82歳マイケル・ケイン、もはや演じられるのは老人か死人のみ「だから老人を選ぶ」
第68回カンヌ国際映画祭
現地時間20日、第68回カンヌ国際映画祭でコンペティション部門に出品されている映画『ユース(原題) / Youth』の公式会見が行われ、マイケル・ケイン、ハーヴェイ・カイテル、レイチェル・ワイズ、ポール・ダノ、ジェーン・フォンダら豪華キャストとイタリアのパオロ・ソレンティーノ監督が出席した。マイケルのカンヌ映画祭参加は、『アルフィー』(1966)以来実に49年ぶりとなる。
久しぶりのカンヌに「(約)50年前、『アルフィー』でカンヌに来た。作品は賞を獲ったが、わたしは受賞できなかった。だから戻らなかったんだ。何ももらえないのにここまで来ないよ」と切り出して笑いと喝采を受けたマイケル。「でも今回はこの映画がとても気に入っていて、賞が獲れなかったとしても関係ないと思った。パオロは世界で最も偉大な監督の一人で、先だってこの映画を観たのだが、全ての出演者が素晴らしかったからね」と作品の出来に満足していた。
本作は、アルプスのふもとのホテルを訪れた、引退した指揮者のフレッド(マイケル)と現役の映画監督ミック(ハーヴェイ)という80歳を間近に控えた二人の男性の姿を描いたドラマ。自分たちに残された時間はあまりないと知る二人は未来に向き合おうとするが、周囲の人々は過ぎていく時間を気にすることもなく……。
現役の俳優として老人を演じられることは喜びかとの質問に、「いいや。老人以外で演じられる役柄は死人だけだから。だからわたしは老人を選ぶよ。その方がいい考えだから」と答えて会場を爆笑させたマイケル。かつては『アルフィー』や『探偵<スルース>』をはじめ、色男を演じてきたマイケルだけに「一度脚本をもらって、役が小さすぎるとプロデューサーに言ったことがあったのを覚えている」とのこと。「そうしたらそのプロデューサーは『恋人を演じてほしいわけじゃない。父親を演じてほしいんだ』と言ったんだ。そのとき悟ったよ。わたしはもう女の子の相手をできないのだと。でも役はある。それ以降アカデミー賞も獲ったし、まあオッケーだよ」とキャリアの転換点を振り返った。
本作のポスターは、大きく写し出された若い裸の女性を、マイケルとハーヴェイが右奥で何とも言えぬ表情で見ているというものだ。マイケルは「あの女性こそ“若さ(Youth)”そのものだ。わたしたちは、われわれが失い、二度と手にすることができないものを眺めているんだ。とても悲しいポスターだよ。涙が出る」と語り、またもや会場を沸かせていた。(編集部・市川遥)
第68回カンヌ国際映画祭は24日まで開催