高橋優、いじめは「一生の爪痕」 創作で心のバランスを保った少年時代
『映画クレヨンしんちゃん 襲来!! 宇宙人シリリ』の主題歌を担当している高橋優にとって、本作の主人公であるしんのすけは小学校時代の憧れの存在だったという。いじめられ、枠からはみ出ることの恐怖を抱いていた少年時代。型にはまらずに、ひょうひょうとしているしんのすけとの出会いは、高橋少年に影響を与えた。
小学校の時は内向的だったという高橋。休み時間は、同級生が校庭に飛び出していく中で、一人で本を読みながら時間を過ごしていた。だがそんな中、テレビアニメ「クレヨンしんちゃん」が始まり、お尻を出したりと常識から飛び出していくしんのすけの姿に衝撃を受けたという。“普通”という実体のないものにとらわれて、そこから外れることで「変」になることを恐れないようになった。「自分が好きなものを好きでいられる人の方がステキだと思って。それが常識で変だと言われたとしても」。中学校・高校時代、教師から普通の人は歌を歌わずに勉強するものだと言われ続けても、自分が周りとはズレている存在だと引け目を感じることがあっても、彼は歌うことをやめなかった。
「クッキーを焼くにしても、誰かと同じように焼きあがらなくてもいいじゃないか、いびつな形になってもいいじゃないか、という気持ちがありました」。いじめを受けていた小学校時代、学校で絵の具を食べさせられたり傘をボロボロに破られたり、身体的にも精神的にもダメージを負った。しかし彼は「友達と仲良くしている絵」「テストでいい点を取って両親から褒められている絵」を妄想で描き、心に安らぎを得たという。高橋は「現実と妄想の埋め合わせのような絵を描いていました」と言うが、その渇望は彼を奮い立たせることにつながっている。「ギターを中学校から始めて、コードを覚えてからはその絵の代わりに歌詞を書き始められるようになったんです。そしたら『こうだったらいいのにな』とか『どうしてこうじゃないんだろう』という疑問が曲になって、コード譜になって、曲作りになっていきました。小学校に自分がやっていた作業はずっと恥ずかしいことだと思っていたんですけれども」。
「ハングリー精神って、幸せの中では生まれづらい。僕がこれだけ悔しいなと思ったりするのは、10代の頃にたくさん悔しい思いをしたからだと思っていて。10代の1日は、20代以降の1年に相当する価値がある、という言葉が僕は大好きで。1日いじめられた経験でも、小・中学生の多感な時期に経験すると一生の爪痕になる。いわれのない悪口や罵倒された言葉がいつまでも残るんです。僕はそういわれている人たちのことをほっとけない。だからやり返すじゃなくて、そういう人たちもひっくるめて笑顔になるような、笑い合っている方がステキなことが起こると信じて、歌うモチベーションにしています」。
「でも『したたかに生きていく』ことはやった方がいいとは思っているんですよ。怒りは怒りのまま表現するよりも、怒りを笑顔でステキなメロディーに乗せてみて『実はこの曲皮肉っぽい!』としてみたりする。そこを楽しんだりしているので、僕、超イヤな奴かもしれないです(笑)」。
新曲「ロードムービー」は映画最新作から着想を得た「家族愛と異文化コミュニケーション」のテーマを基に作った。歌詞には「つながっているよ」などの温かい言葉なども並んでいる。「くさ~いとか言われそうかもしれないんですが、音楽のいいところは声を大にして言いづらいことも歌えることだと思っていて。実生活では自分でも馬鹿じゃないかとも思うことでも、照れくさい言葉でも歌えるんですよね」。(取材・文:編集部・井本早紀)
映画『映画クレヨンしんちゃん 襲来!! 宇宙人シリリ』は4月15日より全国公開
主題歌を収録した高橋優のシングル「ロードムービー」は4月12日に発売