レイプシーンに女優の同意なかった…巨匠ベルトルッチの告白にハリウッド激震
大胆な性描写で物議を醸したイタリア映画『ラスト・タンゴ・イン・パリ』(1972)で、メガホンを取った巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督が、本作のレイプシーンを主演女優マリア・シュナイダーさんの同意なしで撮影したと認めていたことが明らかになった。マリアさんが亡くなってから2年後の2013年に行われたベルトルッチ監督へのインタビュー動画が先週にYouTubeで公開され、波紋を呼んでいる。
ベッドの上で…『ラスト・タンゴ・イン・パリ』フォトギャラリー
『ラスト・タンゴ・イン・パリ』は、パリにあるアパートの一室で出会った中年男と若い女が、情欲に身を任せていくさまを描いた問題作。撮影当時19歳でモデルだったマリアさんが、名優マーロン・ブランドを相手に見せた過激な濡れ場のシーンなど、その内容の凄まじさから本国イタリアでは上映禁止処分を受けたいわくつきの作品だ。
その中でも問題視されているのが、中年男がバターを潤滑剤に若い女をレイプするシーンだ。ベルトルッチ監督は「バターのシーンは、撮影前の朝にマーロンと思いついたんだ。撮影をしたアパートで朝食をとっていたとき、そこにバゲットとバターがあった。僕らは互いの顔を見つめ合って、語らずともそれで何をしたいか通じ合ったんだ」とそのアイデアがどのようにして生まれたのかを語る。
そして「ある意味、マリアには残酷なことをしたと思う。なぜなら、僕は彼女に一体何が起きているのか伝えなかったんだ」と衝撃の事実を告白し、「(同シーンでは)女優としてでなく、少女としてのリアクションが欲しかったんだ。屈辱を感じるリアクションが必要だったんだ」と続ける。それがきっかけで「マリアは僕とマーロンのことを憎んでいたよ」と明かし、「罪悪感を感じている」と口にする場面も。司会者から「撮影したことを後悔しているのか」と尋ねられると、「してない。しかし、後悔しなかったことに対しての罪悪感はある」と答えていた。
2011年に58歳で亡くなったマリアさんは、ベルトルッチ監督の言葉通り、生前にベルトルッチ監督とマーロンを批判している。Mail Online によると、マリアさんは「あの時、事務所や弁護士に電話をして、撮影現場に来るようお願いすべきだった。脚本にないことをやらせるなんて無理なんだって(主張するために)。でも当時の私はそれを知らなかった」と切り出し、「マーロンは『マリア、心配するなって。単なる映画なんだから』って言ったの。でもそのシーンの間中、マーロンのしたことが実際のことでないにもかかわらず、私は本当の涙を流していたわ。屈辱を感じたし、正直言って、レイプされたような気にもなったわ。マーロンとベルトルッチ、2人両方にね。その撮影後、マーロンは慰めも謝りもしなかった。幸いだったのは、それがワンテイクだったことね」と壮絶な様子を振り返っていた。
それまでマリアさんの主張を否定してきたベルトルッチ監督だけに、今回のインタビュー動画が明るみになったことで、ハリウッドの俳優や監督たちから怒りの声があがっている。『ゼロ・ダーク・サーティ』などのジェシカ・チャステインは「この映画を愛している人へ。あなたは19歳の少女が48歳の男にレイプされているのを見ているのよ。監督は彼女を襲うことを計画していたの。気分が悪いわ」とコメント。『アベンジャーズ』シリーズのクリス・エヴァンスは「2度とこの映画を、そしてベルトルッチやマーロンを同じような目で見られない。胸クソ悪いを超えているよ。憤りを感じる」とつぶやき、『グローリー/明日への行進』のエヴァ・デュヴァネイ監督も「許せない。同じ監督として、理解できないわ。そして女性として、恐怖を感じるし、うんざりするし、腹立たしいわ」と怒りをぶつけた。(編集部・石神恵美子)