ホロコーストは笑いにできるのか?ユダヤ人のコメディアンが語る
話題のドキュメンタリー映画『ザ・ラスト・ラーフ(原題) / The Last Laugh』について、コメディアンのギルバート・ゴットフリード、ジュディ・ゴールド、アラン・ツァイベルと、ファーン・パールスタイン監督が、2月28日(現地時間)ニューヨークのAOL開催のイベントで語った。
言論の自由を称賛するアメリカ社会で、ホロコーストやさまざまな歴史の惨劇を、ジョークとして笑いに変えることが受け入れられるか否かを、生存者などへのインタビューを含めて人々に問う作品。ほかに、メル・ブルックス、ロブ・ライナーなども参加した。
このコンセプトに到達した経緯を、パールスタイン監督は「1990年代に、友人とホロコーストの生存者について話していたとき、漫画家アート・スピーゲルマンが手掛けた『マウス』の話になったの。その作品は、アートの父親がアウシュビッツ収容所で体験したことを、ネズミに置き換えて描かれたものだけど、ホロコーストという題材がコミックの形態として成り立つことに、友人は怒っていた。わたしは彼にコミックの意図を説明すると、彼は考え直し、後日再会した際に『僕の案で映画化してみてくれ』と言ったの」と明かした。
コメディアンはタブーを破り、境界線を超えて笑いを取るが、ホロコーストに関してはどうなのか。ユダヤ系アメリカ人のギルバートは「コメディーではショックな発言でファンを楽しませることもある。悲劇とコメディーはルームメイトだからね。いつも悲劇の後ろにはコメディーが立っていて、舌を出している感じだ」と答えると、ジュディが「ギルバートには最初からそんな境界線はないわ」と笑わせた。
第二次世界大戦下のユダヤ人迫害を、ユダヤ系イタリア人の親子の視点から描いたロベルト・ベニーニ監督作『ライフ・イズ・ビューティフル』について、アランは「あの映画を最初に鑑賞した時、まるでおとぎ話のように思えた。なぜならあの恐ろしい時代の中、父親が子供を笑わせて、人生を生きやすくさせていた。僕はあの映画を意味がないとか、つまらないとか思わない。今は、ホロコーストの生存者の観点から映画を見直す必要があると思う」と語った。ホロコーストを題材にした作品は、さまざまな議論の余地があるようだ。(取材・文:細木信宏/Nobuhiro Hosoki)