死体は患者、完璧な人体解剖…ウィル・スミス実在の医師役
人気俳優ウィル・スミスが主演作『コンカッション』(日本公開中)について、昨年12月14日ニューヨークのクロスビー・ホテルで行われた記者会見でベネット・オマル医師と共に語った。
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ナイジェリアからアメリカに移住したオマル医師(ウィル)はある日、NFLの元スター選手マイク・ウェブスター(デヴィッド・モース)の変死解剖を担当した結果、マイクの死が頭部への激しいタックルで引き起こされた慢性外傷性脳症であることを突き止める。オマル医師は論文で発表するが、NFLが見解を否定したことで、彼は事実を証明していくというストーリー。『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』のピーター・ランデズマンがメガホンを取った。
オマル医師を演じる上でウィルは「ベネットに会うだけでなく、彼の家族や友人とも話をした。さらにベネットと車で出かけた際に、彼が聴いている音楽や、娘からの電話の対応なども知った。彼の完璧な人体の解剖も見た。その中でも死体を『患者』と呼び、音楽を聴きながら解剖を行う姿は、最もパワフルな彼の本質を見た気がした」と語った。精神的に死体の魂に敬意を表するオマル医師に感服したそうだ。
ウィルの演技についてオマル医師は「最初に鑑賞した試写では、ウィルが自分を演じていることで(恥ずかしくて)目を覆いたかったが、映画が進むうちに自分の存在や環境を忘れて、完全に映画の世界に入り込めた。つまり僕が、スクリーンでオマル医師を見ている感じだった。それは、ウィルが素晴らしい仕事をしたという証拠だ。特に顔をひきつらせる表情や、自分のすることに対して誰かが『ノー!』と言ってきたとき、攻撃的になるのもまさに僕そのものだった」と称賛した。
観客に理解してほしいことについてウィルは「今作には2、3のパワフルなメッセージがあって、それらはあまりフットボールには関係ない。まず真実、次にオマル医師自身がNFLに圧力をかけられ、(隠ぺいを)知らないふりをしている方が、知っているより良いということを決して理解できなかったことだ。僕らが真実を知ろうとしないことも問題だが、真実を語りたがらない人もいる。人々は真実に対してさまざまな問題を抱えていることを知ってほしい。そして、アメリカ人が最も好むスポーツが抱える問題を、移民のオマル医師が発見する皮肉さが、現在のアメリカを反映していると思う」と熱く語った。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)