「銀魂」と「ヨシヒコ」は似てる?ネットの声に福田雄一監督が言及
人気コミックを基に描く実写映画『銀魂』(7月14日公開)のメガホンを取る福田雄一は、テレビドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの監督でもある。ネット上では空知英秋による原作漫画「銀魂」と「ヨシヒコ」が「似ている」との意見を見かけることも多いが、それは本人の耳にも届いていた。昨年7月にマスコミ向けに公開された『銀魂』の撮影現場にて、噂について当初は「いい気持ちがしなかった」という福田監督が「銀魂」を実写化するに至った経緯とそこにかける思いを監督本人に聞いた。
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「銀魂」が掲載されている週刊少年ジャンプ(集英社)は大学の頃には卒業したという福田。自身が手掛けたシリーズ1作目「勇者ヨシヒコと魔王の城」(2011)の放送が終わった時期に、長男からネット界隈で「ヨシヒコ」の視聴者から「福田監督であれば『銀魂』を実写化できるのでは」と言われていることを聞いたのだという。
その時のことを福田は、「内心では似てると言われているというのは、正直いい気持ちがしなくて、『なんだと~』と思ったんですよね。『ヨシヒコ』はオリジナルですが、『銀魂』は『ヨシヒコ』よりだいぶ前からやっている漫画じゃないですか。だから悔しくて、“見てやるものか”くらいの気持ちでした。それから『銀魂』というワードは自分の中から消去したつもりでした」と複雑な心境だったことを吐露する。
だが、その後「銀魂」のアニメシリーズを観る機会があり、「これが例の『銀魂』か」と構えていたものの、見始めるとそのおもしろさにどっぷりハマってしまったという。そして実際に作品に触れることで、「笑いの方向性や世界観の作り方は似ていると言われても仕方がない」と理解したそうで、そこからは漫画もアニメも1話から網羅。「『銀魂』って気持ちを上げてくれるじゃないですか。だから仕事でくさくさしていても、とりあえず家に帰ったらまず『銀魂』のDVDを観るという時期が何か月も続く時がありました。本当に『銀魂』に救われたところもあります」と一ファンとしての思いを語る。
その中で、松橋真三プロデューサーから「何かやりませんか?」と声をかけられた際に「『銀魂』をやりたいですということではなく、『銀魂』は僕がやった方がいいみたいですよ」という話をしたのだという。そうして実写映画化の話は進んでいった。昨夏、ついに製作が発表された際には、原作者・空知が「原作が原作ですから“基本泥舟”」とコメントを寄せ、ファンの間で大きな反響を呼び、名言となった。
このことについては、「空知先生は本当に上手ですよね。すごくシンパシーを感じています。僕も基本的に自分の作品を悪く言っておもしろくするのが大好きだから、逆に泥舟と言ってくださっていることが笑いになるし、なおかついろんな人を幸せにする。空知先生がこれを言ってくれることで僕らがどれだけ救われるか、ファンの人たちがどれだけ救われるかというのがものすごく伝わってくる。とはいえ、すごく笑いに昇華されるというコメントだったので、漫画の実写化が何かと問題になる今現在で、この空知先生のコメントは一番ありがたかったです。うれしくてちょっと涙ぐみましたよね(笑)」と感謝を明かした。
そんな空知からは、実写化にあたり要望は一切なかった。「とにかくお任せします。好きにやってください」「だいぶ前から続いている漫画なので、お笑いの流れもその時々で変わりますから、ちゃんと今のお客さんが笑える変換をしていただいて構いませんよ」と託されたと話す福田だが、橋本環奈演じるヒロイン・神楽の語尾「アル」については「クランクインの前日に全然眠れずに吐くまで悩んだ」そう。絶大な人気を誇るコミックの実写化とあり、プレッシャーは並々ならない。
背負うものの大きさから、撮影は「率直に言って疲れます」と言うものの、「朝起きてまずあるのは今日も(主人公の)銀ちゃんに会えるというわくわく感。『銀魂』という作品が大好きだし、大好きな人が現場に行ったら銀ちゃんに会えるって、これ幸せなことじゃないですか」と話す笑顔は充実感に満ちていた。(編集部・小山美咲)