抗争を止めようと性行為のストライキに入る女性たち
第66回ベルリン国際映画祭
現地時間16日、第66回ベルリン国際映画祭アウト・オブ・コンペティション部門に出品されている映画『シーラク(原題) / Chi-Raq』のスパイク・リー監督、出演のニック・キャノン、ジョン・キューザックが会見を行った。
本作は、ストリートギャングの銃を使った抗争を止めようとセックス・ストライキに入る女性たちの物語。ラッパーでもあるニックのラップミュージックが多用され、貞操帯をつけた女性たちのダンスもあり、コメディータッチで銃の問題を考えさせる。
「Chi-Raq」というタイトルは「シカゴのラッパーが、シカゴ(Chicago)とイラク(Iraq)を掛け合わせた言葉」と説明するリー監督に、シカゴに住むジョンも「シカゴでは今週は17人が撃たれたそうだ。ほとんど戦場だよ」と付け加える。リー監督は「ジョンもニックも素晴らしい人で優れた俳優だ。この二人だけでなくこの映画に関わった全ての人が、シカゴが戦場のような状況であることを広く知らせるという映画の目的に貢献してくれた」と謝意を表した。
ニックはストリートギャングのリーダー的存在シーラクを演じ、ジョンは地元の人々を助ける神父役。そのほか、サミュエル・L・ジャクソンやウェズリー・スナイプスなども出演している。リー監督は「ジョンのキャラクターは、マイケル・プレーガーという実在のモデルがいるのだけど、神父プレーガーと映画『波止場』(1954)でカール・マルデンが演じた神父を組み合わせたキャラクターになっている」と解説した。
本作で銃社会シカゴおよびアメリカについて問題提起したリー監督は、人種差別的な映画業界に対しても行動中だ。アカデミー賞において過去2年、有色人種が俳優部門に1人もノミネートされていないことに対し、リー監督は同賞の授賞式のボイコットを表明し、論議を巻き起こしている。
それについてリー監督は「アカデミー賞が問題なのではない。問題は“ゲートキーパー”だ。スタジオ(ハリウッド大手映画製作会社)やテレビで“何を作るか決める人たち”だ。ほぼ白人男性が占めている。それが映画にも反映されている」と業界上層部の偏りを指摘した。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)
第66回ベルリン国際映画祭は2月21日まで開催