金獅子賞のコッポラ、元カレで審査員長のタランティーノとガッツリ抱擁!
第67回ヴェネチア国際映画祭
第67回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門の受賞者、及び審査委員長を務めたクエンティン・タランティーノ監督の記者会見が現地時間11日に行われた。タランティーノ監督の元カノ、ソフィア・コッポラ監督『サムウェア』(原題)の金獅子賞受賞や、1作品に対して賞は1つという映画祭のルールを無視した選考、そしてコッポラ監督、特別獅子賞のモンテ・ヘルマン、男優賞ヴィンセント・ギャロ、新人俳優賞ミラ・クニスと4人の米国人に賞を与えて地元イタリア映画は無冠という結果に、タランティーノ監督が会見場に姿を見せるや記者からブーイングが飛んだ。対するタランティーノ監督も自慰行為をする仕草をしながら「お前たちにブーイングだ」と言い返して挑発。審査委員長の大人気ない態度に思わず笑いが起こったが、会見は受賞結果の説明を求める質問が次々とタランティーノ監督に投げかけられた。
まず、記者から「コッポラをはじめ、友人たちを選考するのは困難ではなかったか?」と問われたタランティーノ監督は「いや、難しくなかったね。ソフィアへの授与は、審査員全員一致だったんだ。彼女の作品は、最初のスクリーニングから日増しに僕たちの心を、感情を、魅了していったんだよ」と説明。今回、特例の特別獅子賞を与えたヘルマン監督についても、彼はタランティーノ監督のデビュー作『レザボア・ドッグス』をサンダンス国際映画祭で発掘した恩人として知られるが「ヘルマン監督からは多くのことを学ばせてもらった。だから彼のこれまでの全仕事に対して讃えたいと思ったんだ」と力説した。
その一方で友人の三池崇史監督『十三人の刺客』は無冠だったことについて「審査員全員本当に気に入っていたんだよ。もう一つ賞があったらあげられたんだけどね」と、申し訳なさそうな表情を浮かべた。また、スペインのアレックス・デ・ラ・イグレシア監督の『ア・サッド・トランペット・バラード』に銀獅子賞(監督賞)と脚本賞を、ポーランドのイエジー・スコリモフスキ監督『エッシェンシャル・キリング』に審査員特別賞と男優賞と、映画祭のルールを変更してまで1作品に2つの賞を与えたことについてはタランティーノ監督は「そんなバカげたルールに従ってちゃ審査員の仕事はできないと、(映画祭ディレクターの)マルコ・ミュラーにも変更を合意してもらったんだ。だって、映画はベストじゃないのに、その女優に女優賞をあげることができるか!? そんなルールいらない」とまくし立てた。
そして最後に、会見場にコッポラ監督が金獅子の像を片手に姿を見せると立ち上がって拍手し、しっかり抱き合って受賞を讃える一幕もあった。ほかの審査員との協議の上とはいえ、受賞結果は全体的にタランティーノ色の濃いものとなった。
ちなみに現地入りしているにもかかわらず徹底的に公の場に姿を見せることを拒否していたヴィンセント・ギャロは、授賞式会場に来ていたが最後まで登壇することはなかった。代わりにスコリモフスキ監督が男優賞のトロフィーを受け取ったが、「(審査員特別賞と)2つも賞をとるなんて予想していなかったな。言うまでもなく、一つ貰えることを期待していたんだが(苦笑)」と、金獅子賞を受賞できなかった無念さを、ちゃめっ気たっぷりに表現した。これで、2年前に『レスラー』が金獅子賞を受賞して見事な復活劇を遂げたミッキー・ローク同様に、『ブラウン・バニー』以降は低迷していたギャロにも明るい光が見えてきそうだ。(取材・文:中山治美)