超問題作『ネオン・デーモン』の狙いを監督が語る
1月13日に日本でも公開される『ネオン・デーモン』は昨年のカンヌ国際映画祭で波紋を広げた問題作だが、その反響と作品の意図について、監督のニコラス・ウィンディング・レフンが赤裸々に告白した。
ロサンゼルスを舞台に、ファッションモデルの世界の裏側を描いた本作は、きらびやかなイメージや「ネオン」という単語から、どこかソフィア・コッポラのような「おしゃれ系」作品もイメージさせる。しかし実際にストーリーが進行すると、ジャンルも超えた予想外の展開が待ち受け、観る者は呆然となるはず。監督のレフンは「輝くような美しさと、目を背けたくなるような危険。そのコンビネーションが僕は大好き。その2方向を掘り下げ、観客を驚かせたいんだ」と語る。
カンヌでお披露目され、衝撃的な描写も明らかになった本作にまつわる各メディアでの論調もレフンは楽しんだようで、次のように振り返る。「観ていて心地いいだけの映画ばかりつくっていたら、野心的で面白い作品は生まれない。多様性こそが大切なんだよ。NYタイムズは、僕の存在自体を憎むような批評を載せていたけど(笑)、イギリスの映画評論家は2回も観て作品の本質に迫ってくれた。美術館で気に入ったアート作品があれば、そこに何度も足を運ぶよね? そんな風に見直すたびにインパクトを与える映画が僕の理想だよ」。
レフンの過激な演出に応えたのが、撮影当時17歳だったエル・ファニングだ。ピュアな少女というイメージが強いエルに、大胆かつハードな演技も任せたレフン。そこにはエルへの揺るぎない信頼感があったと彼は打ち明ける。「あの年代にしては、エルは真のプロフェッショナル。恐れ知らずで、心にはダークサイドも持っている。それはアーティストとして重要な資質だ。年齢制限によって彼女の全裸を撮影することはできなかったけど、今思えばもし入れていたら逆に陳腐な作品になったかもしれない」。
エルが演じるファッションモデルによって、周囲の人々の言動も過激さを増していく本作。「一般的にタブーとされる描写は、ただ挿入するだけなら、こけおどしに終わる。衝撃的なシーンも、僕はしっかりとストーリーを機能させるため、そして生と死というテーマを象徴するために使っているんだ。そこにはデジタルなものに慰めを求める現代人への皮肉も込めているよ」とレフン。過激描写の数々に彼が込めたものとは? 観客に挑戦状を叩きつけるような野心作となっている。(取材・文:斉藤博昭)
映画『ネオン・デーモン』は1月13日よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国順次公開