『紙の月』映画版ラストは宮沢りえ次第だった!?
第27回東京国際映画祭
開催中の第27回東京国際映画祭のコンペティション部門に日本映画で唯一選出されている宮沢りえ主演作『紙の月』が29日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、吉田大八監督が上映後に観客の質問に答えた。原作・角田光代の同名小説とのストーリー比較や、映画オリジナルのキャラクターを生み出した意図など、鋭い質問がいくつも飛び交った。
『桐島、部活やめるってよ』でその年の映画賞を総なめにした吉田監督の新作『紙の月』は、銀行で働く平凡な主婦・梅澤梨花(宮沢)が、大学生(池松壮亮)との不倫を続けるために引き起こす巨額横領事件が題材。「原作と比べて梨花が力強く描かれているように感じたが、その理由は?」という質問に、「もともとの発想に主人公の梨花を後悔させない、悩ませない、言い訳させないというのがあり、大金を手にし、それを使うときに自分が違う人間になったように感じる楽しさを、疾走感をもって描く。それがこの作品で僕が一番観たいものでした」と映像化に際してのイメージの原点を明かした吉田監督。
原作には登場しない銀行の同僚・相川恵子(大島優子)と隅より子(小林聡美)を創作した理由については「原作は回想を中心に展開するのですが、映画では現実の銀行で事件が進み、梨花の行動に理由やきっかけを与える人物が欲しかった。梨花にプレッシャーをかける隅さんと、梨花の無意識の代弁をする相川さんによって、梨花の物語に切迫感とスピード感が出ると思った」と話し、「梨花がお金を盗んだように、監督も同じ経験をしたことは?」という質問には「小さい頃、駄菓子屋のお菓子がどうしても欲しくて、母親の財布から抜き取ったことはある」と笑いながら答えていた。
最後には「実は、撮影が始まった段階でもエンディングをどうするか決めていなくて。宮沢さんがどういう梨花になっていくか見極めてから決めたいという、贅沢というか無責任というか、そんな撮り方を試したかった」と裏話を披露した吉田監督だった。最高賞の「東京グランプリ」は31日のクロージングセレモニーで発表される。(取材・岸田智)
映画『紙の月』は11月15日より全国公開