斎藤工、ブレイクした「昼顔」から3年…心境の変化
大ヒットドラマの続編となる映画『昼顔』で、自らの出世作ともなった役を再び演じた斎藤工が、ドラマから3年を経た心境の変化を明かした。
斎藤が演じた北野は、2014年のドラマ版で上戸彩演じる主人公の紗和と既婚者同士でありながら許されぬ恋に落ちる役どころ。斎藤は、「昼顔」はターニングポイントになった大事な作品で、北野は他の役を演じる際にも基準の一つになっていることを、劇場版の製作発表時にコメントしていた。「ドラマ版の終わり方が好きだった」という斎藤は、「正直なところ続きようがないかな」と思っていたそうだが、永遠の別れを誓ったはずの紗和と北野が再会を果たす続編への出演については迷いがなかった。
「人任せなわけではないですが、この作品の船頭でもある上戸さんがやるのならやらせていただこうと思っていました。それに『昼顔』の現場はチームワークの良いスタッフでしたし、上戸さんとは役に向き合っている時の苦悩や葛藤をずっと共有していたので、自分としてやるべきかどうかを思い悩むようなことはなかったんです」。
斎藤がシネフィルであることやクリエイター志向も強い俳優であることはよく知られているが、一般的に最も強く持たれているイメージは、色気のある俳優といったものだろう。北野という役は、外見的にはむしろ斎藤の艶っぽさを封印したような役だったが、結果的には独特の色気を持った俳優としてのイメージをより一層広く知らしめることになり、ある種のブレイクを果たすことにもなった。そのため「セルフプロデュースみたいなものがあてにはならないということでもある」と、いくら自分がこう見られたいというイメージがあっても結局は受け取る側次第で変わるものであることを悟ったり、「自分で狙ったものではなかったからこそ、作用反作用みたいなものがあった」ことが予測のできない反響を受けたのだろうと分析。また、抑えた表現が魅力を高めたことは「スタッフの方々の目線が正しかった」とも感じたようだ。
撮影で服を脱がされる機会が多いことなどを取材時やテレビ番組で自虐的なネタにしていたり、今の自分の人気は一過性のものにすぎないと発言するなど、当初はそのイメージの一人歩きへの戸惑いも見せていたが、現在は「それも面白みの一つ」だと受け入れており、「昨日、行きつけの銭湯の水風呂でよく会うおじちゃんが、僕が役者をやっていることに気付いて、『女をたぶらかす役やっている兄ちゃんだろ!』って(笑)」というユニークなエピソードも披露。年末年始の番組「絶対に笑ってはいけない科学博士24時!」ではサンシャイン池崎を完コピして話題をさらったが、「本当は壁ドンなんてしたくないんだとかいう自意識すらも無駄だなと思うようになったので、バラエティー番組に出ることも楽しんでいます」とまで言ってのけ、自分の芯さえぶれなければ何をしようと構わないという潔さを感じさせる。
人気と知名度の上昇による恩恵を前向きにとらえ、そのことで広がった可能性を次の段階へのステップに生かそうとする斎藤は、「役者という仕事を20年近くやっているからこそ、何か引っかかりがあった方が、絶対さらに上に行けるというのはわかっていたし、自分がモノを作る時にも、何者であるかということがすごく大事になってくるので、『昼顔』への出演はプラスでしかなかったですね」と振り返る。その一つの結実が長編初監督作品『blank13』(2018年2月3日公開)でもあるようで、俳優としてもクリエイターとしても、「昼顔」という作品は斎藤のさらなる飛躍のための記念碑的な作品となったようだ。(取材・文:天本伸一郎)
映画『昼顔』は6月10日より全国公開