是枝裕和監督が明かすいい俳優…樹木希林、ペ・ドゥナ、岡田准一らの例を挙げて解説
『海街diary』の是枝裕和監督が23日、青山のINTERSECT BY LEXUS - Tokyoで行われた「Road to the World」イベントに来場、自身が思う“いい俳優”について明かした。
是枝裕和監督、いい俳優について樹木希林、ペ・ドゥナ、岡田准一らの例を挙げて解説 画像ギャラリー
若手発掘を目指すLEXUS SHORT FILMとショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)のコラボイベントとなったこの日は、海外進出を目指す若きクリエーターたちが参加。是枝監督が映画作りで心掛けていること、いかにして海外に進出するようになったのかなど、世界で活躍する是枝監督に直接聞くことのできる貴重な機会となった。
そんな中、聞き手を務めたSSFF & ASIA代表の別所哲也から「好きな役者は?」と聞かれた是枝監督は、「余計なことをしない人。その空間にどういるべきか分かっている人」と返答。その例として最新作『海よりもまだ深く』の時の樹木希林の名前を挙げると、「希林さんは台詞をうまく言おうじゃなくて、どうしたら40年も団地に暮らしている人になれるのか、ずっとそれを考えていた。それはすさまじいほどの基準を自分に設けて、控室で台本を読んでいる時は声をかけづらいほど一生懸命だった。そして現場に入っても、ミリ単位で椅子を動かして。見なくてもコップが触れるように、コップの位置を、体が覚えるまで確認し続けていた。体を空間になじませるという表現を、希林さんは訓練でやっていたんですね」と述懐。
さらに「いい役者ってそういう身体能力が高い。自分がどう画面に映っているか、数センチ動くと見え方がどう変わるのかが見えている役者ってときどきいるんです」と続けた是枝監督は、『空気人形』で組んだ韓国人女優ペ・ドゥナの名前を挙げ、「彼女は韓国の現場で訓練して、それができるようになったと言っていた。完全に役に没入していながらも、自分が(画面に)どう映っているのかということは見えている。それは『花よりもなほ』の岡田准一くんもそう。彼はそれをV6の踊りで覚えたと言っていた。彼は遅れて加入したから、他のメンバーよりも圧倒的にダンスができなかった。それで迷惑をかけないように、5人の振りをちゃんと覚えて。自分がどう動けば5人に遅れずについていけているか、ということを10代の時に徹底的に訓練したと言っていました」とコメント。
『花よりもなほ』では、走るショットを撮影する際に岡田が「カメラの動きは僕に合わせないで、自由に動いてください。僕がカメラに合わせますから」と言ったのだという。「それで出来上がったショットを観てみると、確かにしっかり撮れている。すごいなと思いましたね」と感心した様子で付け加える是枝監督だった。(取材・文:壬生智裕)