2,000本の中から選ばれた11本!カンヌのショート・フィルムに日本の映画評論家監督作
第62回カンヌ国際映画祭
第62回カンヌ国際映画祭で行われていたショート・フィルム・コーナーが、映画祭本体より一足早い現地時間22日に閉幕した。
同映画祭ではメーンのコンペティションなどさまざまな部門があるが、ショートはいわば短篇映画の見本市。とはいえ、コンペ部門もあれば、ワークショップに交流会、テレビ局などバイヤーとの商談窓口など充実した内容とシステムがある。会期中は、35分以内などの規定内で製作し、95ユーロ(約12,500円)のエントリー料を支払って応募された作品の中から約2,000本が上映される。映画人にとっては、一番近いカンヌへの道と言えそうだ。
日本からは今年、本年度アカデミー賞短篇アニメーション賞を受賞した、加藤久仁生監督『つみきのいえ』を含む11本が選ばれた。また、英国在住で映画ジャーナリスト&通訳の今井孝子さんが共同で監督を務めた『リコルダーレ-デイズ・オブ・リメンブランス』も選出された。今井さんはカンヌ歴17年のベテランだが、出品者として参加するのは初めて。今井さんは「2,000本もある中から、まず見てもらうだけでもこんなに大変だとは思わなかった」と苦笑いする。
今井さんは今回が、初監督&初プロデュースとなる。自宅近所のコーヒーショップ店員から「映画を作りたい」と持ちかけられ、サポートすることに。しかし、企画に変更が生じ、彼が演出困難となったことから、成り行き上、今井さんが監督、脚本、プロデューサーと八面六臂の活躍をすることになったという。
映画は、愛した人を喪失し、行き場のない悲しみに暮れる青年の心を、ダンスで表現する15分の愛の物語。サウスロンドンを拠点として活動している少年合唱団「リベラ」の美しい音楽に乗って、著名ダンサーのアラン・ヴィンセントとギャヴィン・イーデンが舞う、ポエティックな作品に仕上がっている。「リベラ」の楽曲が使用出来たのは、今井さんが長年、彼らの通訳を担当しているため、版権を持つEMIが協力してくれたのだという。
「当初の構想より出演者や音楽などどんどん豪華になってしまい、せっかくならと、35mmフィルムで撮ったら、2,500ポンド(約37万2500円)かかってしまいました。映画製作は趣味なので、もちろん自腹です」と今井さん。 しかし、すっかり製作の魅力にハマってしまい、同作品のトリロジー(三部作)の製作にすでに入っているという。今井さんは「このショート・コーナーにはインディペンデントの精神があると思う。音楽の著作権などの権利関係だけしっかりしていれば、誰にもチャンスがあると思います」とカンヌを目指す人たちに向けてアドバイスをくれた。(取材・文:中山治美)