原作は未完!『3月のライオン』映画はどう終わらせる?
数多くの人気漫画が実写映画化される中、原作が未完の場合、映画をどう締めくくるのかは大きな問題となっている。原作と全く異なる映画オリジナルの結末を用意するもの、原作ではこれから描かれる結末を映画でも採用するもの、さまざまなパターンがある中で、羽海野チカのベストセラー漫画を実写映画化する『3月のライオン』はどんなラストを選択するのか。メガホンを取った大友啓史監督と谷島正之プロデューサーが語った。
原作は既刊12巻、2007年から「ヤングアニマル」(白泉社)で連載中だ。「完結していないものは仕方がない」と受け止めているという大友監督は、「映画を創る我々のスタンスから、物語のある決着点を見つけないといけない。脚本作りの過程でその都度羽海野先生と相談させていただきながら、最終的に納得いただける形に落ち着いたと思います」と原作者にも確認の上で映画のラストを決めているという。
また、原作者が想定していたラストの方向性を、その時々で出来得る限り加味しながら脚本作りを進行したと明かした谷島プロデューサーは「監督の面白いところは、原作の核に到達し握りつつ、一旦原作から離れるんです。そこがすごい」と称賛し、映画のラストについてこう語る。「羽海野先生が目指そうとするラストをヒアリングしつつ、映画独特のラストを脚本に書き込み、どのシーンもそうですが、現場で脚本の文字を飛び超えていくんです。これはあくまで主観ですが、対局シーンがまるでラブシーンのように見えたりしました(笑)そうくるかっていうね。作劇上、原作と違うっていうところはあると思います。でも原作ファンも“そうくるか!”って喜んでもらえるような KEISHI OTOMO'S『3月のライオン』になります」。
その言葉通り、本作は濃密な人間ドラマと将棋の対局が絡み合って重厚な物語を紡ぎ出す。だからこそ、大友監督は対局シーンで特殊効果を使用せず、あえてシンプルに撮影することでキャラクターの背後にある人生の重さを表現することにした。「将棋盤を挟んで大の男たちが真正面から向き合って、自らの人生と価値観を背負って勝負していく。その姿の美しさ、愛おしさを原作は微に入り細に入り描いています。棋士たちの生きる姿は、それを衒う(てらう)ことなく描いている羽海野さんのスタンスの投影でもある。潔くてかっこいいなと思い、その潔さを素直に撮ろうという気になってきて。フィクションでありながら、まったく嘘の感じられないこの原作なら、余計なことをしなくていいかなと。そう思ったんですね」。
『3月のライオン』は、中学生で異例のプロ将棋棋士デビューを果たした天才・零が、同じ下町に住む川本家の三姉妹たちとの交流や幾多の対局を通して、幼い頃に交通事故で家族を失った心の傷と向き合い、一人の人間として、棋士として成長していく姿を活写する。(編集部・吉田唯)
映画『3月のライオン【前編】』は2017年3月18日、『3月のライオン【後編】』は2017年4月22日より全国公開