阪神淡路大震災、そして東日本大震災…震災ドキュメンタリー映画はパズルの1ピースにすぎない
東日本大震災から丸2年を迎えた11日、開催中の第8回大阪アジアン映画祭で「メモリアル3.11」と題し、3本の震災関連映画の上映とトークセッション「東北・関西、復興を映画する」が行われた。
登壇者は、この日上映されたドキュメンタリー『3月11日を生きて~石巻・門脇小・人びと・ことば~』の青池憲司監督、同『希望の樹~大槌アート 日台共同プロジェクト』を製作した被災地市民交流会のメンバーでカトリック鷹取教会(神戸市)神父の神田裕氏、NHKドラマ『それからの海』の高橋陽一郎監督ら。
特に青池監督と神田氏の縁は深い。青池監督は阪神淡路の際、全14部からなるドキュメンタリー『記憶のための連作 野田北部・鷹取の人びと』を製作したが、取材をした一人が神田氏だった。その神田氏は被災体験を生かして、1999年の台湾・921大地震では現地ボランティアへ。それが今回の、岩手・大槌町で行われた灰色の街を壁画で彩る日台共同プロジェクトに繋がったという。そのドキュメンタリー『希望の樹』の監督は、青池監督の息子・雄太氏が務めている。
神田氏は「東日本では阪神淡路の経験からボランティアの仕組みができているなと思ったが、阪神淡路はゼロからの出発。取捨選択の余地はなくすべてを受け入れる状態だったが、出会いが被災地の栄養素となった。青池監督との出会いもそう。出会いは生き物で、それが成長している」と震災は決して悲劇だけを残したわけではないことを強調した。
また神田氏は阪神淡路の際、数多くの取材を受け「中には傷ついた報道もあった」と明かす。しかし東北で、被害者の悩みなどを聴く傾聴ボランティアの存在を目にし、自分にとっては取材で話すことが心の復興に繋がっていたのではないか?と考えるようになったという。神田氏は「自分にとって映画が傾聴ボランティアだったと思う。自分がしんどい時にカメラは寄り添ってくれていたんだなと、震災をテーマにした映画を観ると改めて思いますね」と映画出演の思わぬ効用を語った。
阪神淡路の時代からデジタルカメラが普及し、今回の東日本大震災では災害を記録すべく数多くの作品が生まれている。ただし青池監督は「震災関連映画を観てつくづく思うのは、自分のも含め、個々の作品はパズルの1ピースにすぎない。そう思わないと今回の震災の全体はなかなかつかめないと思う」と自分を戒めながら、観客に熱く語りかけていた。(取材・文:中山治美)
第8回大阪アジアン映画祭は17日まで開催