役所&小栗の『キツツキと雨』はグランプリ候補だった!経緯を審査委員長が明かす!
第24回東京国際映画祭
10月30日まで東京・六本木ヒルズをメイン会場に都内の各劇場などで開催されていた第24回東京国際映画祭が閉幕した。六本木ヒルズ・アカデミーヒルズ49のスカイスタジオで、審査委員たちが総評を行ったほか、審査員特別賞を受賞した映画『キツツキと雨』の沖田修一監督など、受賞者たちが報道陣からの質問に答えた。
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邦画唯一のコンペティション部門出品作品となった『キツツキと雨』の沖田監督は、役所広司や小栗旬との仕事を振り返り、「やりやすい俳優さんでした。特に二人とも脚本を気に入ってくれていたので、一緒に相談しながら撮影を進めることができました」とコメント。そして、いつもオドオドしていて、自分に自信が持てない25歳の映画監督の役を小栗が演じていることについて、「自分の経験?」と質問されたが、「確かに自分の経験は反映されていますけど、設定として25歳の映画監督というのはあまりないかなと思って、それを面白がって作品を作ったという感じです」と本作を作ったきっかけを明かした。本映画祭では、邦画唯一のコンペ作品となる本作だったが、その重圧から解放されたのか、会見ではリラックスした表情の沖田監督だった。
今回の審査結果についてエドワード・R・プレスマン審査委員長は、「今回の選択については、満足している。審査委員みんなが大変熱い意見を持っていて、忌憚(きたん)のない意見交換をした」と振り返った。また今年は、マイケル・ウィンターボトム監督の映画『トリシュナ』、セドリック・カーン監督の『より良き人生』、トニー・ケイ監督の『デタッチメント』と、世界的に有名な監督たちの力作がコンペに選ばれていた。そんな中で、黒人少年たちが暴力ではなく、精神的に追い詰める「カツアゲ」行為を白人少年たちに向かって行う姿を描いた『プレイ』のリューベン・オストルンドが最優秀監督賞に選ばれた。人間が抱く恐怖や偏見をえぐり出した作品について、プレスマン審査委員長は「確かに『トリシュナ』『より良き人生』『デタッチメント』などは賞に見合うものであった。しかし審査委員全員が気に入ったのは『プレイ』だったんだ」と明かす。
最終的にグランプリ候補は、『プレイ』『キツツキと雨』『最強のふたり』の3本に絞られたという。「『キツツキと雨』はグランプリにするには軽すぎないかという意見があり、『プレイ』は逆にダークすぎないかという意見になりました。相対的に考えて『最強のふたり』がグランプリにふさわしいとなった」とその経緯を明かす。本年度「東京 サクラ グランプリ」を受賞したフランス映画『最強のふたり』は、車いす生活を送ることを余儀なくされた大富豪と彼の介護人であるアフリカ系青年の交流をユーモアたっぷりに描いた感動作。審査委員のキース・カサンダーは「あの作品は編集がうまかったし、音楽もすばらしかった。コメディーは作るのは難しく技術がいるが、わたしは冒頭から笑いっぱなしだった。二人の俳優もすばらしかった」と称賛。
カサンダーが「今年のコンペは粒ぞろいだった」と振り返る通り、突出した作品がなかった代わりに、平均的な水準が高かった今年の東京国際映画祭コンペティション部門。来年はどのような作品が映画ファンを楽しませてくれるのか、今から楽しみだ。(取材・文:壬生智裕)