鈴木亮平、大野智に驚きの連続「本心を見せない」
「のぼうの城」「村上海賊の娘」などで人気の作家、和田竜の同名小説を実写映画化した『忍びの国』(7月1日公開)で嵐・大野智と共演した鈴木亮平が、想像を超える過酷なアクションシーンの撮影を振り返った。鈴木は、無敵の織田軍が初めて伊賀の国に兵を挙げた「天正伊賀の乱」の行方を左右する伊賀忍者で、伊賀最強と言われる無門(大野)に匹敵する強者・下山平兵衛を演じている。
人の命を軽く扱う忍びの生き方に疑念を覚えた平兵衛は、ゆえに最強の忍び同士、無門と一騎打ちを交える。その“川”の闘いは、地面に描いた川の字の中で戦う極度の接近戦だ。鈴木は「このシーンのために、撮影の約2か月前からアクション稽古を始め、さらにジムにも通って体力を上げるトレーニングを積みました。それなのに本番では体がギリギリでした」と苦笑い。
終盤のそのシーンは10分に満たないにも関わらず、何と約3日をかけて撮ったというから、いかに重要かつ一筋縄ではいかない場面なのかがわかる。「衣装も段々と破けていくことも考慮し、ほぼ順撮りで進めて来て、僕はこのシーンでクランクアップを迎えました。本気で体がボロッボロだったため、もはや演技ではなく、本当に死闘の果てという風情は出せました(笑)。立っているのがやっとの状態でした」と漏らす。
鈴木と言えば『HK/変態仮面』(2013)では15キロ増量、テレビドラマ「天皇の料理番」(2015)では20キロ減量、『俺物語!!』(2015)では30キロ増量するなど、変幻自在にルックスを変えてアクションからシリアスなドラマまで、徹底した役作りで臨むことで知られる。そんな鈴木が「“川”の撮影は、役者人生で1、2を争う過酷さだった」と認める。「亮平君、映画って大変なんだね……」と大野が思わず漏らしたつぶやきに、「いやこれが特別だよ!」と返したと笑う。
しかも完璧な殺陣が決まると逆にNGを出されたそうで、中村義洋監督のこだわりの強さを肌で感じたと語る。「稽古で学んだ通りに出来て、僕と大野君が“よし、完璧だ!”と思うと、予定調和感が出すぎるのか監督がNGを出す。そこで今度はちょっとタイミングをずらし、どちらかがより突っ込み、それに対して相手が本気で対応しようとするという具合になると、ようやくOKが出る」というから難しい。
だが接近戦において、“より突っ込む”ことがどんなに難しいのか、鈴木は身をもって知った。「手を伸ばせば届いてしまう狭い空間で、小競り合いを続けるのですが、本物の竹光を使っていた昔と違い、今はゴム製のものがあるので、危険はないと思われている。でも、当たれば当然怪我をする。実は同じ日に二度、大野君の体に当ててしまい、本当にヒヤッとしました。ひたすら謝り倒しました……」と恐々振り返った。
今回、ガッツリ組んだ大野智について聞くと、「まんま無門でした!」とのこと。その心は、「常にひょうひょうとしていて本心を見せない。例えば僕が本気で『ハーハー』となっている横で、大野君は『疲れた』と言いながら、全く息が上がっていないんです。“無門だな!”と(笑)」と普段はノーテンキだが、いざというときには伊賀最強の忍びに変身する無門に大野を重ねる。
さらに、「ツアー中でアクションの練習にも来られなかったのに、僕が3日かかって一生懸命に覚えたものをたった一日で出来てしまうし。あのポワンとした雰囲気に騙されるところでした(笑)。努力を見せないけれど絶対に“忍んで”相当、やっているはずです!」と“大野君はスゴイ男”と手放しで讃えた。監督いわく“剛(鈴木)と柔(大野)”というタイプの違う役者同士、男同士のガチのぶつかり合いも、存分に楽しめる作品となっている。(取材・文:折田千鶴子)