デヴィッド・リンチ、映画監督を引退へ
映画『ブルーベルベット』『マルホランド・ドライブ』など数々の名作を世に送り出してきた鬼才デヴィッド・リンチ監督が、映画監督を引退する構えであることをシドニー・モーニング・ヘラルド紙のインタビューで明かした。
人気テレビシリーズ「ツイン・ピークス」の25年ぶり新シーズンの放送を間近に控え、注目を浴びているリンチ監督(日本放送は今夏)。同紙のインタビューで、2006年の『インランド・エンパイア』以降、長編映画を製作していない理由を問われると、「いろいろ変化した。多くの映画が興行成績でうまくいってない、素晴らしい映画にもかかわらずね。一方で、興行成績でうまくいっているような作品を私はつくりたくない」と映画界の現状を語る。『インライド・エンパイア』が最後の映画になりそうかと念を押されると、リンチ監督は「そうだね」と答え、映画を今後つくるつもりがないことを明らかにした。
大手スタジオがヒットを狙い手掛ける超大作か、低予算のインディペンデント映画という具合に二極化していっている昨今の映画業界。中規模予算の映画がつくられにくい環境になったことで、作家性の強い監督たちは困難を強いられているようだ。すでに、『オーシャンズ』シリーズなどのスティーヴン・ソダーバーグや、『ピアノ・レッスン』などのジェーン・カンピオンなど、名監督たちは続々と映画からテレビシリーズへ活躍の場を広げていることからも、リンチ監督の言う“映画界の変化”を感じざるを得ない。
映画界を牽引してきたリンチ監督の引退表明はファンに衝撃を与えているが、リンチ監督が以前「ツイン・ピークス」の新シリーズを“18時間の映画”と表現していたように、テレビシリーズを新たな形の映画として、創作活動を続けていってくれることを願いたい。(編集部・石神恵美子)