ハリポタ新シリーズ、エディ・レッドメインの杖は生傷だらけ!造形美術監督が小道具を解説
映画『ハリー・ポッター』の新シリーズ『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』で造形美術監督を務めたピエール・ボハナが来日し、主人公が愛用する魔法のトランクや杖をはじめ、実際に撮影で使われた小道具12点を持参してデザインに込めた思いを熱く語った。
本作は、ホグワーツ魔法学校の指定教科書「幻の動物とその生息地」の著者である魔法動物学者ニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)の活躍を描くファンタジー。1926年、ニュートはニューヨークへとやって来るが、彼が大切にする魔法のトランクから魔法動物たちが逃げ出してしまい、街は大パニックに。仲間になった魔法使いのティナ(キャサリン・ウォーターストン)、クイニー(アリソン・スドル)らと共に追跡を開始する。
『ハリー・ポッター』全シリーズはもとより、『ダークナイト』『ゼロ・グラビティ』『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』などハリウッド超大作の小道具を数多く手掛けてきたボハナ。朗らかな笑顔を浮かべ「本作は1920年代ニューヨークが舞台ということで、セットも含め、当時流行していたアールデコ調を意識したデザインが多くなっているよ」と声を弾ませる。
本作は『ハリー・ポッター』シリーズの原作者であるJ・K・ローリングの脚本家デビュー作でもあり、その物語の着想に大いに共感したというボハナは「当時のアメリカは大恐慌前の黄金時代。特にニューヨークは荒々しい熱気に満ちていて、そこに浮世離れしたイギリス人ニュートがやって来る。この対比が実に面白く、映像をとてもイメージしやすかった」と振り返る。ちなみにニュートはうっかり者で人見知り、物に対して無頓着で扱いも雑。それを象徴するアイテムが、物語の鍵を握る“魔法のトランク”だ。
「エディにもデザイン会議に参加してもらい、ものぐさでカタチにこだわらないニュートのキャラクターから、当時、出回っていた何の変哲もない既製品のトランクで行こうということになったんだ。ただ、サイズに関しては、エディがトランクの中に入り込むシーンがあるので、使い勝手も加味しながら、彼の体にフィットするようかなりこだわった」と述懐。クローズアップ用、ゴム製のアクション用、中の色を塗り替えたものなど、シーンに合わせて計17個制作したそうだが、「いずれも歪みや傷など、隅々まで同じテイストにしなければならなかった。技術的にはそこが一番苦労した点だね」と苦笑いした。
また、もう一つの重要アイテム“魔法の杖”に関しても、「魔法動物を愛するニュートの杖は、動物の骨は一切使用していない。持ち手は貝殻、先端はトネリコの木。ただ、彼の扱いが雑だからシャフトの部分は生傷だらけ」と徹底したこだわりぶり。一方、ニューヨークで仲間になった魔法使いティナの杖については「とにかく仕事人だから実用的で使い勝手がいいもの」を追求し、クイニーについては「おしゃれで見た目を気にする人なので、1920年代に流行したアールデコ調のもの」をデザイン。それぞれのキャラクターに合わせて、綿密に作られていることを強調していた。(取材・文・写真:坂田正樹)
映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』は11月23日より全国公開