オオカミを愛し野生化していくヒロイン…女性への制約をぶち壊す爽快ムービー!
オオカミを愛し野生化していく女性を描いた、ドイツの衝撃作『ワイルド わたしの中の獣』でメガホンを取ったニコレッテ・クレビッツ監督がインタビューに応じ、そのインスピレーションなどについて語った。
『バンディッツ』『トンネル』などで女優としても活躍するクレビッツが脚本・監督を務めた本作。職場と自宅の往復で無機質な毎日を過ごすアニア(リリト・シュタンゲンベルク)はある日、自宅前に広がる森で一匹のオオカミを見かける。オオカミの野生に激しく惹かれたアニアは、あらゆる手を尽くしてオオカミを捕まえ、マンションの自室に連れ込むことに成功。まるで恋人のようにオオカミに接し始め……。
そもそも、マンションの一室で女性とオオカミが同棲するという奇抜なストーリーをどのように思いついたのだろうか。「何晩か、誰かに追われている夢をみたんです。それで友達が、夢の中で『振り返ってごらん』って言うんです。そうして振り返ってみたら、そこにはオオカミがいたんです。朝早くその夢から覚めて、これが私の次の映画だって確信しました。なぜだかわかりません」とクレビッツ監督。よっぽどオオカミに対する深い思い入れでもあったのかと思いきや、「(その夢を見て)怖かったですよ。オオカミには何の縁もなかったから」と驚きだった様子。
「同時に、オオカミがドイツに戻ってきているというニュースがあったんです。ポーランドとの国境に近い東側から。かつての旧東ドイツのほうなので、社会主義的な建物が多いところで、多くの人々が出ていってしまってゴーストタウンみたいになっているんですが、そういう場所にオオカミが住み着くようになったと聞いて、まるでオオカミが自分たちの土地を取り返したように感じました。なのでこの映画は、野生が戻ってくると言いますか、元いたものが元の場所に戻ってくるという話でもあるんです」。
そうして夢と現実からのインスピレーションを織り交ぜてできた本作のストーリーは、旧東ドイツの地域を舞台に、CGやぬいぐるみではなく、本物のオオカミとの撮影で映画化された。そのリアリティーに溢れる映像は、サンダンス映画祭を衝撃に包んだが、クレビッツ監督自身は本作をどのように捉えているのだろうか。「この映画は、映画館から出てきてすごくポジティブな気持ちになる映画だと思うんです。とてもエキサイティングです。この映画は、“女性はこうでなくちゃ”みたいな、女性に対しての制約を全部崩すんですよ。女性はこうあるべきというイメージをぶち壊すんです。だから映画館から出て、いい気分になれる爽快ムービーなんです」。
また、女性だけでなく男性にも通じるものがあると続ける。「男性にも私の意図は伝わったと思います。カップルで観に来てくれた人が結構いて、彼らの関係がこの映画を観たことで良くなったりしたそうです。私たちは欲望というものを持っていて、それって男女に共通する点だと思うんです」と笑いながらデートムービーとしておすすめする一幕もあった。(編集部・石神恵美子)
映画『ワイルド わたしの中の獣』は公開中