実写版『るろ剣』を生み出すのは監督と俳優陣のきずな!好き勝手なことを言う俳優たちに監督も苦笑?
先日クランクアップを迎えた実写映画『るろうに剣心』の撮影現場取材が8月に行われ、佐藤健をはじめとする俳優陣がその魅力を明かした。長回しを多用する演出で知られる大友啓史監督とは「龍馬伝」で組んだことのある俳優が多い一方で、武井咲は本作が初タッグ。大友組ならではの魅力と難しさを語っている。
クランクインして一月がたとうかという8月27日に京都・太秦撮影所で行われた撮影には、剣心役の佐藤をはじめ、神谷薫役の武井、高荷恵役の蒼井優、相楽左之助役の青木崇高、明神弥彦役の田中偉登が参加。この日は原因不明の病に倒れた人々が運び込まれた神谷道場で、剣心たちがその治療に奔走するシーンの撮影。スタジオ内に組み立てられたとはいえ、道場には庭や縁側、井戸などがあり、まるで今すぐにでもそこに住むことができそうだ。美術スタッフが知っている家をモデルに、原作を参照しつつ、200年ほど前のものを想定して作られたということで、その広大なスペースを生かしての撮影には主演の佐藤も「ものすごくぜいたくな撮影の方法で、すごく幸せです。まだ始まったばかりで手探りなところもあるんですが、観たことのない作品ができるのではないかという手応えを感じています」と自信のほどをうかがわせている。
だが、真夏の京都の暑さはよく知られるところであり、この日、最高気温は30度を超えた。音の関係でカメラが回っている間は空調も切られるため、30人程度のエキストラを含めた役者陣はワンカットごとに汗だく。撮影環境としては決して恵まれているとはいえないが、蒼井は「でも、人をマイナス思考にはさせないんですよね」とそれを補って余りある魅力がこの撮影現場にはあることを明かしていた。
この日参加した俳優陣の中で、佐藤、蒼井、青木は「龍馬伝」で、長回しを多用する大友監督の演出は経験済み。それだけに撮影中も大友監督から細かい指示をされることはないといい、佐藤は「この場で、役として生きてくださいとそれだけです。だから細かい指示とかもないですし、『自由にやっていいよ』と言われています。それってとても信頼されているということだと思うんですよね」と監督の期待を感じている様子。だが、青木いわく、その演出方法は「好きに動かせてもらってはいるんですけど、でも、それは自分が役についてどう思っているかを試されている気になります」ということで、一度経験しているからといって楽になる、というよりは、むしろ一度経験しているからこそ監督のハードルも高くなっているようだと語っていた。
一方で、初めて監督とタッグを組む武井は「現場に入ってまず思ったのは、すごく長いこと芝居するんですよ。どこでカットかかるのかとか、どこから芝居を始めたらいいのかとかを一切気にしないで」と戸惑いを隠せなかったようだが、「すごく新しい世界に飛び込んだなあっていう感じがありました」と手応えを感じている様子。俳優陣は口をそろえて、「とても疲れる撮影方法」と大友監督との撮影を評しつつも、武井の「(同じシーンを何度も撮っているうちに)感情がどんどん入っていくし、役になじんでいく瞬間がある。こういうやり方だからこそ得るものがあるっていうのをわたしは現場で実感しました」という言葉が表すとおり、この方法でしか表現することのできない何かをそれぞれ感じ取っているようだった。
俳優陣の言葉を時に苦笑しながら聞いていた大友監督は、独特と評される自身の演出手法について、「撮影現場って、段取りもあるし、普通は手続きだらけになるんですよ。そういう、手続きと決まりごとだらけになるっていうのが性に合わないんですね。わかりやすくいうと、撮影現場でどうやって自由になるかってことばかり考えているんですよ」とその意図を説明すると、「だからスタッフにも役者にもとにかく自由になってほしい。勝手にやってくれないかなあ、そして出来上がっていないかなあ、映画がっていう(笑)みんな、わがままを言って、って感じですね」とコメント。
それを受けて、主演の佐藤が俳優陣を代表する形で「役者からいうと、僕たちが自由に面白いパフォーマンスをしないと成り立たないのが大友組で、そのことは全員が理解してやっていると思うんです」と答えると、大友監督も思わず笑顔に。「長回しばかりなので、出来上がった映画のことを想像できないんですけど」と語った佐藤だったが、「ものすごいエネルギーのある映画ができることは間違いないと思うので、楽しみにしていてください」と大友監督の手腕に絶対の信頼を寄せるなど、監督と俳優陣は確かな信頼感で結ばれているようだった。(編集部・福田麗)
映画『るろうに剣心』は2012年8月25日より全国公開