パルム・ドール候補なのに家に帰る兄弟監督
第58回カンヌ国際映画祭
仏時間19日、コンペティション部門に出品されているベルギー映画『ザ・チャイルド』(原題)のリュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ監督がインタビューに応じた。
同作品は18歳と20歳で子供を産んでしまったカップルが主人公。しかし父親ブルーノ(ジェレミー・レニエ)は定職を持たず、窃盗を繰り返していたが、ついに自分の息子を売買してしまう。『ロゼッタ』(99)や『息子のまなざし』(02)に続き、現在の若者たちが抱えている問題を題材にしている。
「物語のアイデアが生まれたのは、『息子のまなざし』撮影中に見た若い女性が、とても赤ちゃんが中に入っていると思えないくらい乱暴に乳母車を押しながら街をはいかいしている光景を見た時。ベルギーの若者の失業率は20%ぐらい。就職先がないんだ」(リュック)「でも自分たちがなぜ現代の子供たちに興味を抱くのか、説明するのは難しい。ただ、こうした事件や問題が、どう世代から世代へ伝わっていくのかに関心があるね」(ジャン=ピエール)
手持ちカメラで主人公を追った前作とは異なり、今回はカメラは据え置きと撮影法が変わった。
「今回は主人公2人が生きる空間を描きたいと思ったんだ」(リュック)「それに僕たちももう歳だし(笑)。これからはカメラは据え置きで撮るつもりだよ」(ジャン=ピエール)
映画祭会場で毎日配布される「スクリーン」誌に掲載されている各国評論家による星取では、19日現在でミハエル・ハネケ監督『ヒドゥン』(原題)に続く高評価を得ている。
『ロゼッタ』に続くパルム・ドールが期待されるが、「僕たちは明日、ベルギーの自宅へ帰る。(授賞式参加への)電話がかかってきたら戻ってくるけど」(リュック)「カンヌというのは、例え最終日に電話がかかってこなかった監督の作品でも、その作品がちゃんとキャリアを積んで世界へ出ていく。それがカンヌなんだ」(ジャン=ピエール)