押井守、実写版「攻殻機動隊」は幸福な作品 スカヨハへの絶賛
「攻殻機動隊」のハリウッド実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』は日本でも公開が始まったが、その「オリジナル」ともいえるアニメーション版を手がけた押井守監督は同作をどう観たのか? 率直な感想を語った。
「最終版ではないが、脚本をもらって読んでいた。その段階でとりあえず、破綻はしていなかったな」とストーリーの全体像はすでに知っていたという押井監督。「ヒロインの少佐がアイデンティティーを探す物語になっているのは、それしかやりようがないから。今回の実写版は、失った記憶をたどるという、ある意味で誰でもわかりやすい展開にしたけど、これはハリウッド映画の宿命だから仕方がない。僕の作品では、ここまで単純に表現しなかっただけ。それをふまえれば、『よくできたアメリカ映画になった』の一言に尽きるんじゃない?」と語るその表情はどこか満足げだ。
『ゴースト・イン・ザ・シェル』には、押井作品にオマージュを捧げる描写が多数盛り込まれている。オマージュを「捧げられた」側の気持ちを、押井監督は次のように語る。「リスペクトどうこうより、やりたければやればいい。この点は、『マトリックス』のときもあれこれ騒がれたけど、演出とか映像はどんどんパクっていいと思う。だからルパート(・サンダーズ監督)にも『好きなようにやればいい』と伝えてあった。リスペクトもパロディーも紙一重なんだよ」。
押井作品に欠かせないバセットハウンドらしき犬も劇中に登場。しかし、犬種が微妙に違っているようでもあったが、その件に関しても「ウチの子を貸してくれという話もあったけど、断わった。撮影場所の香港は湿気が多いから、バセットには向かない。だから現地にバセットはいないから、近い犬種になったんだろうね。まぁ撮影現場では、こういう遊び感覚も必要なんだよ」と押井監督は大らかな目で観たようだ。
これまでも日本のコミックやアニメを基にハリウッドで実写化された作品はいくつかあったが、それに関しては「今回、いちばんいい条件で作られたと思う」と断言する押井監督。その最大の決め手は「スカーレット・ヨハンソンが演じてくれたから」とのこと。「単純にスカーレットのファンというのもあるけど、彼女だからこそ大スクリーンで観たかった。撮影現場で彼女を見たとき、『想像以上に草薙素子っぽいな』と感じたし、スクリーンの彼女は、さらに圧倒的なまでにすばらしかったね。アクションも自分でやっているのがわかるから、それだけでこの映画は、お値打ちものだと思う」と絶賛のコメントは止まらない。そんなスカーレットに直接、何を伝えたいか尋ねると「サインください……というのは冗談として(笑)、『この作品が幸福だったのは、あなたが選ばれたからだ』と言いたい。演技にも奥行きがあり、女優として惚れ直したよ」と少佐役スカーレットに押井監督は太鼓判を押すのであった。(取材・文/斉藤博昭)
映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』は全国公開中