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アカデミー賞外国語映画賞エントリー作のスペイン映画はスペインがアメリカを征服する?

第83回アカデミー賞

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左は監督イシアル・ボリャン、右は脚本家ポール・ラヴァーティ
左は監督イシアル・ボリャン、右は脚本家ポール・ラヴァーティ

 メキシコ出身のガエル・ガルシア・ベルナルが主演するスペイン代表のアカデミー賞外国語映画賞エントリー作品『イーヴン・ザ・レイン / Even the Rain』(原題)について監督のイシアル・ボリャンと、脚本家のポール・ラヴァーティが語った。

ガエル・ガルシア・ベルナル出演映画『ルドandクルシ』場面写真

 同作は、映画監督のセバスチャン(ガエル・ガルシア・ベルナル)が、スペインのアメリカ征服に関する映画を製作するためにボリビアで撮影を開始するが、ちょうどその時期にコチャバンバの水戦争が勃発してしまい、映画が思わぬ方向に進展していくというドラマ作品。イシアル・ボリャンは2004年にメガホンを取った映画『テイク・マイ・アイズ / Take My Eyes』(原題)でスペインのアカデミー賞と言われるゴヤ賞で最優秀作品賞を含めた7部門で賞を獲得、一方ポールは、ケン・ローチ監督作品の常連脚本家で、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した映画『麦の穂をゆらす風』を執筆している。

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 近年、俳優だけでなく監督もこなしているガエル・ガルシア・ベルナルのキャスティングの意図は「この映画の撮影前に、ちょうどガエルも新作を監督をしたばかりで、その感覚がわかっていたから、彼にとってはこの撮影はやりやすかったと思うわ。もともと、彼だけでなく国際的なキャスティングをしようと思っていたの。実際にスペインに征服される原住民役のボリビア人たちの配役は、1か月くらいかけてキャスティングして、その原住民たちの代表的な存在であるダニエルを演じたホアン・カルロス・アドゥヴィリは、現地で大工の仕事をしていた人物だったくらい、いろいろ現地の人たちをキャスティングしたわ。今回ガエルは、その原住民とのやり取りで、不安で繊細になっている状態と、強い意志で製作を続けようとするしっかり者でもある、両極端の難しい役を演じてくれたの」と語った。ちなみにイシアル監督は、スペインでは知名度のある女優として活動していて、女優業と並行しながら監督業もこなしている。

 映画内では、スペインの征服のさいに奴隷化された原住民と、その後500年近くも経っているが、奴隷のような安い賃金で働かされているボリビア人が映し出されている。ポールは「わたしは、2000年にこのボリビアで起きた水紛争を見たが、それはまるで500年前にスペインに征服された原住民を見ているようだった。彼らボリビア人は石や棒を使って軍隊と戦っていたんだよ。しかも彼らは、500年前のように金や奴隷を理由に争っているわけではなく、我々が生きるための基本となる水のために争っていたんだ。あれは、あくまで商業取引を目的にした大開発で、お金儲けをしようとしていただけだ! だから、そこに反対する民衆がでてきたんだ!」と真剣な眼差しで語った。この事件は、国際通貨基金(IMF)と世界銀行の民営化の指針に従い、コチャバンバ市の水道公社SEMAPAが民営化され、民間会社であるロンドン国際水供給会社(IWL)が上下水道事業の40年間の契約を受注していた。だが、そのIWLの親会社である米ベクテル社が水道料を200%も引き上げたため、この地域に住む貧困世帯の所得の20~30%となってしまい、それに抵抗した民衆が紛争を起こした事件である。

 この映画は非常に興味深い角度から、実際に起きた事件を見つめている良質の作品に仕上がっている。二人は私生活でもパートナーで、二人の間には3人の子どもが居るそうだ。同作は、果たしてオスカーにノミネートされるだろうか?

 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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