『勝手にしやがれ』『気狂いピエロ』名撮影監督が死去
名作『勝手にしやがれ』『気狂いピエロ』などのフランスのヌーベルバーグ作品を手掛けた名撮影監督ラウール・クタールさんが、11月8日(現地時間)夜、フランスのバイヨンヌにある診療所で92歳で亡くなったとGuardianが報じた。
1924年フランスのパリで生まれたクタールさんは、1945年から約11年間を戦争写真家としてベトナムで過ごした。最初は軍専属の写真家として第1次インドシナ戦争に従軍し、後にフランスの雑誌「ルック」などのフリーランスの戦争写真家として活躍した。
映画界に入ったきっかけは、ピエール・シェンデルフェール監督から映画の撮影を依頼されたこと。この依頼についてクタールさんは「もし、あの依頼が撮影監督としての仕事で、シネマスコープの撮影であることが事前にわかっていたら、断っていた」と2001年のGuardianのインタビューで振り返っている。
彼の名を世間に最も知らしめたのは、名匠ジャン=リュック・ゴダール監督とのタッグで、特に『勝手にしやがれ』『気狂いピエロ』は世界中で高い評価を受けた。同時期にフランソワ・トリュフォー監督の『突然炎のごとく』『柔らかい肌』などを撮影している。自然光を使った手持ちカメラの撮影がハリウッドスタイルと異なり、その新鮮さが世界中にヌーベルバーグ旋風を巻き起こすきっかけとなった。
その後も、コスタ・ガヴラス監督の『Z』、大島渚監督の『マックス、モン・アムール』、フィリップ・ガレル監督の『白と黒の恋人たち』など、巨匠たちの作品群を見事な映像美で捉えていた。(細木信宏/Nobuhiro Hosoki)