仲代達矢、黒澤監督からの猛プレッシャー明かす「階段でこけたら4億円の損だよ」
第28回東京国際映画祭
巨匠・黒澤明監督作品『乱』の4Kデジタル復元版が25日、第28回東京国際映画祭の日本映画クラシックス作品として都内・新宿ピカデリーで上映され、出演者の仲代達矢と原田美枝子、衣装を手掛けたデザイナーのワダ・エミ、プロダクションマネージャーの野上照代、助監督を務めたヴィットリオ・ダッレ・オーレが登壇。時おりユーモアを交えながら、撮影当時の思い出を熱く語った。
仲代達矢、『乱』撮影時に黒澤監督から猛プレッシャー! 画像ギャラリー
第1回東京国際映画祭の記念すべきオープニング作品である黒澤監督晩年の傑作『乱』が、公開30周年を記念してフル4Kで復元。米国アカデミー賞に輝いたワダ・エミ入魂の衣裳と、CGを一切使わない迫力の騎馬合戦が鮮やかな映像でスクリーンに甦る。
主演を務めた仲代は、「当時、黒澤さんは『神が俯瞰から見て“人間ってダメだなぁ”という映画を作った』とおっしゃっていた。これは親子の話ですが、人間が欲望を持つ限り、今もどこかで戦争が行われている。黒澤組に何度も参加しましたが、この作品は黒澤映画で最大の悲劇を描いている」としみじみ。
撮影自体は苦労の連続だったという仲代は、「(老いた)戦国武将役だったのですが、当時49歳だったため、シワのメイクアップが必要だった。毎日4時間かけて作り上げるんですが、ある日、ちょうど仕上がったときに急に黒澤さんがやって来て『今日は二日酔いだからやめ』とか言うんですよ。そのときはもうシワをバーッとはぎ取りましたよ!」と吐露。
過酷を極めたのは、燃え盛る城から呆然とした表情で仲代が階段を降りて来るシーン。「黒澤さんから『キミの役は気が狂っているので、下見ないで階段を降りてくれ』と言われ、『大丈夫です』と答えたら、『この城を作るのに4億円かかっているから、こけないでね』って。なんとか1発本番でやり切りましたけど、心の中で『4億円、4億円』とつぶやいていた」と裏話を明かした。
一方、本作で初めて黒澤組に参加した原田は、「ちょうど女優として落ち込んでいた時期にチャンスを頂いたんですが、毎日が命懸け。監督がとにかく恐くて、毎日怒られる夢を見ていたほど」と述懐。原田同様、黒澤組初参加のワダも、「この作品を観るたびに、さまざまな苦労を思い出してしまうのですが、今日初めて映画の世界に入り込むことができました」と感慨深げに語った。(取材:坂田正樹)
第28回東京国際映画祭は10月31日まで六本木ヒルズ、新宿バルト9、新宿ピカデリー、TOHOシネマズ新宿ほかにて開催