浅野忠信、日本人と思ってなかった子供時代 潜在的に海外意識
俳優の浅野忠信が3日、Apple 銀座で行われた黒沢清監督最新作『ダゲレオタイプの女』公開記念トークショーに黒沢監督と共に出席した。これまでハリウッドをはじめ、さまざまな国の映画に出演している浅野は「僕はクォーター(祖父がアメリカ人)で、小さいころは金髪に近い髪色だったので、自分が日本人という意識があまりなかったんです。なので、俳優という仕事は抜きに、アメリカのおじいちゃんに会ってみたいという思いはありましたね」と小さいころから、潜在的に海外が意識の中にあったことを明かした。
『マイティ・ソー』や『バトルシップ』『47RONIN』など海外作品に積極的に出演している浅野は「撮影自体はどこの国でも一緒だと思いますが、ハリウッドなどは取り組み方が厳しいですね。大作になってくるとビジネス的にもプロデューサーの要求はすごいんです。もちろんそれに対するこちらの準備にもしっかり答えてくれるので、緊張感があるし、いろいろ勉強になります」とハリウッド事情を説明。
一方、オールフランスロケの『ダゲレオタイプの女』で初の海外進出を果たした黒沢監督は「映画を撮るという行為について、フランスでもびっくりするぐらい日本と変わらなかった。現地のスタッフも僕の意思を実現しようと気合に満ち溢れた現場だった」と映画という共通言語は世界共通であることを語ったが「フランス人の俳優からは、台本や作品に対して『山ほど疑問がある』と言って100近く質問をされ絶望的な気分になった。でもそれがフランス人のやる気を示す方法らしいんです。日本とは逆ですね」と日仏の気質の違いに言及。
それを聞いた浅野は「日本だと、何か意見しようとすると怒られちゃうことってありますよね。僕も以前、オファーを受けた作品で、いろいろと疑問があったので、いっぱいぶつけてみたら断られちゃいました」と黒沢監督の話に同調。その後も、原作がある作品とない作品の取り組み方の違いや、浅野の最新作映画『淵に立つ』(10月8日公開)の撮影エピソードなど、「世界を舞台に活躍する表現者になろう」というテーマで国際派の二人は大いに語り合った。
『ダゲレオタイプの女』は、世界最古の写真撮影方法「ダゲレオタイプ」に心奪われ、娘を拘束し写真を撮り続ける父親と、娘を救おうとする弟子に巻き起こる悲劇を描いた物語。黒沢監督は「初の海外進出作品とか気取ったフランス映画みたいなイメージがありますが、この作品は娯楽ホラーです。先入観を抜きにハラハラドキドキしてください」とアピールしていた。(磯部正和)
『ダゲレオタイプの女』は10月15日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国公開