オスカー有力候補!?NY映画批評家協会賞受賞で話題騒然の『ゼロ・ダーク・サーティ』
第85回アカデミー賞
映画『ハート・ロッカー』のキャスリン・ビグロー監督の最新作『ゼロ・ダーク・サーティ』が、映画賞レースの皮切りとなるニューヨーク映画批評家協会賞で監督賞と作品賞をダブル受賞し、「アカデミー賞最有力候補の出現か!?」と話題騒然となっている。ビグロー監督は、『ハート・ロッカー』でも、アカデミー賞で作品賞を含む6冠を果たしている。
最新作のタイトルとなっている「ゼロ・ダーク・サーティ」というのは、米国における軍用語で「午前0時からの30分間」を指す言葉だ。この映画は、911同時多発テロの主犯とされるウサマ・ビンラディンの追跡、捜索、そしてその殺害に至るまでの経過と裏側を描いた軍事サスペンス作品である。ビグロー監督は製作にあたり、『ハート・ロッカー』でも製作、脚本に携わったマーク・ボールと共に綿密なリサーチを行い、内部関係者たちの協力を得てオリジナル脚本を完成させた。
ビグロー監督のリサーチは、そのころ佳境を迎えていたアメリカ大統領選挙にも波紋を投じた。反オバマ派にあたる一部の共和党員たちが「オバマ政権は軍の機密情報をハリウッドごときに漏らしている」と糾弾し始めたのである。結局、調査の結果オバマ陣営はなんら間違ったことをしていないという判断が下されたものの、ビグロー監督が映画製作にあたってかなり突っ込んだリサーチを行っていたことがうかがえる。
また、ビグロー監督がEW.comに語ったところによると、映画の構想を練り始めた当初は、ビンラディンを捕獲できず失敗に終わった作戦として悪名高い「トラボラの戦い」と呼ばれる一件が話の中心になる予定だったらしいが、撮影開始直前になってビンラディン殺害の速報が飛び込んできたため、映画の内容を白紙に戻して、一からストーリーを練り直したという。
ヒュー・ジャックマン主演の『レ・ミゼラブル』やスティーヴン・スピルバーグ監督作品『リンカーン』、そしてホアキン・フェニックス主演の話題作『ザ・マスター』などに比べると決して目立った存在ではなかった『ゼロ・ダーク・サーティ』。取りあえず、『リンカーン』はニューヨーク映画批評家協会賞で歓待された形になったが、『レ・ミゼラブル』と『ザ・マスター』が冷遇されたという事実はシビアで、この2作品は12月9日に発表が行われるロサンゼルス映画批評家協会賞で巻き返しを図らないとアカデミー賞へ向けてのネガティブな影響が避け難くなってくるだろう。(文・ロス取材:明美・トスト/Akemi Tosto)
映画『ゼロ・ダーク・サーティ』は2013年2月15日より全国公開