高畑勲監督「『火垂るの墓』では戦争は止められない」必要なのは理性
高畑勲監督が7日、都内で行われたドキュメンタリー映画『標的の島 風(かじ)かたか』トークイベントに同作のメガホンを取った三上智恵監督と出席。高畑監督は自身が手がけたアニメーション映画『火垂るの墓』では「戦争は止められない」という見解を示した。
三上監督は沖縄をテーマにした作品を撮り続ける映画監督でありジャーナリストで、以前はアナウンサーとしても活躍。その当時発表した映画『標的の村』(2013)を観た高畑監督から、「『火垂るの墓』では次の戦争は止められない。あなたが作っているような作品が次の戦争を止めるんだから、もっと頑張りなさい」と言われたことが「人生を変える転機になった」そうだ。
その話を受けて、「『火垂るの墓』みたいなものが戦争を食い止めることはできないだろうとずっと思っている」と切り出す高畑監督。『火垂るの墓』(1988)は野坂昭如の小説を基に、戦禍の中、過酷な運命をたどる兄妹の姿を描いた作品。戦争の悲惨さを学べるアニメ映画として頻繁にテレビ放送もされているが、高畑監督は「心や感情は人間にとって大事なものだけど、あっという間に変わる危険性がある。結局、理性が(人間を)支えている。戦争がどうやって起きるかを学ぶことが、それを止めるための大きな力となる」と語った。
『標的の島 風(かじ)かたか』は、辺野古の新基地建設、高江のヘリパッド建設、宮古島、石垣島のミサイル基地建設と自衛隊配備などに反対する人々を追った実録映画だ。
沖縄の南西部に位置する先島諸島の軍事要塞化を危惧する三上監督は、「(太平洋戦争中の)1944年、沖縄は10万人の日本の軍隊を歓迎して迎え入れ、沖縄県民はこれで私たちはもう大丈夫と安心したけど、それは間違いだった。その勉強が足りないから、今また自衛隊を迎え入れるという同じ事態が起きている」と説明。「(空襲が激化し、原爆が投下された)1945年のことを学ぶのではなく、44年のことを学ばなければ次の戦争は止められない」と訴えていた。(取材/錦怜那)
映画『標的の島 風(かじ)かたか』はポレポレ東中野ほかにて公開中