【完全ネタバレ】映画『ウィキッド』徹底解説 『オズの魔法使』&舞台版&原作小説イースターエッグまとめ

名作小説「オズの魔法使い」の前日譚ミュージカルを映画化した2部作の前編『ウィキッド ふたりの魔女』。同作には、映画版『オズの魔法使』やミュージカル、原作小説のオマージュがたっぷり散りばめられている。
※ご注意:本記事はネタバレを含みます。『ウィキッド ふたりの魔女』をまだ観ていない方はご注意ください。
「オズの魔法使い」「ウィキッド」の歴史

映画『ウィキッド ふたりの魔女』のイースターエッグの元が複数あるのは、本作が生まれるまでの歴史を振り返るとよくわかる。
1900年:ライマン・フランク・ボームが小説「オズの魔法使い」刊行
1939年:同名小説を原作とする映画『オズの魔法使』公開
1995年:小説と映画の両方を下敷きにしたグレゴリー・マグワイアの小説「ウィキッド:誰も知らない、もう一つの物語」刊行
2003年;その小説を原作にしたミュージカル「ウィキッド」初演
2025年:その舞台を原作にした映画『ウィキッド ふたりの魔女』公開
こうして生まれた映画だから、本編には、原作舞台だけでなく、その原点となった名作映画『オズの魔法使』やその原作小説「オズの魔法使い」(1990)のオマージュがたっぷり盛り込まれているのだ。
名作映画『オズの魔法使』へのオマージュ

本作の直接の原作はミュージカルだが、なにしろ本作は映画。なので、映画『オズの魔法使』へのオマージュがふんだんに散りばめられている。
懐かしきユニバーサル・ピクチャーズのロゴ
冒頭に登場するユニバーサル・ピクチャーズのロゴは、『オズの魔法使』が公開された1939年当時のもの。『オズの魔法使』はMGM製作なのでロゴは違うが、原点となった名作映画へのオマージュだろう。
映画タイトルと「続く」の書体
映画冒頭のタイトル文字と、映画のラストの「To Be Continued…(続く)」の文字の書体は、『オズの魔法使』のタイトル文字の書体と同じ。
冒頭に『オズの魔法使』の4人の姿
冒頭、カメラがオズの国に接近していくシーンに、『オズの魔法使』の主要登場人物たち(ドロシー&愛犬トト、カカシ、ブリキ男、ライオン)が黄色い道を歩いていく後姿が見える。このシーンは日本版本予告にもチラッと登場する。
チューリップの花畑がレインボー色
マンチキンの国が映し出されると、そこにあるチューリップの花畑は、花の色が虹の色と同じ配列で並んでいる。これは『オズの魔法使』の主題歌「虹の彼方に」へのオマージュだ。
マンチキンたちの歌
マンチキンの国で住民たちが悪い魔女の死を祝って演奏する歌「鐘を鳴らせ!悪い魔女は死んだ(Ding Dong, the Witch is Dead!)」は『オズの魔法使』でも同じ時に歌われた歌だ。

グリンダのピンクのドレス
冒頭で“善い魔女”グリンダ(アリアナ・グランデ)が登場する時のピンクのドレスは、『オズの魔法使』のグリンダのドレスを意識したもの。ちなみに、舞台版のこのシーンのグリンダのドレスはブルーなので、色の違いが舞台ファンの注目を浴びた。
エルファバが「ザ・ウィザード・アンド・アイ」を歌うときの背景
後の“西の悪い魔女”エルファバ(シンシア・エリヴォ)が「ザ・ウィザード・アンド・アイ」を歌いながら野原を走り、空中に飛び上がる時、その背景に虹と鳥の群が飛ぶのが見えるのは、『オズの魔法使』の「虹の彼方に」の歌詞「Somewhere over the rainbow, bluebirds fly」を踏まえたものだろう。
エルファバの指の影
エルファバがマダム・モリブル(ミシェル・ヨー)から魔法を学ぶ時、魔術書の上に彼女の指の影が落ちる場面があるが、この影の形は『オズの魔法使』の西の悪い魔女の指そその影の形にそっくり。
グリンダの赤い靴
グリンダが「ポピュラー」を歌いながら、自宅から持ってきた衣装の荷物を開いていく時に出てくる、赤く輝くルビー色の靴は『オズの魔法使』のドロシーの靴にそっくり。『オズの魔法使』では、この靴のカカトを3回鳴らすと故郷に戻れるが、本作のグリンダはこの歌を歌いながら靴のカカトを3回くっつけて鳴らす。
ちなみに、ライマン・フランク・ボームの原作小説では、ドロシーの靴は銀色。この映画でエルファバの妹ネッサローズ(マリッサ・ボーディ)が父親からもらう靴が銀色なのは、原作を意識したもの。
自転車に乗るエルファバ
エルファバは、ライオンの子供を助けようとするときに、後部にカゴのついた自転車に乗って行く。これは『オズの魔法使』でドロシーの近所に住む大地主のミス・ガルチ(悪い魔女役のマーガレット・ハミルトンの2役)が、ドロシーの愛犬トトを処分しようとした時、カゴのついた自転車に乗っていたのにそっくり。

オズの魔法使いはカーテンに隠れている
オズの魔法使い(ジェフ・ゴールドブラム)が登場する時、カーテンの後から登場するのは、『オズの魔法使』で魔法使いがカーテンの後に隠れていて、カーテンが開いてドロシーたちに正体を見つけられたことを踏まえたものだろう。
新しいレンガの道の色
オズの魔法使いが、エルファバとグリンダに、未来のエメラルドシティのジオラマを見せて、新しいレンガの道は何色がいいかと尋ねると、グリンダが「黄色」と答える。これは『オズの魔法使』でオズの都に続く道が黄色いレンガであることを踏まえている。
何度も登場する熱気球
子供時代にエルファバが読む絵本の中で、オズの魔法使いが熱気球に乗ってオズにやってきたことが描かれる。また、エルファバの元にオズの魔法使いの招待状を運んでくるのも熱気球。映画のラスト付近、エルファバとグリンダは逃亡しようとして熱気球に乗り込む。このように気球が何度も登場するのは、『オズの魔法使』で魔法使いが熱気球でこの国に来たことや、彼とドロシーが熱気球に乗って故郷に帰ろうとしたことを踏まえたものとみられる。
名作小説へのオマージュ

シス大学につながる水路
エルファバたちが行くシス大学には、水路を使って船で行くが、オズに水路があるという設定はボームの原作小説にあるもの。本作のジョン・M・チュウ監督は、原作からこの要素を取り入れたとプロダクションノートにて語っている。
魔法使いのホログラムが「オマハ」と唱える
オズの魔法使いのホログラムは呪文のように「オマハ…オマハ…」と唱えるが、これは魔法使い(実は元奇術師)の出身地が、原作では米ネブラスカ州オマハなことを踏まえている。
魔法使いの名前は原作と同じ
映画のオズの魔法使いの倉庫には、魔法使いが奇術師だった頃の、奇術師オスカー・ディグス(Oscar Diggs)を告知するポスターや、この名前が書かれたトランクがあるが、この名前は原作と同じ。
ミュージカルへのオマージュ

ブロードウェイ版エルファバ&グリンダ
本作には、ブロードウェイ版舞台の初代エルファバ役イディナ・メンゼルと、初代グリンダ役クリスティン・チェノウェスがカメオ出演している。2人は、エルファバとグリンダがエメラルドシティに着いたときに見る、この街の歴史を語る劇中劇に登場する。
作曲家スティーヴン・シュワルツ
ミュージカル版と今回の映画の音楽を作曲したスティーヴン・シュワルツは、大きなヒゲをつけて、オズの魔法使いの城の門番役でカメオ登場。エルファバたちに「魔法使いがお会いになる」と告げて2人を通す。
脚本家ウィニー・ホルツマン
ミュージカル版の脚本家で、今回の映画の脚本と製作総指揮に参加したウィニー・ホルツマンもカメオ出演。エルファバたちがエメラルドシティに着き、「ワン・ショート・デイ」を披露するシーンで街の住民の一人に扮し、一瞬、カメラに向かって「He can read it! He must be a Wizard!」と歌う。
ウエストエンド版エルファバ&グリンダ
英国ウエストエンドで上演されたミュージカル舞台でエルファバを演じたアリス・ファーンもカメオ出演。この映画で、グリンダの母親を演じている。また、ウエストエンド版のグリンダ役ダイアン・ピルキントンは、エルファバたちがエメラルドシティで「ワン・ショート・デイ」を披露するシーンに、街の住民役でカメオ登場している。
『ウィキッド ふたりの魔法使い』はそれだけ見ても充分楽しいが、オーマジュがいっぱいの名作映画『オズの魔法使』を観てからもう一度観ると、さらに映画が面白くなりそうだ。(文・平沢薫)
前編『ウィキッド ふたりの魔女』は全国公開中
後編『ウィキッド:フォー・グッド(原題) / Wicked: For Good』は11月21日全米公開
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