『怪物はささやく』はこうして生まれた!原作者が明かす想い
映画『パンズ・ラビリンス』のスタッフが結集した話題作『怪物はささやく』(全国公開中)について、原作者パトリック・ネス氏がニューヨークのウォルドルフ=アストリアでインタビューに応じた。
本作は、孤独な少年コナー(ルイス・マクドゥーガル)と突如少年の前に現れた木の怪物(リーアム・ニーソン)の奇妙な交流を描いたダークファンタジー。母親(フェリシティ・ジョーンズ)が重い病に侵され、学校ではいじめられていたコナー。ある夜、彼の前に木の怪物が現れ「三つの物語を語る。終えたら、四つ目はお前が話せ」と告げられ……。 ネス氏の同名小説を、映画『永遠のこどもたち』のJ・A・バヨナ監督が映画化した。
この原作の執筆過程についてネス氏は「イギリスの作家シヴォーン・ダウドが、難病を抱える母親の死を受け入れる少年の話を執筆する予定だったが、乳がんを患い、冒頭部分だけ執筆して亡くなったんだ。シヴォーンの編集者がたまたま僕とも仕事をしたことがあった人物で、その編集者からこの企画を小説にできないかと頼まれてね。すでにシヴォーンは冒頭1,000字くらいの草稿を書いていたし、編集者にも『木の怪物が物語を語る』話ということを伝えていたんだよ」と明かす。一度はその依頼を断ったというネス氏だったが、二つ目に語られる物語の映像アイデアが浮かび執筆を決意したそうだ。
映画では原作と違うところを二か所だけ設けたというネス氏。「その一つはエンディングで、それは読書と映画鑑賞の体験は異なるからなんだ。小説は本を読み終えて、その本をテーブルに置いて沈黙を保つことができるが、映画は主人公の感情を存分に味わうことになる。だから、あえて明るめの終わり方にしなければならないと思うんだ」と持論を展開。映画では希望を持てるエンディングが設定されたという。もう一つの点については「原作にはリリーという僕も好きな温かいキャラクターが登場するんだけど、映画ではあえて省いたんだ。彼女はコナーを安心させてしまうキャラクターだったからね」と答えた。
実際に映像化された怪物については「『パンズ・ラビリンス』のスタッフが数年かけて創り上げてくれた怪物は、僕が想像していたとおりに素晴らしかったね。その怪物を演じたリーアムも、僕の中では出演候補としてトップリストにあったが、まさか彼がオファーを受けてくれるとは思っていなかったよ」と語った。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)