ジブリはこれからどうなる? 鈴木Pが語る未来像
スタジオジブリ初の海外共同作品『レッドタートル ある島の物語』の公開が17日に迫る中、ジブリの代表取締役でもある鈴木敏夫プロデューサーがインタビューに応じ、本作を製作するに至った経緯と共に、ジブリの現状と今後について言及した。
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第73回アカデミー賞短編アニメ映画賞に輝いたマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督作『岸辺のふたり』に感銘を受けた鈴木の「この監督の長編を観てみたい」という思いから、2006年より本作の企画がスタート。それから約10年、無人島に漂着した一人の男の運命をドラマチックに活写する渾身の一作がようやく完成の時を迎えた。
海外監督との初タッグで大きな手応えを感じたという鈴木。今回、アーティスティック・プロデューサーとして参加した高畑勲監督や、長編映画制作から引退した宮崎駿監督も絶賛し、第69回カンヌ国際映画祭では「ある視点」部門特別賞を受賞するなど、本作はスタジオジブリの未来を照らす一条の光のようにも見えた。ところが鈴木は、先日行われたイベントで「マイケルは特別」であると強調。今後の海外監督とのコラボについては「また素晴らしい出会いがあれば……」と語るにとどまった。
これについて鈴木は「ジブリは計画的に何かをやるという習慣があまりないんですよ」と説明。「宮崎駿もめちゃくちゃ元気で、引退して約3年経ちますが、いまだに顔を合わせればいろんな話をするし、雑談の中で『こんなことをやると面白いよ』と新しいアイデアがどんどん生まれている。手描きなのか、CGなのか、という手法をはじめ、クリアしなくてはいけない問題も多々ありますが、大切なのは出会いとタイミング」と力説し、あくまでも自然体を主張する。
では、若手の起用や育成についてはどうだろう。未来に目を向ければ、必然的に次世代の存在が頭をよぎるはずだが、鈴木からはこんな答えが。「あくまでも個人的な感想になりますが、若い人との年齢的なギャップ、これを埋めるのはなかなか難しい。話が通じるのは、庵野(秀明)の世代まで。どちらかといえば、年寄りと組む方が僕は楽でいいんだけどね」と冗談交じりに語る。
一方、女性監督の起用については「僕自身は男性も女性も関係ない。これも出会いなので、いい人がいればぜひ」といたって前向き。「最近、『鏡は嘘をつかない』というインドネシアの実写映画を観たんですが、ものすごく良かった。カミラ・アンディニという女性監督で、先般、インドネシアを訪ねたときに『素晴らしい映画でした』と直接本人に伝えに行ったほど」と興奮気味だ。
最後に、ジブリの未来についてあくまでも「出会いとタイミング」を強調する鈴木に、あえて「それでも何か一つくらいやりたいことがあるのでは?」と問い掛けると、「高畑勲と宮崎駿のお葬式かな。盛大にやりたい。『かぐや姫の物語』と『風立ちぬ』を同じ日に公開したかったんですが、高畑さんの作業が遅れて実現できなかった。だから死ぬときは同じ日にしてほしいって本人に言ったんですよ。まぁ、くだらない冗談話だけどね」と笑った。(取材・文・写真:坂田正樹)
映画『レッドタートル ある島の物語』は9月17日より全国公開