映画版『レ・ミゼラブル』に舞台にはないオリジナルシーンあり!監督のこだわりとは?
21日に公開された映画『レ・ミゼラブル』で、舞台版にはないトム・フーパー監督オリジナルのシーンに迫った。
本作は、フランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーの小説を基にした27年以上上演され続けている人気ミュージカルを映画化した作品。映画化にあたっては、ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイ、アマンダ・セイフライド、ヘレナ・ボナム=カーター、サシャ・バロン・コーエンと豪華キャストが配され、アカデミー賞で4冠を果たした映画『英国王のスピーチ』のトム・フーパーが監督に抜てきされた。
革命に揺れるフランスで、数奇な運命に翻弄(ほんろう)された人々の人生を描き出していく本作。自らの悲哀を独白で歌い上げていく登場人物たちの姿は、観客が自由に視点を変えて楽しむことができる舞台では、物語の世界に入り込ませるのに効果的だが、それをそのまま観客の視点がある程度限定される映画でやると、同じような映像の連続に、観客の心が離れていってしまう。
そこでフーパー監督は、歌唱シーンで観客の心を引き付けるために、映画版ならではのオリジナルの演出をいくつか加えている。アン演じるファンテーヌのシーンでは、貧乏ゆえに売春婦に身を落とす彼女が、髪を切り落とすシーンのほか、歯を抜くシーンを追加。原作の小説にもあるこのシーンを追加することで、ファンテーヌが身を削る姿を観客に印象付け、この後、ファンテーヌが歌う「夢やぶれて」の絶望感をさらに盛り上げた。
また、フーパー監督は、物語に登場する若い男女マリウスとコゼット、そしてエポニーヌの三角関係にも着目。コゼットがマリウスにしたためた手紙を、マリウスにひそかな思いを寄せるエポニーヌに託すことで、三人の恋模様をわかりやすく表現。これにより、その後ほかのキャストらと共に歌う「ワン・デイ・モア」でそれぞれが違う意味を込めて願う「もう一日あれば……」の思いを、より叙情的に観客に伝えた。
このほかにも舞台版のスタッフが手掛けた映画オリジナルの楽曲「サドゥンリー」が加えられるなど、細部にまでこだわり、制作された映画版『レ・ミゼラブル』。映画化に懸けたスタッフ、キャストの思いは、舞台のイメージを壊されたくないという生粋の舞台版ファンの心にも届くことだろう。(編集部・島村幸恵)
映画『レ・ミゼラブル』は全国公開中