれ、いつしか焚き火を共にするようになる。3月11日の明け方、焚き火の大きな炎を前に、神戸にいた三宅の過去が明かされていく。
順子(演:鳴海唯)
2011年。家出した先の鹿島灘に住み着き、そこで出会った彼氏と半同棲中。焚き火をする男と共に海辺の夜を過ごす。
コメント
「兵庫県で生まれた私にとって、震災は切っても切り離せない出来事で、学校で学び、被災した親族から話を聞いて育ちました。そんな背景もあり、この作品にはいつも以上にご縁を感じています。名もなき人の声に耳を傾け、順子というあの時確かに存在していた、1 人の少女の孤独と向き合い続けた数日間でした。劇中では主に焚き火のシーンがあり、実際に海辺で撮影した焚き火の火は全て本物の火なので、作品の空気感をリアルに感じていただけると思います。皆様にお届けできる日をとても楽しみにしています!」

啓介(演:黒崎煌代)
順子の半同棲中の彼氏。大学生であり、サーフィンとギターが趣味。実家は和菓子屋。

三宅(演:堤真一)
阪神淡路大震災が起こる前まで神戸に住んでいた男。冷蔵庫を嫌い、順子の働くコンビニに毎日買い物にやってくる。職業は不明だが風貌から画家だと推察される。
コメント
「僕は西宮出身なのですが、阪神・淡路大震災の当時は東京にいて、遠くから被災する故郷を眺めるという経験をしています。幸い実家は大きな被害はなかったのですが、亡くなられた人、また大切な人を失ってしまった方々のことを考えると、家族ができた今だからか、以前よりも一層、とてつもないことだっただろう、と怖さを感じています。僕は実際に焚き火が大好きなんですが、今回、被災し家族を失ってしまった心の傷を抱えつつ、それでも少しでも前に進みたいという気持ちを焚き火の炎に託して演じました」

#3「神の子どもたちはみな踊る」
善也は、熱心な宗教団体の中で、母親から「神の子ども」と言われ育ったが、2011年、東日本大震災を機に信仰をすてた。9年後の2020年、善也は、地下鉄の中で、耳の欠けた男を見つける。それは父親かもしれない男の特徴だった。自分の父親とは誰なのか?はたして神とは?善也は男を追いかけていく。
善也(演:渡辺大知)
2020年。母と母を導く男に“神の子ども”として育てられた宗教二世。少年時代に棄教。大人となり実の父と思しき男を地下鉄の中で見つけ、その後を追いかけていく。
コメント
「ちょうど物心ついた頃に阪神淡路の震災を経験し、神戸の復興の中で育ちました。それから現在まで、たくさんの地震による被害を耳にしてきました。そういうニュースを見るたび、恐ろしいくらい自分に近いことのようにも感じ、それと同時にどこか非現実的でとてつもなく遠い世界にも感じてきました。「共感」するということは、簡単なようでとても難しいことなんじゃないかと思うんです。でもこの作品と出会って、「共感」かどうかわかりませんが、ひとはどこかで生まれながらに感じ取り合おうとしているんじゃないかと思えました。実際に「共感」できるかできないかは問題ではなく、誰かの想いを「感じたい」と思うかどうか、それが大切なのかもしれません。原作は20年以上前に書かれたものですが、いままさに映像化される意義のある作品になっていると思います。ぜひご覧ください!」

田端(演:渋川清彦)
善也に神の教えを説いてきた宗教家。善也にとっては育ての父と言える。

少年期の善也(演:黒川想矢)
“神の子ども”だと言われて育つが、やがて反発していく。

ミトミ(演:木竜麻生)
善也の会社の同僚。善也に好意を寄せている。

善也の母(演:井川遥)
神の子どもである善也の母。新興宗教の信者であり、今では指導者的な立場にいる。少年だった善也に神の子どもである所以を語り、善也を動揺させた。その善也の揺らぎは、今もなお続いている。
コメント
「地下鉄サリン事件が起きたとき私は学生で電車通学でした。東日本大震災が発生した時、わが子はまだ1歳で毎日飛び交う情報に惑わされ、自分を見失いそうになっていました。身近な人たち、大切な人、当たり前だと思っていた日常が、一瞬で崩れ去ってしまうことを私達は知ってしまった。人はいくつもの後悔の積み重ねで生きていて、トラウマや呪縛、整理のつかない感情を抱えている。私の演じた母親も信じることで自分を生かしているのではないかと思いました」

#4「続・かえるくん、東京を救う」
2025年、東京。銀行を定年退職し漫画喫茶で暮らす片桐の元へ、突然巨大な“かえる”の姿をした「かえるくん」が現れ、間もなく地震が起こるという。「かえるくん」は30年前にも片桐と共に戦い、東京を地震から救ったと言うが、片桐にはまったく身に覚えがない。再び、2人の戦いが始まる。
片桐(演:佐藤浩市)
2025年。かつて“かえるくん”と共に東京を救ったはずだが、その記憶はなくなり、毎日をゴミ拾いと駐車場の誘導員として過ごす。だが再び“かえるくん”が現れ、“みみずくん”の暴走を止めるべく地下深くへ降りることになる。
コメント
「難しさと楽しさ、相反する二つがひとつのシーンで同時に自分の中に湧き上がってくる不思議な作品でした。それは観る側の皆さんにも充分感じて頂けると思います。ある意味、理解は誤解の総体!」

山賀(演:津田寛治)
片桐の同僚警備員。“かえるくん”の姿は見えず、片桐のことを奇妙に思っている。

謎の男(演:錦戸亮)
片桐の前に現れる介護士然とした謎の男。関西弁を話し、片桐をある部屋へと誘っていく。そこで片桐は「ぼくのことを本当に覚えていないんですか?」と男に詰め寄られ、世界とのつながりを見失っていく。

かえるくん(声:のん)
30年前に片桐の前に現れた巨大な蛙の姿をしたかえるくん。かつてみみずくんが怒り地震を起こそうとしたが、かえるくんは片桐を頼り東京を壊滅から救った。そして今、かえるくんは再び片桐の元へ現れた。
コメント
「阪神淡路大震災が起こった日私は兵庫県にいましたが、その時は一歳で当時の記憶というのは残っていません。ですが、様々な災害が起こる日本でこの作品が誕生すること、井上監督のこの作品に声の演技で参加できることに、使命感を抱きました。村上春樹さんの原作をリスペクトしながら 2025年に置き換えた「続、かえるくん」画面を通して佐藤浩市さんと演技を交わしているような気分になれて特別な時間でした。何か観念的なもの、意識の奥に疑問やテーマを投げかけるような作品です。たくさんの人に、様々な感じ方をしていただけたらと思います」

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