ハリウッドの危機的状況に意見表明!美しき天才グザヴィエ・ドラン初の英語作品
ギャスパー・ウリエル、マリオン・コティヤール、レア・セドゥ、ヴァンサン・カッセル、ナタリー・バイら豪華フランス人キャストが集結した映画『たかが世界の終わり』で、カンヌ国際映画祭グランプリに輝いたグザヴィエ・ドランが、その素晴らしいキャストとの撮影を振り返るとともに、ジェシカ・チャステインを主演に迎えた初の英語作品である次回作について語った。
ギャスパー、マリオン、レア、ヴァンサン、ナタリーと今のフランス映画界を代表する顔が集結した本作は、ある決意を胸に12年ぶりに帰省した主人公ルイと家族が再会するものの、お互いに距離がうまくつかめずぎくしゃくする様子を活写する。キャストはみな売れっ子ゆえに、5人全員がそろったのは、たった5日間だったという。「それぞれのシーンは別の日に撮影したけど、全員がそろったのは5日間だけ。これはかなり大きな挑戦になった。アドレナリンが出まくったよ!」とその過酷さがかえってやる気に火をつけたようで、ドランは「全員が部屋の中を一斉にかけずりまわったのは、閑静なモントリオール郊外の住宅地で暑い6月の撮影だったんだから! まるでアリの巣みたいな隠れた場所でせっせとあたらしい巣を作っているような、そんな感じだった」と撮影の日々を表現する。
ほぼ家の中だけで話が進行するワンシチュエーションものにして、巧妙な構成からそれぞれの俳優の白熱した演技に目が離せなくなる作品に仕上がっている。27歳という若さで、あれだけ個性の強い俳優たちを束ね、映画監督として次なるステップへと差し掛かっている気配を感じさせるドランだが、次回作にはジェシカ・チャステイン、ナタリー・ポートマンらハリウッドスターとの『ザ・デス・アンド・ライフ・オブ・ジョン・F・ドノヴァン(原題) / The Death and Life of John F. Donovan』が決まっている。
ライナー・マリア・リルケの「若き詩人への手紙」にインスパイアされたという同作は、アメリカに住む27歳のかつてのテレビスターと、イギリス在住の12歳の俳優志望である文通友達との交流の物語になるという。「現代のショービジネスの世界を描いた映画で、栄光を手にした人間の苦悩、複雑な感情、この時代を生きること、自分であることと、アーティストであることの葛藤、ソーシャルメディアの監視下での生活といったものを描いていくつもりなんだ。アイデンティティーと多様性に関するハリウッドの危機的状況についての意見表明になると思う。かなり踏み込んだ物語になると思うよ」と同作をアピール。
それ以降の作品でも、キャスティングしてみたい俳優がまだまだたくさんいるそうで、「新しい役者さんと出会って、一緒にチャレンジができることはとても光栄なことだから、僕は新しい役者さんと組むことにしている。デザイン、フォトグラフィーといったクリエイティブなアーティストたちとは、家族のような関係性を築いて共犯関係にありたいと思っている。ただ、演技は僕がコントロールしたりデザインしたりできないものだ。毎回が新しい経験でしかない。それはリスクでもある。新しい役者の才能を見出し、彼らから何かを学び取るのが大好きだ。その経験がいい経験であっても、悪い経験であっても、学びはある。この地球上で、世界中には、あらゆるタイプの役者がいる。あらゆるタイプの演技学校がある。あらゆるタイプのマインドセット、スタイルがあり、それらを可能な限り探求してみたい」と心を躍らせる。続けざまに「ミシェル・ウィリアムズ、ケイト・ウィンスレット、ケイト・ブランシェット、トム・ハーディ、ラミ・マレック……それからベネディクト・カンバーバッチ、いま生存する全人物の中でもっとも愉快で、セクシーな人間だと思う」と働いてみたい俳優の名をあげていた。(編集部・石神恵美子)
映画『たかが世界の終わり』は新宿武蔵野館ほか全国順次公開中