売れっ子俳優・太賀は振り回され上手!?
俳優の太賀と深田晃司監督が24日、都内で行われた「若手映画監督の特集“日本映画の現在”」のイベントに出席し、演技派俳優としてドラマや映画に引っ張りだこの太賀の魅力について、深田監督は「振り回され上手」なところが演技の上手さにつながっていると評した。
【写真】「仰げば尊し」「ゆとりですがなにか」などで大活躍の太賀
深田監督の最新作『淵に立つ』は平凡な夫婦の前にある男が突然現れ、平穏な日常の歯車が狂い始めるさまを描き出した物語。同作で太賀が務めた重要な役柄は、彼が演じることを念頭に置いて脚本を執筆したという。「太賀くんの我が強くない感じがすごく好き」だという深田監督は、「もちろん我が強い役も演じられると思うんですが、自分がこう演じるんだという演技をガンガン押していくタイプの俳優さんよりも、僕は受け入れるタイプの俳優さんが良い俳優さんだと思う」と語ると、「太賀くんは周りの演技をちゃんと受けることができる。振り回され上手なのかもしれないですけど(笑)」とその演技を絶賛した。
また、写真にも造詣が深いことで知られる太賀は、深田監督からなぜ写真を撮るのか質問されると、「演じることを生業にしていて、それとは別のレイヤーで、自分の目でそこにある景色と対峙しているっていうのを写真を撮っている時は特別に感じていて。演じているともしかして自分ともう一個レイヤーがある上で人と対峙することになると思うんですけど……(写真だと)より真っ直ぐ見れる感じがするんですよね。それがすごく楽しいのかな」としみじみ。深田監督は、その世界を見る姿勢こそが太賀の演技の豊かさにつながっているのではと納得の表情を浮かべた。
この日は、深田監督の『ざくろ屋敷 バルザック『人間喜劇』より』と『いなべ』が上映された。深田監督はフランスに実在する『ざくろ屋敷』の館にロケハンに行ったが、一般人が住んでいたため見学許可がおりず、途方に暮れていたところに「馬に乗った貴族のおじさんが現れて、『日本から来たのに可哀想じゃないか』って言ってくれて、なんとか中に入れた」という驚きのエピソードを披露。
さらに、観客から「影響を受けた監督や俳優」についての質問が飛ぶと、太賀は役所広司、深田監督はエリック・ロメールなどの名前を挙げつつ、『ざくろ屋敷』にかんしてはマルグリット・デュラスの『インディア・ソング』に多大な影響を受けたことを告白。深田監督の次回作に期待を寄せる観客には、現在オールインドネシアロケによる企画が進行していることを明かしていた。(編集部・吉田唯)
映画『淵に立つ』は10月8日より公開