アカデミー賞デッドヒート!全米で話題「ダビデとゴリアテ」の戦いって?
第85回アカデミー賞
アカデミー賞レースが後半に入った今、全米では「ダビデとゴリアテ」という比喩が頻繁に用いられるようになってきた。映画『アルゴ』と『リンカーン』のデッドヒートが加熱中の賞レース。これが、2作品を表すキーワードになっているのだ。
「ダビデ」と「ゴリアテ」というのは、旧約聖書「サムエル記」に出てくる羊飼いの少年ダビデと、敵の巨人兵士ゴリアテのこと。この二者には、巨大なゴリアテに、少年ダビデが果敢に立ち向かい、石ころ一つで優勢を得て結局は巨人を倒したというストーリーがある。キリスト教国でこの故事は、「弱小なものが巨大なものを打ち負かす」「番狂わせ」といった意味で用いられている。
そして、これがまさに第85回アカデミー賞レースを言い表す言葉となった。アカデミー賞予想サイトの代表として知られるGoldDerbyでも、前半戦は余裕でトップを走っていた映画界の“巨人”スティーヴン・スピルバーグ監督の『リンカーン』。だが、ベン・アフレック監督(=羊飼いの少年!?)の『アルゴ』がいきなり巻き返しに出て、ゴールデン・グローブ賞、全米監督組合賞(DGA賞)、全米映画俳優組合賞(SAG賞)で根こそぎ最高賞を受賞。レースの情勢は、ここ数週間で完全に逆転してしまった。
GoldDerbyで、映画評論家やライターからなるアカデミー賞予想エキスパートは25人。その中で、『リンカーン』が作品賞を取ると予想しているのは、現在ではたったの2人(2月12日時点)。これは、『リンカーン』チームにとってもかなりのショックだろう。
映画ファンから絶大な人気を誇るスピルバーグ監督は、なぜかアカデミーとは縁薄い関係にあり、ノミネーションは多かれど、実際に彼がオスカー像を手にしたのは、映画『シンドラーのリスト』の作品賞と監督賞、そして『プライベート・ライアン』の監督賞の3回のみ。ひょっとすると最終的には、逆転の逆転で、“ゴリアテ”・スピルバーグに勝利の女神がほほ笑む可能性も十分残されている。(文・ロス取材:明美・トスト / Akemi Tosto)
「第85回アカデミー賞授賞式」は2月25日(月)午前9時よりWOWOWプライムにて生中継(夜9時よりリピート放送)